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オンプレミスとクラウドは結局どっちがいい?比較でわかるメリット・デメリット

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)がビジネスのキーワードとして注目を浴びています。
企業が情報技術を活用して業務を効率化し、新しいビジネス価値を生み出す取り組みの中心には、ITインフラの選択があります。

特に「オンプレミス」と「クラウド」、この2つの選択は、DXを進める上での大きな分岐点となっています。
しかし、これらのどちらが自社に適しているのか、一概には答えにくい問題でもあります。
この記事では、オンプレミスとクラウドのメリット・デメリットを比較しながら、より適切な選択をサポートする情報を提供します。

目次

オンプレミスとクラウド

オンプレミスとクラウドという用語やオンプレミスの歴史について解説していきます。

オンプレミスとは?

「オンプレミス」とは、主に企業が自社の物理的な場所にITインフラやサーバーを所有・運用する方式を指します。
この言葉自体は、英語の “on premises” から来ており、直訳すると「敷地内」や「場所にある」という意味になります。

具体的な例として、ある企業が顧客のデータベースを管理するためのサーバーを持っているとします。
このサーバーを企業の本社ビル内に設置して運用している場合、それは「オンプレミス」のサーバーと言えます。

つまり、この企業は自らの手でサーバーの設置場所を確保し、必要な電源やネットワーク、冷却設備を整え、ソフトウェアのインストールやアップデート、セキュリティの監視など、全ての運用を自社で手がけている状態であり、これがオンプレミスです。

オンプレミスの歴史

以前はオンプレミスとクラウドという区別はなく、企業のシステムはどこもオンプレミスっで構築しているという状態だったのです。

1970年代以前、コンピュータは主に大学や大企業で利用されていました。
これらの初期のコンピュータは、非常に大きく、専用の部屋が必要だったため、オンプレミスという考え方は当たり前のものとして存在しており、各企業や研究機関は、ニーズに合わせてシステムをカスタマイズし、自社での管理と運用を行っていたのです。

1980年代から1990年代にかけて、パーソナルコンピュータの普及やネットワーク技術の進化に伴い、中小企業でもITを導入することが容易になりましたが、この時期でも多くの企業は、セキュリティやデータ管理、カスタマイズの自由度を求めて、オンプレミスの選択を続けていました。

2000年代初頭になると、クラウドコンピューティングの技術やサービスが登場し始めました。
これにより、ITリソースを外部サービスとしてレンタルすることが可能となり、オンプレミスとクラウドの比較や選択が現実のものとなったのです。

そして昨今では、市場での競争優位性を確保することや、2025年の崖問題などで指摘されるように、オンプレミス型システムのブラックボックス化が懸念されており、クラウド型が主流となりつつあります。

クラウドとは?

クラウドとは、インターネットを介して提供されるコンピューティングサービスのことを指します。
このサービスは、サーバーやストレージ、データベース、ネットワークリソース、ソフトウェア、分析ツールなど、さまざまなリソースをリモートから利用することができるものです。

従来、企業や個人は自らの施設やオフィス内に物理的なサーバーやデータベースを設置して情報技術(IT)リソースを利用していましたが、クラウドを利用することで、それらのリソースをインターネット経由で、必要な時に必要なだけ利用することができるようになりました。

オンプレミスのメリット・デメリット

オンプレミスにはメリットもありますが、デメリットもあります。
オンプレミスのメリットとデメリットについて簡単に解説していきますので比較してください。

オンプレミスのメリット

まずはオンプレミスのメリットについて解説していきます。

制御とカスタマイズ性

オンプレミス環境では、自社のハードウェアやソフトウェア上でシステムを運用します。これにより、あらゆる側面で細かい制御が可能です。

また、企業や組織には独自の要件やニーズがあります。
オンプレミス環境では、これらの要件に合わせてシステムをカスタマイズすることが容易です。
特定の業界向けの特殊な機能を追加したり、既存のソフトウェアとの連携を強化したりするなど、独自のビジネスモデルに合わせたシステム構築によって、きめ細かな自社独自のシステム構築ができるでしょう。

セキュリティ

オンプレミスでは、企業が自社のインフラを直接管理・運用するため、セキュリティポリシーや基準を完全にカスタマイズして実装することができます。
これにより、特定の業界規制や国の法律に応じたセキュリティ要件を満たすことが容易となるでしょう。

接続の信頼性

オンプレミス環境の場合、システムやデータベースにアクセスするためのネットワークは社内ネットワークを主に利用することで、外部のネットワーク障害や通信の混雑による影響を受けにくくなります。

