DXはテレワークからスタート?テレワークDXの課題や解決策を解説
さらなる企業の生産性を高めるために推進が必要とされているDX。
まだDX推進へと舵を切っていない企業もあるのが現状です。
「DXを推進しようにも、どこから手を付けていいのか分からない」、「自分たちの業務はDXを推進して行うようなものではない」など、DX推進を行っていない企業にはそれぞれの理由があります。
しかし、一連の業務・仕事の中でどこにもデジタル的な要素が含まれていない業種はもはや国内で探すことの方が難しくなりました。
確かに昔ながらのやり方で、業務を続けていくことは可能でしょう。
ただし、すでに従来のやり方から脱却し、新しく効率的かつ生産的な方法にシフトしている企業が数多くあることも知っておくべきかもしれません。
「DXの方向性がまったく見えない」
「どこからDXに手を付けていいのか分からない」
という場合、テレワークを軸にしてDX推進を考えてみるのはどうでしょうか。
本記事ではこれをテレワークDXと呼んでいます。
※テレワークDXという言葉は一般的には使われていません。
目次
DXをテレワークから始めるべき理由
では、どうしてテレワークを意識したDXを進めていくことが望ましいのでしょうか。
DXへのステージは大きく3つの段階に分けられます。
①デジタイゼーション
アナログとなっている業務をデジタル化するステージのことをいいます。
②デジタライゼーション
デジタイゼーションでデジタル化したものを組み合わせ、業務プロセスそのものを自動化する取り組みのことをいいます。
③デジタルトランスフォーメーション(DX)
消費者に新しい価値を届けたり、データを活用して企業の市場での優位性を確保したりする取り組み・変革のことをいいます。
DXから手を付けるというのは現実的ではありません。
多くの企業ではデジタイゼーションやデジタライゼーションから始めていきます。
DXの概要については以下の記事を参考にしてください。
「DXとは何?デジタル化の先にあるDXを詳しく解説」
そして、このデジタイゼーションやデジタライゼーションへ着手することによって、業務の在り方が従来とは大きく変わり、人が本当に関わるべき業務に注力することができるようになるのです。
特にバックオフィス業務のデジタル化は、従業員が出社しなくても仕事を行えるようになる可能性をもっています。
これはリモートワークへの前進に他ならず、場所に限定された仕事が減っていくことでもあります。
リモートワークを実現するためには、オフィスという場所に縛られずに仕事ができる仕組みをつくる必要があります。
そのためにはデジタイゼーション~デジタライゼーションまでの取り組みが必要であるため、DXへの第一歩がテレワークDXとなるわけです。
テレワークが進まない理由と解決策
コロナウィルスが流行した当時から、それぞれの企業がテレワークに注力している姿勢が見られましたが、ここ最近ではオフィスへ出社していた、かつての光景に戻っているようにも思われます。
「オフィスでしか仕事ができない」というのと「オフィスでも仕事ができる」という選択の結果ではなく、場所に縛られた選択を否応なくしているのであれば、テレワークが進まない課題を抱えている可能性があります。
できる業務が限定される
「できる業務」が限定される問題は多くの企業が抱えている問題でしょう。
緊急事態宣言時などは、本来は必要とされていた手続きの猶予などもあり、テレワークが表向き推進されているようにも思われましたが、それが元の状態に戻ると、実際にはテレワークができない社内の状況が浮き彫りになった企業も少なくありません。
できる業務を探してテレワークの従業員に仕事や業務を割り振るのではなく、根本的にテレワークができるような業務の仕組みをつくり変えていくことを前提に考えるべきなのです。
情報もクラウド上で保存ができる時代になり、社内だけに書類をため込んで情報を管理する文化から脱却しなければDXどころか、テレワークの推進すら難しいことが予想されます。
人がやらなければいけない仕事とそうでない仕事を明確にし、少しずつ人が行うルーティンワークの範囲を小さくしていく方向で考えるのが重要です。
コミュニケーションの希薄化と仕事の進捗管理
テレワークを推進していくと、社内でのコミュニケーションの希薄化はよくとりあげられる問題です。
チャットやビデオ会議などでのコミュニケーションが増えたとしてもリアルな形での対面で得られた新鮮な刺激は大切です。
