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DX推進状況は「見える化」が大事!DX推進指標(KPI)を解説

企業が、変化の激しい環境に対応し続けながらデータとデジタル技術を活用しながら消費者と社会のニーズを満たすための変革をし続けることは重要な課題です。

競争の優位性を維持するための取り組みであるDXはこの発想のもとに生まれた考え方でもあります。

自社でも、DX推進の取り組みをしているものの、実際にはどのぐらいDXが進んでいるのか判断できないというケースもあるのではないでしょうか。

DX推進の取り組みは可視化することが難しく、KPIを曖昧なまま進めてしまうと、どこにどのような問題があるのか発見できないまま、間違った取り組みを継続してしまうことにもつながります。

まずは現状を知ることで、何が足りないのかを把握しながらDXと向き合うことが大切です。

DX推進指標とは?

自社のDXがどの状態にあるのかを「見える化」するために必要になるのがDX推進指標です。
推進指標は、DX推進への取り組み内容を共有し、課題を発見して次への行動へとつなげるために活用するためのものです。

DX推進指標が策定された理由

DX推進は、データやITツール、デジタル技術を活用しながら新しい価値を創造し、顧客や社会にその価値を提供するためのものです。

しかし、DX推進の重要性だけが独り歩きしてしまい、次のような状況に陥っている企業も少なくありません。
◆デジタル技術を活用して何ができるだろうか?(目的と手段の入れ替わり)
◆今のままのビジネスモデルでも困らないのではないだろうか?(危機感の認識不足)
◆大事なのは分かってもどこから手を付ければいいのだろうか?(DX推進体制の未整備)

これらの課題を抱えたまま具体的な行動に移すことは難しいでしょう。
そこで、社内でビジョンの共有を行い、目指すべきロードマップを明確にしてからDX推進への具体的な行動を起こすために、DXレベルの可視化が大切です。

可視化には、やはり数値が有効です。
そこで考えられたのがDX推進指標というわけです。

なかなかDX推進の取り組みが進まないと思っているときに、明確な数字に基づいた原因分析をすることで課題可決につながるでしょう。

DX推進指標活用の流れ

DX推進指標の活用の流れは次の3つの段階を経ます。
①自社に係る課題やビジョンの共有
②具体的な行動を起こす
③PDCAを回し、改善を続ける

②と③は定点観測をすることが重要になります。
ビジネス的視点で何をKPI(重要業績評価指数)とするのかを明確にしておくことで、到達度が可視化されます。

曖昧な効果測定にならないためにも、「何で」効果測定を行うのか慎重に決めることがポイントです。

DX推進指標活用の注意点

DX推進指標は企業が自社の状況と照らし合わせながら質問に回答していくことでDXの推進状況を点数化しながら見える化し、次の行動へとつなげていくのが目的です。

したがって、DX推進指標で高得点をとることは重要ではありません。
重要なことは、DX推進指標で自社が弱いと感じた部分へどのように取り組んでいくべきなのか、あるいは取り組む必要はないものではないのかなど、自己分析をすることです。

また、企業のビジネスモデルを評価するものでもないことにも注意が必要です。
業界や業種、ビジネスモデルによっては得点が低迷することもあります。

目的と手段が入れ替わらないように注意して活用したい指標です。

DX推進指標活用のメリット

DX推進指標活用のメリットについて解説していきます。

メリット

課題が浮き彫りになる

自社の状況を客観視するためにはコンサルタントなど、外部機関に頼らなければいけない部分も出てきます。
もちろん、コンサル費用の負担も継続的に必要になるかもしれません。

しかし、DX推進指標を活用すれば、ある程度、客観視した自社のDX状況の評価を自分たちでフィードバックできます。
自社の課題が浮き彫りになり、取り組むべき課題に優先順位を付けられるのは大きなメリットです。

ベンチマークと比較する

ベンチマークと比較することで、自社の水準が定常であるかどうかの判断材料になります。
業界者ビジネスモデルによって異なてくる数値ではありますが、比較しておくことは重要です。

業界の水準を理解することで、今後の経営判断の材料にできる点もメリットです。

※ベンチマーク
「指標」や「基準」という意味をもつ用語で、競合他社と比較をする際に用いる数字のことを指して使われることが多いです。
他社と比較することによって、自社の状況を相対的に判断することができます。

2025年の崖問題への対策になる

サポートの終了したシステム、所有している自社サーバーは過去の遺産となりつつあります。
現代ではクラウド上での情報管理がスタンダードになっており、月額で数百円~数千円台のツールも普及しています。

