人材育成とは?必要な準備や育成方法、進めかたのポイントなどを紹介
「人材育成ってどんな活動なの?」
「人材育成の方法は?」
「人材育成を実施するときの注意点は?」
企業が成長するためには、社員の成長が欠かせません。また、近年は少子高齢化の影響で労働人口が減少しているため、社内のリソースを有効活用する重要性が高まっている状況です。そのため、多くの企業が人材育成に注力しています。
しかし、適切な方法で人材育成を実施しなければ、大きな効果は実現できないばかりか、離職率の増加につながる可能性もあるでしょう。そのため、そもそも人材育成がどのような目的で行われるものか正しく理解し、自社に合った方法で実施されるべきなのです。
そこで今回は、人材育成の意味や必要な準備、育成方法、進め方のポイントなどを解説します。
目次
人材育成とは
まず人材育成がどのような活動なのか理解するために、意味や目的を解説します。
人材育成の意味
人材育成とは、社員の業務スキルを向上させ企業の収益向上に貢献できる人材へ育てるための活動です。社員が多くの経験を積みスキルを身につけることによって生産性が上がれば、企業の競争力が高まり収益向上が期待できるだけでなく、仕事に対するやりがいやモチベーションの向上にもつながるでしょう。
自社の経営戦略を成功に導くためには、それを実現できる相応のスキルを持った人材を、計画的に育成していかなくてはいけません。そのため、いつ、どのような人材が、どれくらい必要なのかを把握したうえで、人材育成計画を立てることが重要です。
人材育成に取り組む目的
企業が人材育成に取り組む目的は、自社の生産性や競争力を向上し収益拡大を実現するためです。少子高齢化の影響で労働人口が減少している近年において、優秀な人材を採用することが難しくなってきています。そのため、社員をスキルアップさせることで、生産性向上を実現しようとする企業が増加傾向です。
また、売り手市場といえる現在の転職市場においては、社員の離職率抑制も大きな課題といえます。社員がスキルアップすれば、よりハイレベルな仕事にアサインできますので、仕事に対するモチベーションアップの実現が可能です。その結果、社員のエンゲージメント強化にもつながり、定着率が向上する効果が期待できます。
人材育成の種類
人材育成にはさまざまな方法がありますが、代表的なものは以下の通りです。
人材育成方法 | 概要、メリット・デメリット |
OJT | 「On the Job Training」の略語で、社内で実務経験を通して、先輩社員が指導する人材育成方法
メリット:低コストで実践的に人材育成が可能 デメリット:指導者によって効果が異なり、体系的な指導が困難 |
Off-JT | 「Off-The-Job Training」の略語で、業務から切り離された環境で実施する研修などの人材育成方法。「ロジカルシンキング研修」や「マナー研修」などに適している
メリット:専門家による理論的で体系的な知識を習得できる デメリット:講師の費用が発生する点と業務ができなくなる時間が長い点 |
SD(自己啓発) | SDは「Self Development」の略語で、通信講座や書籍など、独学による人材育成方法
メリット:学びたいスキルの選択肢が広く、時間的な融通が利きやすい デメリット:強制力に乏しく学習のモチベーションを維持しづらい |
集合研修(社内スタッフ) | 社員を同じ場所に複数名集めて実施する、社内スタッフによる研修などの人材育成方法
メリット:大勢の社員が一度に実践的なスキルが学べる デメリット:調整コストが甚大な点と、講師適性のあるスタッフの育成と確保が困難 |
集合研修(外部講師: | 社員を同じ場所に複数名集めて実施する、外部講師による研修などの人材育成方法
メリット:大勢の社員が専門家からスキルを学べる デメリット:調整コストが甚大な点と、講師の費用が高くなる点 |
公開講座 | コンサル会社などが実施している研修に社員を参加させる人材育成方法
メリット:専門的な内容の研修に、社員1人から参加させられる デメリット:受講費用が割高な場合が多い |
eラーニング: | WEBサイト上で受講する研修などの人材育成方法