しかし、それらがどのぐらい企業の生産に貢献しているのかと数字で考えることも同じぐらい重要です。
時にはチャットやビデオ会議ではなく、対面での研修や仕事の打ち合わせが必要な場合もあるでしょう。
コロナ禍の特需でZoomの利用者数は3億人までのぼりました。
これだけの人たちがオンラインでの会議を実施しても問題なく業務を行うことができたという実績があることに目を向けるべきではないでしょうか。
勤怠管理の課題
「時給」という概念を捨てきれない企業であるほど、勤怠の管理を問題視する傾向にあります。
在宅勤務となっているリモートワークの状態では、勤務時間の監督者をつけたとしても限界があります。
勤務時間で労働の有無を計るのではなく、成果の進捗状況に応じて勤務の有無を計るという考え方が望ましい場合もあります。
それぞれの人に割り当てられた仕事の役割を明確にして、その仕事の進捗をチャットやクラウド上での情報共有によって管理していくことも一つの手段です。
人事評価への影響がある
人事評価もリモートワークを行う際の課題です。
時給的な発想であれば、勤務時間から算出することも可能ですが、勤務時間の管理にも限界があります。
仕事の進捗は管理できても、それ以上の評価を従業員に対して行うことが難しくなります。
しかし、そもそも人事評価は適切に行えないという前提である企業では、企業の利益から自動的に按分するような仕組みを採用していたり、AI人事評価の導入を従業員に説明したりしている企業もあります。
これらを組み合わせたハイブリッドな人事評価にも可能性があります。
HR Techのような人事業務に変革を与えるツールの開発も続いているので、導入を検討する余地は十分にあるでしょう。
テレワークをしている従業員とテレワークをしていない従業員が混在している場合には人事評価にも不公平感が出ないような配慮が必要です。
IT資産の管理と貸与リスク
クラウドツールの導入などで簡単に解決できないのが、IT資産の管理と貸与のリスクです。
従業員がテレワークをする場合の貸与するIT資産(パソコンなど)をどこまで資産とするかが問題です。
パソコンを貸与した場合であっても、付属品は従業員がすでに持っていたものを使うケースも出てきます。
誰も得をしないコストであれば支払いたくないと考えるのが普通ではないでしょうか。
資産計上の観点や、情報の漏洩リスクなどの観点も踏まえて、貸与したPCであるか、個人の端末を利用しているかなど、細かいですがすべて企業のもとで管理ができる状態にしておく必要があります。
管理状況が可視化できる状態をつくり、情報の漏洩リスクにおける対応マニュアルの整備もしておくことが求められます。
テレワークDXのメリット
DXを推進する第一歩となるテレワークDX。
テレワークを進めると社内で見られるよい変化(メリット)について解説していきます。
業務効率への期待
普段のオフィス業務を自宅やカフェなどで行うのでは効率が落ちてしまうでしょう。
しかし、クラウドサービスの活用やチャットツールの導入によって生産性という観点では自宅やカフェでの仕事の方が、効率が良くなることもあります。
タイムマネジメントや、従業員全員が同時に稼働している勤務時間の調整をすることによって従業員のライフワークバランスにも配慮された生産性の高いチームができあがることが期待されます。
コミュニケーションの活性化
ここでいう「コミュニケーション」とは、仕事に係るコミュニケーションのことです。
対面でのコミュニケーションは新鮮でリフレッシュできる内容も多分に含まれていることでしょう。
仕事の話だけでなく雑談じみたことなども含めてコミュニケーションの一つであることは間違いありません。
しかし、「仕事を完遂させるため」という観点でのコミュニケーションは対面の場合よりもチャットやビデオ会議を導入して活用したときの方が用途にあったコミュニケーションがとれることが多いです。
わざわざチャットツールを利用して日ごろの雑事の内容について語ろうとする従業員は少ないはずです。
オフィスでは誰かが困っている雰囲気を出している従業員に声をかけてフォローしてくれる場合もありますが、テレワークではそれがありません。
仕事で分からないことがあったら自分から積極的に質問をするなど、行動をおこす必要がでてきます。
テレワークという環境は、仕事に必要なコミュニケーションを活性化させるメリットがあります。