特に業務の中核を担うようなシステムの場合、接続が途切れることなく、安定して動作することが非常に重要です。

また、オンプレミスの環境では、通信速度も一定であり、大量のデータを高速に処理する必要がある業務では、オンプレミスの方が有利と言えるでしょう。
外部との通信を最小限に抑え、内部ネットワークでの高速なデータ転送が可能となります。

ビジネスの継続性をより高いレベルで確保する必要がある場合、接続の信頼性のメリットは大きいと言えそうです。

長期投資

オンプレミスの環境は、一見すると初期投資が大きいように感じられるかもしれません。実際には、サーバーやネットワーク機器、ストレージなどのハードウェアの購入、セットアップ、運用に伴う費用が発生します。

しかし、これらの設備は数年にわたって利用されることを考えると、長期的な視点での投資として捉えることができます。

オンプレミスの環境は、一見すると初期投資が大きいように感じられるかもしれませんが、これらの設備は数年にわたって利用されることを考えると、長期的な視点での投資として捉えることができます。

オンプレミスのデメリット

続いて、オンプレミスのデメリットについて解説していきます。

初期費用が高額

オンプレミスのシステムを導入する際、最も大きな障壁の一つが初期投資の高額さです。
サーバーやネットワーク機器、ストレージなどのハードウェアの購入、設置、そして導入のためのソフトウェアライセンスの購入が必要となります。

運用とメンテナンス

システムを安定して稼働させるためには、定期的なハードウェアの点検やソフトウェアのアップデートが必須です。
これには専門的な知識や技術が求められ、専任のスタッフが必要となる場合があります。

また、オンプレミスの環境では、突発的なトラブルやハードウェアの故障が発生した場合、迅速に対応する体制が求められます。
ビジネスの中断を防ぐための重要なポイントとなりますが、24時間365日の監視体制やバックアップ体制を整えることはコストや労力がかかるため、小規模な企業にとっては大きな負担となることも少なくありません。

スケーラビリティの制約

スケーラビリティとは、システムが将来の成長や変化に柔軟に対応できる能力を指します。例えば、突発的なトラフィックの増加やビジネスの拡大に伴い、追加のサーバーやストレージが必要となった場合、オンプレミスの場合は新たにハードウェアを購入し、設置・設定を行う必要があります。
このような作業は時間とコストがかかり、迅速な対応が難しくなることがあります。

また、オンプレミスのリソースを過剰に確保しておくと、そのリソースが常にフルに活用されない期間が生じ、無駄なコストが発生する可能性が高まります。
一方で、十分なリソースを確保していないと、必要なときに迅速にスケールアウトできないことも問題です。

エネルギーコストがかかる

オンプレミスのデータセンターやサーバールームを運営する際、機器が発生する熱を冷却するためのエアコンや冷却装置、そしてサーバーやストレージ、ネットワーク機器などを稼働させるための電力が不可欠です。

これらの機器は24時間365日稼働することが多いため、それに伴う電気代は負担になり、今後のエネルギー価格の変動によっても生じるコストは大きく上下することが考えられます。

特に、データセンターの冷却には多くのエネルギーが必要とされ、全体のエネルギーコストの中でも大きな割合を占めます。
そのため、オンプレミスの運用を続けることで、企業は高額な電気代を支払うこととなるのです。

さらに、エネルギーコストの節約のための最新技術や省エネルギーの設備導入も考慮すれば、初期投資や更新費用の問題は避けて通れません。

災害時のリスクを社内で負う

突如として発生する地震や洪水、火災などの自然災害。
これらの災害は、オンプレミス環境においてはITインフラ全体のダウンタイムやデータの損失を引き起こす可能性があります。

特に、日本のような地震が多い国においては、このリスクは常に忘れてはならないものとなります。
オンプレミスでのデータ管理は、災害時の回復手段やデータのバックアップ体制を自社で確立する必要があり、それに伴うコストや手間が増大します。

クラウドのメリット・デメリット

クラウドにも、オンプレミス同様にメリットもありますが、デメリットもあります。
オンプレミスのメリットとデメリットについてその内容を簡単に解説していきますので比較してください。

クラウドのメリット

まずはクラウドのメリットについて解説していきます。

導入が簡単

中小企業やスタートアップにとっては、大きな初期投資や専門スタッフの雇用を考えると、新しいシステムの導入はなかなか難しいものでした。
クラウドのサービスモデルは、このような課題を劇的に解消します。

専用のハードウェアやソフトウェアの購入、設定や運用のための専門知識はほぼ不要で、オンライン上で数ステップの手続きを踏むだけで、最新のIT環境を利用開始できるのは大きなメリットの一つでしょう。