過去のシステムはメンテナンスができる人材の離職に伴い、システム構造を把握する人材がベンダー企業側でも用意できないという問題(2025年の崖)があります。
それゆえ、人件費やシステムの改修費用が高騰してしまうのです。

この課題を乗り越えるためには企業がデジタル競争へと方針を転換させる必要があり、DX推進こそ2025年の崖問題の解決に必要不可欠な要素となります。

DX推進指標の内容

DX推進指標の自己診断項目は、
・経営のあり方や仕組み
・ITシステムの構築
の2つの項目に対してそれぞれ定性指標と定量指標が決められています。

定性指標・定量指標

DX推進指標には、数値化して測定することが難しい側面(定性指標)と数値化して図ることが有効な側面(定量指標)の2種類の質問項目が用意されています。

「DX推進の枠組み」と「ITシステム構築の枠組み」の経営の仕組みに関わる定性指標では、経営者が回答することが求められるキークエスチョンと、部門と相談しながら回答することが求められるサブクエスチョンに分類されています。


出典:経済産業省レポート「DX推進指標」の構成

定性指標評価は6段階で実施

数値化が難しいものであっても、数値によって「見える化」することで自己分析が可能になります。

そこで、それぞれの質問に対する回答はレベル0~レベル5の6つの段階で評価することになっており、その項目ごとの目安となる内容は以下の通りになっています。

レベル0:未着手
経営者がDXに無関心、あるいは何の取り組みも行っていない状態

レベル1:一部で散発的実施
会社戦略が明確でない中、部門単位での実施・施行にとどまっている状態
※ビジョンをもたずに目下の業務のデジタル化だけを追いかけると陥りやすい状態といえます。

レベル2:一部での戦略的実施
会社全体の戦略に基づく一部の部門での推進ができている状態

レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進
会社全体の戦略に基づき部門横断的な推進が実施できている状態

レベル4:全社戦略に基づく持続的実施
定量的な指標を用いた持続的な実施ができている状態
※やり方を企業の文化として定着させていく以外にも、自社に合わないと感じた方法の改善などを積極的に継続していく姿勢も含まれます。

レベル5:グローバル市場におけるデジタル企業
デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことができる状態
※DXの最終形態ではあるものの、変革を続けていく姿勢はもち続ける必要があります。

DX推進の枠組み(定性指標)

DX推進の枠組みの評価に使われる項目には、
・ビジョン
・マインドセットや企業文化
・人材育成や確保
などがあります。
それぞれの項目がどのような趣旨で設置されているのかを簡単にまとめました。

定性指標ですので、数値化しにくいところもありますが、企業風土の見直しやDX人材への評価基準の見直しにつながる内容もあります。

①ビジョン

ビジョンの共有はDX推進の根幹をなすところです。
ビジョンが共有できていない状態でDX推進を目指そうとした場合、「ツールを使って何かできないか」など、目的と手段が入れ替わることが考えられます。

DX推進の目的をUX(ユーザーエクスペリエンス:顧客体験)の提供に設定し直すことで、正しい方向でDX推進を目指すことができるようになります。

DXが業務改善と効率化だけで終わるものではないという認識も大切であり、「どうしてDXが必要なのか」という問いに従業員レベルで答えをもっている状態が理想的です。

②経営トップのコミットメント

経営トップが「DX推進をする」という意思表明をしたり、現場に指示を出したりするだけでは、DXは推進されませんし、コミットメントしているとは言い難いです。

・DX推進に必要な予算は組んであるか
・社内でDX推進ができるような体制を整えているか
・DX推進を中心となって行ってくれている人たちへの権限委譲を行っているか
・人材の配置は適切か

こういった、経営サイドからのサポート体制を整えていくことが重要です。

③評価の仕組み

DXによる変革は事前に予想できないものであることがほとんどです。
そこで、失敗を恐れずに挑戦していく企業文化を醸成していく仕組みづくりが重要になります。

DXへの取り組みによって成果が得られるまでにはタイムラグがあるのが普通です。
評価の仕組みを整えておかなければ、DX推進プロジェクトに参画している人たちがまったく評価されないということにもなりかねません。

現場で働く人たちが安心して仕事に打ち込める環境を用意することも大事な観点といえるでしょう。
従業員への「挑戦」を評価する仕組みを導入することも一つの選択肢です。

また、失敗を失敗と判断するためのKPIの策定も重要です。
失敗の定義づけも曖昧になってしまいがちですが、正当なKPIを用意することで曖昧さを回避できますし、行き当たりばったりのDX推進にならなくなります。