テレワークを推進していない場合であっても、社内でのやりとりを基本的にチャットツールのみでのやりとりに限定し、会話をコミュニケーションツールでのみに限定している企業もあります。
これは企業の文化によるところもあり、導入が必須ということではありませんが、対面であればコミュニケーションの希薄化が防げるという考えは必ずしも正しいとは限りません。
近くに助けてくれる人がいるという前提が、仕事で必要な報告・連絡・相談といったコミュニケーションをおろそかにさせてしまっている要因である可能性もあるのです。
消費者の満足度へも直結
テレワークを軸にすべての業務を考えると、消費者の満足度へとつながるヒントが見つかるようになります。
DXは消費者ニーズの変化に対応するための手段です。
消費者がファーストコンタクトをとったときの返答までのタイムラグも自動化することが可能になり、ビデオ通話によって遠方の見込み顧客ともスケジュールを少し調整するだけでお互いに表情を確認しながら話を進めていくこともできます。
テレワークにしてもDXにしても、社内の業務の効率化の水準が引き上げられたと感じたら、本来の目的である消費者のニーズに目を向けてみるのがいいかもしれません。
普段オフィスでお客さま対応を行っている場合には、テレワークを推進することによって、オフィス外での対応もできるようになります。
足を運ばなくてもいい分、時間の都合もつけやすく、双方にとって都合がいいものである可能性もあるのです。
テレワークからスタートするDXへの第一歩
テレワークDXを推進するために必要なツールや項目を紹介していきます。
コミュニケーションツールの導入
テレワークを行ううえでのインフラになるのがコミュニケーションツールです。
WEB会議用のアプリであれば、インストールするだけですぐに使えるようになるものもあります。
チャットツールの導入なども場合によっては検討していいかもしれません。
ペーパーレス化
場所に縛られずに仕事をする際に必要なものに情報があげられます。
社内にしかない紙ベースで管理している書類はクラウド上で必要な人がすぐに閲覧できる状態にしておくことが望ましいです。
紙媒体のままの保管では、保管スペースをとってしまうデメリットもあります。
一覧性に欠けるというクラウド保管のデメリットもありますが、どうしても一覧性を備えておきたい書類の場合には、クラウド上での保管と紙ベースでの保管という2パターンでの保管をすることがおすすめです。
必要な情報が手元にないために仕事が進まないという問題点を解決する方が、優先順位が高いからです。
電子契約
取引の際に必要な契約書類を電子契約にすることもリモートワークを推進するうえでは必要なことです。
紙の書面で契約を進める場合、契約に合意してから書類の郵送と押印、返送のやり取りを繰り返します。
不備があればその分だけ工数が増えます。
電子契約を導入すれば、契約の合意からこのような手間をかける必要はなく、メールだけでやり取りが完結し、書類の控えまで自動で保存できるためペーパーレス化にもつながります。
オフィスで仕事をしないことを前提と考えると、そもそも個人の住所を先方に知られることにもなり、プライバシー保護の問題も生じます。
外部との契約を交わすことが多い場合には電子契約の導入は積極的に検討するべきでしょう。
ワークフローシステムの導入
ワークフローは「仕事の流れ」を意味する言葉で、申請→承認・決定→さらに上級職の人の承認・決定などの一連の流れのことを指します。
ワークフローが可視化できていない状態では、どこまで仕事が進んでいるかを把握することができませんし、オンラインで完結しない承認作業などは、捺印の手間もかかりデメリットの方が大きくなってしまいます。
ワークフローシステムを導入することで部署が違う人への申請、違うオフィスにいる人への申請も容易になります。
ワークフローシステムについての詳細は以下の記事を参考にしてください。
「DXを始めるならワークフローから!中小企業のワークフローDXを解説」
労務管理のツール
従業員の人事評価から給与の計算など、複雑な入力作業が多く、人員も割かなくてはならない労務管理。
担当者への負担が大きいにもかかわらず、企業への直接的な利益に貢献することは少ないのが現状です。
労務管理ツールの導入は業務を効率化するだけでなく、コスト削減にもつながります。