スケーラビリティ

クラウドを利用することで、必要に応じて容易にリソースを増減させることができます。
このスケーラビリティの高さは、ビジネスの急成長やプロモーションなどの短期的な需要の増加に迅速に対応することが可能です。

また、予期せぬトラフィックの増加や大規模なデータ処理が突如として発生した場合でも、クラウドはそのニーズに合わせてリソースを供給することができます。

初期投資額・運用コストが最適化される

クラウドはコスト面でも大きなメリットを生むことがあります。
固定的なリソースを維持するためのコストが発生するオンプレミスとは異なり、クラウドでは使用したリソース分だけのコストを支払うモデルが多く取られています。
このため、ビジネスの規模や需要に応じて柔軟にコストを調整することが可能となるでしょう。

アクセス性

アクセス性とは、情報やサービスにどれだけ手軽にアクセスできるかという点を指します。クラウドサービスを利用すれば、特定の場所やデバイスに縛られることなく、インターネットが接続可能な環境であれば、いつでもどこからでも必要なデータやアプリケーションへのアクセスが可能です。

例えば、ビジネスの現場では、外出先や出張中でもオフィスにいるかのように業務を進めることができます。

DX推進に伴い、働き方の見直しや外部からの人的リソースを確保することを考えてもアクセス性のメリットは大きいです。

災害時の対策

クラウドはデータセンターを複数の地域に分散配置することで、地域特有のリスクを低減します。
たとえば、一部のデータセンターが洪水や地震の影響を受けても、他の地域のデータセンターでサービスは継続的に提供され、企業は地域的な災害によるサービス停止のリスクを大幅に軽減できます。

また、クラウドサービスは自動的なデータバックアップや災害復旧機能を提供していることが多く、何らかの原因でデータが失われてしまった場合でも、迅速に元の状態に復元することができます。

エネルギーコスト

自社のデータセンターを運用する際には、サーバーやストレージの稼働に伴う電気代はもちろん、それらの機器を冷却するための空調のコストも大きな出費となります。

これに対して、クラウドサービスを利用する場合、これらのエネルギーコストはクラウドサービスプロバイダーの負担となるため、企業は直接的なエネルギーコストから解放されます。

クラウドのデメリット

続いて、クラウドのデメリットについて解説していきます。

セキュリティリスク

企業の重要なデータが外部のサーバーに保存されるため、そのデータの保護やアクセス制御に関する懸念もあります。

不十分なセキュリティ対策や不適切なデータ管理により、情報漏洩のリスクやサイバー攻撃のターゲットとなる可能性もあるため、クラウドサービスを使用する際、データがどのように保存・管理されているのか、サイバー攻撃から適切に守られているのかという点はユーザー企業の関心事になるでしょう。

コストの不透明性

クラウドサービスは、その柔軟性とスケーラビリティから多くの企業や個人に支持されていますが、実際に利用料金をどのように計算されるのか、その詳細が分かりにくいと感じるユーザーも少なくありません。

特に、従量課金制のサービスでは、具体的な利用料金が予め明確に示されていないため、突如として高額な請求が来ることも。
このような場合、利用者は予期せぬコストに直面するリスクがあります。

また、クラウドサービスのプランやオプションが多岐にわたっている場合、どのプランやサービスが自分のニーズに最適なのか判断しにくいことも、「コストの不透明性」としてのデメリットとなり得ます。

ネットワーク依存

ネットワーク依存とは、具体的にはクラウドサービスへのアクセスやデータのやり取りがインターネットの接続状態に大きく左右されることを意味します。

インターネットの接続が不安定だったり、一時的に接続できなくなったりする場合、クラウド上のデータやアプリケーションへのアクセスが困難になることが考えられます。

特にビジネスの現場でのクラウド利用の場合、接続の遅延や断続が業務の大きな障害となり得ます。

カスタマイズの制限

クラウドサービスは多くのユーザーに対して均一なサービスを提供することを前提としているため、特定のニーズや要件に応じた独自のカスタマイズが難しい場合があります。

例えば、オンプレミスのシステムでは、企業独自の業務フローや特有の機能要件に合わせてシステムをカスタマイズすることが可能です。
しかし、多くのクラウドサービスでは、提供される機能やインターフェースに一定の制約が存在します。そのため、特定の機能追加や細かなUIの変更など、独自のビジネス要件を満たすためのカスタマイズが難しくなることがあります。