メリット:カリキュラムが豊富かつ受講者の時間の融通が利きやすく、コストも安価 デメリット:強制力に乏しく学習のモチベーションを維持しづらい |
人材育成に必要な準備
人材育成を実施する前には、以下3点について準備を進めておきましょう。人材育成のゴールを明確化しておくことが大切です。
自社の課題を抽出
人材育成を実施する際には、まず現場のワークフローや仕事の進め方を確認し、自社の課題抽出を行いましょう。リストアップした課題について、管理職と現場のスタッフにヒアリングを実施し、プライオリティを決めていきます。自社の課題解決のためにどのような人材が必要なのか明確化することが大切です。
人材育成における課題抽出
次に、自社の人材育成で課題になりそうなポイントを可視化しましょう。例えば、管理職と現場のスタッフでは目線が異なるため、人材育成に求めるポイントも異なります。したがって、立場ごとのニーズや課題を洗い出し整理することが重要です。
また、自社の事業戦略と人事育成の方向性がマッチしているか確認することも忘れてはいけません。
組織のあるべき姿を可視化
現在の組織体制と、将来的に実現したい組織体制や人員構成のギャップを把握することも必要です。現場スタッフはもちろん、経営層にもヒアリングをして確認しましょう。人材育成のゴールイメージを明確化することが目的です。
人材育成の進めかた
人材育成を進める際の、おおまかな流れを解説します。
スキルマップの作成
スキルマップとは、社員に必要なスキルをキャリアや役職などに応じて体系化し、時系列にプロットした表です。
スキルマップを活用することによって、社員ごとに必要なスキルが可視化できますので、人材育成を効率的に実施できます。
なお、スキルマップのおおまかな作成方法は以下の通りです。
1:必要なスキルを洗い出し、可視化
2:役職・キャリアごとにスキルを分別
3:人材育成の担当者が確認し、不適切な箇所を修正
4:スキルマップへプロット
人材育成方法の決定と実施
次に具体的な育成方法を決定します。人材育成方法を絞り込む方法は、以下の3種類が一般的です。
・スキルマップの活用
・人材育成方法のメリット・デメリット
・費用対効果
1つ目の方法は、スキルマップを活用して、該当する社員に必要なスキルを絞りこみ、最適な人材育成方法を選択する方法です。例えば、「英語が必要な場合は語学研修」といったように絞り込んでいきます。
2つ目の方法が、先ほど紹介した人材育成方法のメリット・デメリットから絞り込む方法です。例えば、営業時の交渉スキルを上げる際には、コストが高い外部講師ではなく、実務経験が豊富で、かつコストが少なく済む先輩社員による集合研修が効果的といったケースが挙げられます。
そして3つ目が、費用対効果による絞り込みです。ここは人件費や外部講師の費用などとスキル習得による効果を天秤にかけて判断する必要があります。
効果測定の実施
人材育成を実施する際には、やりっぱなしにしないことが非常に重要です。そのため、研修などを実施した際には、学んだスキルが身についているか定期的に振り返りを行うなど、効果測定を実施しましょう。効果測定は「定量」と「定性」、両方の評価基準を設け、社員のスキルアップにつながっているか検証することがポイントです。
人材育成のポイント
人材育成を実施する際には、以下3つのポイントに留意しながら進めましょう。
人材育成の目的を明示すること
人材育成を実施する際には「どのような役割を担ってもらうのか」「どのようなパフォーマンスを期待するのか」「どのようなスキルが必要なのか」といった目的を明確化することが先決です。そして、人材育成の目的は対象となる社員にも、事前に明示しておく必要があります。
育成される社員自身がゴールや育成目的を把握しない状態で人材育成を行っても、納得感が得られず研修などに身が入らない可能性が高くなるでしょう。その結果、人材育成で高い効果を上げることが困難になります。
そのため、人材育成を効果的に実施するためには、研修などの参加者に対して目指すべき姿や育成目的を事前に共有しておきましょう。
育成対象者のレベルに合わせること
人材育成を行う際には、育成対象である社員のレベルや目線に合わせて研修内容を検討することが重要です。会社の都合を上から社員へそのまま押し付けても、納得感を得ることは難しく、研修などを実施しても高い効果を期待できません。