・有給休暇の取得状況の確認
・給与計算
・人事評価
・採用候補者の管理
など、これらを自動で行うツールもあります。
どこまで自動化・効率化を目指すかにもよりますが、部分的にでも導入する価値は十分あります。
オンライン申請への対応
企業間での書類だけでなく、行政へ提出する書類もオンライン化されています。
補助金や助成金など、各種申請手続きをオンラインで受け付ける体制が整っている中、紙媒体での書類申請しかできないのは機会損失につながりかねません。
・税に関する申告
・社会保険に関する各種手続き
・助成金や補助金の申請
など、オンラインであれば24時間申請可能ですので、業務の計画性に幅をもたせることができます。
会計ツール
クラウド会計ソフトを使うことで、経理作業が大幅に削減されます。
法人決算用のクレジットカードを紐づけておくことで、自動で決算書まで作成してくれるツールもあります。
領収書の保管を気にする必要もなく、すべてが自動で処理を進めてくれるため、人的ミスもおこしません。
テレワークでは、とにかく紙媒体の量を減らすことが重要です。
必要な情報が手元にないと、そこから先の仕事が進まないからです。
決算書の作成などは期限も決まっており、正確さと速さの両方が求められますが、クラウド会計システムを使えば、その両方を簡単に実現させることができます。
経理は資産やその収支の問題点等を経理の目線で分析、提言することが生産性の高い仕事と認識されるようになるかもしれません。
テレワークで注意するべきセキュリティリスク3選
テレワークは時間や場所の自由度が広がるメリットの大きな取り組みですが、セキュリティの面で気を付けなくてはならない要素もあります。
テレワークツールの盗難・破損リスク
今まで社内にあった機材を従業員の自宅に持ち運ぶ場合にはツールそのものの管理体制は従業員のリスク管理能力に委ねられることになります。
ツール・機材の紛失、盗難、破損などのリスクはオフィスで仕事をするときよりも高くなると考えた方がいいでしょう。
機材の置き場所、扱い方、カフェなどに持ち込むことを禁止するなど、少し細かいぐらいにマニュアルを作成しておくことが無難です。
有事の際の速やかな報告の仕方なども忘れてはいけません。
企業側でどの機材がどこにあるのかを把握しておくことも重要です。
ネットワーク上のセキュリティ対策
社内ネットワークではなく、個人のネットワークを通じてのネット利用は個人でセキュリティ対策を行う必要があります。
セキュリティが弱いカフェなどのフリーで利用できるWi-Fiの利用を禁止することやウイルス対策を行うことなどの決まりをつくっておくことも重要です。
外部との接触リスク
ネットを利用しない作業を行う場合であっても従業員が外部と接触することによって社内の機密情報が外部に漏れてしまうケースも想定されます。
周囲にいる人は「自分に関心がないから大丈夫」という楽観的な気持ちでいることは危険です。
自宅以外の多くの利用者がいるスペースでリモートワークを行う場合には安易にパスワードの入力場面を見られることなどないように注意しましょう。
テレワークDX推進のデメリットは?
テレワークDX推進のデメリットとしてはは、以下の2つです。
・人間関係が希薄になりがちなこと
・テレワークでどうしてもできない仕事まではデジタルにし切れないこと
人間関係の希薄化については、仕事上のコミュニケーションがしっかり取れていればあまり気にすることはなくなるはずです。
問題は、テレワークでどうしてもできない業務があるということです。
しかし、すべてをデジタルに移行することが目的ではありません。
テレワークにできない業務があるというのはデメリットではなく、普段通りの業務の形でこなせばいいだけです。
このように考えていくと、テレワークDXを推進するデメリットはあまりなく、推進しなかったときのデメリットの方が大きいといえるかもしれません。
まとめ:テレワークはDXへの第一歩
テレワークは必須ではありませんが、テレワークでも業務ができる状態を整えていくことはDXを進める準備でもあります。
デメリットに思われるような、コミュニケーションの希薄化も、本質的な問題はテレワークとは無関係であることも多いです。
適切な業務効率化を考えたテレワークがDXのきっかけとなるかもしれません。
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