※ユーザーインターフェース(UI)とは、システムとユーザーが相互にコミュニケーションを取るための界面や手段のことを指し、画面表示やボタンの配置などが含まれます。

データ移行の手間

データ移行は、オンプレミスの環境からクラウド環境へ、あるいはクラウドサービス間でのデータの移転を指します。
この移行プロセスは、データ量や移行先のクラウド環境の特性によって、手間や時間がかかることが多いです。
大量のデータを効率的に、そして安全に移行するには、専門的な知識やツールが必要となります。

さらに、データの構造やフォーマットの違いによっては、移行後にデータの整合性が保たれないリスクも考慮する必要があり、データ移行作業後の確認作業やデータの修正作業が増えることも少なくありません。

サプライリスク

サプライリスクは、クラウドサービスプロバイダーがサービスを提供できなくなる可能性や、突如としてサービスの内容や価格が変更されるリスクを指します。
特に、ビジネスの核となる業務をクラウドに依存している場合、このリスクは大きな影響を及ぼす可能性があります。

例えば、クラウドサービスプロバイダーが経営不振や技術的な問題でサービスを停止した場合、企業は重要なデータにアクセスできなくなるか、業務が中断してしまうことが考えられます。
また、サービス契約の変更や価格の上昇によって、予想以上のコストが発生する場合もあります。

オンプレミスとクラウドの違いをまとめて比較

ここまで紹介したオンプレミスとクラウドの違いの主要な部分をまとめると次のようになります。

項目 オンプレミス クラウド
初期費用 高い(ハードウェア、ソフトウェアライセンスなど) 低い(ペイアズユーゴー)
ランニングコスト 固定的(更新、メンテナンス費用あり) 可変的(使用量に応じた課金)
スケーラビリティ 限定的(拡張には追加投資が必要) 高い(リソースの追加・削減が容易)
アクセス性 ローカルネットワークが中心 どこからでもアクセス可能
カスタマイズ性 高い(自由に構築・変更可能) 一部制限あり(サービスに依存)
災害時の対策 自社での対策が必要 クラウドプロバイダーが対策を提供
セキュリティ 自社での管理・運用が中心 プロバイダーとの共同管理
エネルギーコスト 高い(自社データセンターの運用費用) 低い(プロバイダーが最適化)
運用スキル 高度なスキルが求められる サービスによるが基本的なスキルで運用可能

注: ペイアズユーゴー:「使った分だけ支払う」という課金方式。多くのクラウドサービスで採用されている。

実際の状況や特定のクラウドサービス・オンプレミスの設計によって、異なる場合があります。

DXとオンプレミスは相性が悪い?

DX推進を検討している企業の中には、その第一歩としてオンプレミス型からクラウド型への転換を検討している企業もあります。

DXとオンプレミスの相性はよくないのでしょうか?
オンプレミスはDXとの相性があまりよくないと感じる企業が多い一方で、実際にはオンプレミスで運用している企業も少なくありません。

DXとは?

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、企業や組織がデジタル技術を導入や活用して、ビジネスプロセス、企業文化、顧客体験などを根本的に変革・改革することを指します。

競争力の向上、業務効率化、新しいビジネスモデルの創出などを目的に取り組まれる

DXについての概要や、取り組むべき理由については以下の記事も参考にしてください。
「DXとは何?デジタル化の先にあるDXを詳しく解説」

クラウドの利用率

日経BPコンサルティングが保有している調査モニター2251人を対象にした「クラウドストレージ導入状況」に関わるアンケート結果では、従業員規模が大きな企業であるほどクラウドストレージの利用率が高くなっており、全体としては約5割の企業でクラウドの利用があると回答しています。

(出典:Biz Clip「クラウドストレージ導入状況」より引用)

このアンケート結果は、総務省が報告している通信利用動向調査報告書の結果ともおおむね一致しています。


(出典:総務省の通信利用動向調査報告書「クラウドサービスの利用状況」より引用)

また、クラウド利用の理由としての上位は、
●ファイル保管・データ共有
●社内情報共有・ポータル
●電子メール
●給与・財務会計・人事
●スケジュール共有
などがあり、どこの企業でも必要となるツールでの利用率が高くなっています。

DXとオンプレミスの相性が悪いと言われる理由

DXとオンプレミスの相性が悪いと言われる理由を3つ紹介します。

自社に要求されるIT人材・DX人材のレベルが高い

オンプレミス環境を運用・最適化するためには、そのハードウェアやソフトウェアの詳細な知識、そしてそれらを連携させるための技術が求められます。
これに対して、クラウドなどの最新技術を取り入れるDXの場面では、より高度な技術や戦略的な思考が求められることが多いです。