そのため、人材のレベルに応じて最適な研修内容や難易度になるように調整することが大切です。
スキルを実践する機会を作ること
実際の業務の現場で必要になるスキルや知識を学ぶことができれば、社員が実践しやすくなり人材育成の効果測定も実施しやすくなります。座学で覚えた知識は現場で試さないと意味がないので、人材育成を実施する際には、スキルを実践できる機会を準備しておくことも忘れないようにしましょう。
また、スキルが身に付いたか確認するために、社員の行動計画を立ててPDCAを実施することも重要です。
人材育成の成功事例
人材育成に成功した企業の事例を3件紹介します。自社における人材育成の方法を考える参考にしてもらえれば何よりです。
スターバックス コーヒー ジャパン
スターバックスの人材育成はマニュアルがないことが大きな特徴です。もちろん、ドリンクを作るためのノウハウが書かれたマニュアルはありますが、すべての研修において「こうしなさい」と押し付けることはありません。社員自身が「何をするべきか」都度考えて行動できるようになることを目指し、先輩社員などがコーチングを行います。
また、研修でスキルを学んだ後、必ず教える側の立場になる機会を与える点も同社の人材育成の特徴です。学んだスキルを他人に教えることで高い定着効果が期待できます。さらに、同社のOJTは社員の成長度合いに合わせて4段階に分かれていることや、社員自身が大切にしたい価値観を上司と定期的にすり合わせることも特筆すべきポイントでしょう。
Yahoo!
Yahoo!の人事育成でもっとも有名な施策は、多くのメディアでも取り上げられた1on1ミーティングです。上司が部下と話をする場を定期的に作り、深いコミュニケーションをとることによって、業務上のトラブルや混乱が減り業務効率化を実現しました。また、上司が部下の能力や適性を見極め人材育成の適正化を実現したことで、自主性のある人材を増加することにも成功したそうです。
1on1ミーティングの実施にあたって、育成する側の上司のスキルアップを促す必要があり、「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」を学ぶ研修が実地されているということです。さらに、同社では1on1ミーティングの効果を最大限に高めるために、外部のスペシャリストに依頼して実施内容や方法などのブラッシュアップを実現。社員のほとんどが隔週1回以上、30分程度の1on1ミーティングを実施するほどにまで、効果が体感できています。
SoftBank
SoftBankでは「40代向けキャリア研修」を実施し、若者だけでなく中堅社員向けの人材育成にも注力している点が特徴です。20代、30代の若く優秀な社員が多い同社では、40代の社員がキャリアの停滞感や役職定年などへの不安を持ちやすく、モチベーションの維持が課題となっていました。そこで、外部のプロフェッショナルに依頼し、社内講師を育成し40代向けキャリア研修を自社内で運用できる体制の構築を実現したそうです。
その結果、研修に参加した40代社員のキャリアビジョンへの納得度向上に成功しました。同社には社員がさまざまなスキルを身につけられる「ソフトバンクユニバーシティ」や、現在の業務とは異なる事業領域へチャレンジできる「全社フリーエージェント制度」「全社ジョブポスティング制度」といった環境が準備されており、キャリアビジョンが明確になった社員が自発的にアクションを起こしやすい点も大きな成功要因といえるでしょう。
まとめ:自社にあった人材育成方法で生産性向上を実現
人材育成は社員の業務スキルを向上させ収益向上に貢献できる人材へ育てるための活動です。人材育成のおもな目的は、企業の収益増加や社員の離職率の抑制などが挙げられます。
少子高齢化による労働人口の減少により、人材育成はすべての企業において重要な課題といえるでしょう。しかし、自社にあった人材育成方法を確立できなければ、大きな効果は上がりません。そこでおすすめしたいサービスがHUB on(ハブ オン)です。
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