人事評価・成果評価の基準を適切に策定しておくことが求められています。

④人材育成・確保

DX推進の最大の障壁は人的リソースの確保です。
デジタルツールに強い人材やシステム開発ができる人材が自社にいないのが普通です。
それを前提にしてどのように推進するのかを考える必要があります。

社内の人的リソースがどのような状態であるのかを把握し、どの部署にどういう人材が必要なのかをはっきりさせることが大切です。

足りないスキルが分かれば外部と連携することによって不足したスキルを補うこともできます。
優秀な人材を確保するためのDXと関連した人事評価の見直しを検討することも人的リソース確保のうえでの有効な手段です。

DXでの事業変革を起こすには、「技術によってできることを把握している人材」と「自社の提供するサービスを理解しており、アイディアが出せる人材」の存在が必要不可欠です。

技術一辺倒でも、既存のビジネスモデル一辺倒な人材でもDXによる変革を目指すことはできません。
とがった能力をもっている人材は融合させることで新しい価値創造の可能性が高まります。

DX推進の取り組み状況(定量指標)

定量指標とは、数値化できる指標のことですが、企業によってDXの取り組み方がさまざまであることから、一概に指標を提示することが難しいのも事実です。

DX推進の取り組み状況については、企業ごとに自社に適切な指標を設けることによって進捗の管理を行うことが推奨されています。
ここでは、DX推進の取り組み状況を測定する経営指標のパターンを2種類紹介します。

パターン①:市場での競争力を測定する指標

DXは市場での競争の優位性を保つために行うものです。
したがって、DXによって経営数値がどのように変化したのかを比較することは重要な指標といえるでしょう。

「DXによって競争力強化ができているかどうか」を数値で比較する場合、DX推進を始めてから新しい評価基準を取り入れるのではなく、普段の経営指標をそのまま活用することが大切です。
判断基準を変えてしまっては、DXが上手く進んでいるのか、進んでいないのかを比べることが難しくなるからです。

例えば、研究開発分野であれば、製品開発までのスピードを指標とすることが考えられます。
新製品の開発着手から開発にかかった費用や時間、市場へ流通するまでの期間の変化をDX推進以前のものと比較して分析することが重要です。

他にも、見込み顧客の増減、消費者アンケートの結果、業務の効率性などを指標にすることが考えられます。


DXによる競争力の強化の到達度合いに関する定量指標の例
(DX推進指標とそのガイダンスより引用)

パターン②:自社内のデジタル割合で測定する指標

DX推進状況を、自社のデジタルサービスの運用割合や、それにかかわる人員の割合で評価する方法があります。
デジタルツールを活用している割合を増やすことを目的としてしまうケースもあるので、この点には十分注意が必要ですが、DX推進をスタートさせてからの年数の経過とともに数値を追っていくことでその進捗が概ね把握できるようになります。

デジタル比率を指標とする場合の例としては、
・企業全体に占めるデジタルサービスの割合
・デジタルサービス全体の利益
・デジタルサービスへの投資額
・デジタルサービスの運用に携わっている従業人の割合・人数
・試行錯誤の数
などが当てはまります。


(DX推進指標とそのガイダンスより引用)

これらの指標を利用する場合には、注意点もあります。

活用する場合には、先ほど紹介した競争優位性の比較検討をセットで行うことが望ましいということです。
デジタル化の割合・比率が高くなっていることとDXが推進されていることは必ずしも同じではありません。

事業としての成長を目的にしてDXを推進させるのであれば、DX推進指標に関わるKPIも業績と直結する指標を設定することが望ましいのです。

まとめ:DX推進のためには「見える化」が大事

DX推進は、その推進状況の可視化が難しい分野です。
しかし、事業として行うのであれば、数値的な結果を残さないことには意味がありません、

ビジネスにおいてすべての結果は数字が基準となって測定されるべきです。
これからDXに取り組む企業も、すでにDXに取り組んでいる企業も、DX推進のための適切な推進指標を設定しておくことが効率のいいトライアンドエラーへとつながり、成功への近道といえます。

DXは一度で終わるものではなく、続いていくことを前提とした取り組みです。
しかし、その土台をつくっているのは企業風土であることに間違いありません。

従業員の「挑戦」を後押しできる企業風土は失敗から学ぶ大切さを従業員の育成にもつながります。
DX推進のために、まずは組織の風通しから見直してみることも重要かもしれません。

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