オンプレミスでは機器操作や内部構造に精通したIT人材、企業の目的を達成させるためのDX人材を同時に育成することが要求されます。

オンプレミスのシステムを維持・運用するための専門知識は、独自のものであり、その更新やスキルアップのための教育・研修が欠かせません。
このタイプの人材育成に初めて取り組む場合には、企業にとって大きな負担となることが予想されます。

ベンダーロックインに陥りやすい

ベンダーロックインとは、特定のベンダーの製品やサービスに依存する状態を指し、これが原因でシステムの移行やアップデートが難しくなることがあります。

オンプレミスの環境では、特定のベンダーのハードウェアやソフトウェアを導入する際に、それに特化した設定やカスタマイズが行われることが一般的です。

その結果、他のベンダーの製品やサービスに乗り換えることが難しくなる場合があります。
これは、DXを推進する上での大きな障壁となり得ます。
デジタルトランスフォーメーションは迅速に技術の変化やビジネスニーズに対応することが求められるからです。

一方、クラウドサービスなどの現代的なIT環境は、標準化されたAPIやオープンな技術スタックを採用していることが多く、ベンダーロックインのリスクが低減されています。
このような背景から、DXを積極的に進める組織では、オンプレミスのシステムとの相性の悪さが指摘されることが多いのです。

※API(Application Programming Interface、アプリケーションプログラミングインターフェース)は、異なるソフトウェア間で情報をやり取りするための手段やルールを提供するものです。
APIを利用することで、既存の機能やサービスを組み合わせて新しいアプリケーションやシステムを構築することができます。

ベンダーロックインについては以下の記事も参考にしてください。
「ベンダーロックイン脱却でDX推進へ!ベンダーロックインからの脱却方法を解説」

システム移行に費用や手間がかかる

オンプレミス環境では、従来のハードウェアやソフトウェアに依存したシステム構築が一般的であり、これを最新のクラウド環境や新しいプラットフォームに移行するためには、大量のデータの移行やアプリケーションの再設計、インフラの再構築などが必要となります。

このような工程は、時間とコストを大きく消費するため、DXのスピード感とは相容れない場面が生じることも考えられるでしょう。

また、オンプレミスの特定のハードウェアやソフトウェアに特化したカスタム開発や独自の設定が施されている場合、その移行の難易度はさらに高まります。
システムの連携や整合性の確保、性能の最適化などの課題が発生することが想定され、企業にとってはDXを進める上での大きなハードルとなるのです。

オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド

DXを視野に入れたときにはクラウドの方がフットワークの軽さなどから、よいと思われるかもしれません。
しかし、オンプレミスにはオンプレミスの、クラウドにはクラウドのメリットがあり、事業内容によっても異なるのが普通です。

どちらか一方を選択しなければならないのではなく、必要に応じて部分的に選択をするという考え方も重要です。
ここでは、オンプレミスとクラウドを混在させるハイブリッドクラウドという考え方について紹介します。

ハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドは、オンプレミスのインフラとクラウド環境を組み合わせたITソリューションです。
これにより、企業は自社のデータセンター内のリソースとクラウドサービスプロバイダーが提供するリソースを柔軟に組み合わせて使用することができます。

ハイブリッドクラウドの採用は、ビジネスのニーズに応じて最適な環境を選択することを可能にするものです。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドの最大のメリットは、柔軟性です。
企業は、セキュリティが求められる重要なデータやアプリケーションをオンプレミスで保持しつつ、大量のデータ処理やスケーラブルなリソースが必要な場面ではクラウドを活用することができます。

さらに、ハイブリッドクラウドはコスト効率も向上させます。
定常的な運用に必要なリソースはオンプレミスで持ち、ピーク時のみクラウドリソースを利用することで、運用コストを最適化することができるのです。

ハイブリッドクラウドのデメリット

ハイブリッドクラウドにはいくつかのデメリットも存在します。
その一つは、管理の複雑さです。
オンプレミスとクラウドの両方の環境を同時に管理する必要があるため、運用やセキュリティのポリシーを一貫して適用することが難しくなる場合があります。

また、データの同期や通信の遅延により、システム全体のパフォーマンスに影響が出る可能性も考慮しなければなりません。

まとめ:DXを目指したツール選択も重要

DX推進のためには、市場ニーズへの正確な適応と適切なタイミングが大切です。

バックオフィス業務の効率化、デジタル化には市場ニーズの把握や適切なタイミングはあまり関係ありません。
このタイプの業務ではクラウドを利用することも有効でしょう。

一方で、消費者にサービスを届ける企業のコア業務に関わる部分ではオンプレミス運用の方がいい場合があるかもしれません。

それぞれのメリット・デメリットを比較しながら選択することが重要です。

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