360度評価の7つのメリット・5つデメリットとは?導入時の注意点も5つ紹介!
「360度評価とは?」
「360度評価のメリット・デメリットとは?」
「360度評価を導入するときの注意点とは」
近年、360度評価を実施する企業が増加傾向です。終身雇用から成果主義への移行が進み、従前の評価方法を見直しはじめている人事担当者様も多いことでしょう。
優秀な人材の定着率を上げるためには、納得感のある評価制度が不可欠です。被評価者の腹落ち感に乏しい評価結果が続くと、離職してしまう可能性も否定できません。
そこで今回は、360度評価の概要やメリット、デメリット、導入時の注意点などを解説します。360度評価を導入しようとしている人事担当者様は必見です。
目次
360度評価とは
360度評価がどのような評価制度なのか解説します。360度評価の概要や目的、また導入企業が増えている背景などを紹介するので、この機会に見識を深めておきましょう。
360度評価の概要と目的
360度評価とは、社内の複数メンバーが1人の従業員の評価を行う制度です。通常の評価は、直属の上司1人が実施しますが、360度評価では直属の上司だけではなく他部署の上司、同僚、部下など、上下と横、あらゆるメンバーによって評価を実施する点が大きな特徴といえるでしょう。なお360度評価では、他者だけでなく自己評価も行う点が特徴といえます。
直属の上司だけが評価を行うと、主観的になるリスクがあり公正な評価ができない可能性があります。また、上司が見落としている被評価者の強みなどもあるでしょう。そのため、360度評価によって、複数のメンバーが評価することで公正な評価を行えば、被評価者の腹落ち感を深めることが可能です。
360度評価が注目される背景
360度評価を導入する企業が多い理由は、大きく3つあります。
・成果主義の移行により評価方法の見直しが必要になった
・評価者の負担を軽減する必要がある
・テレワークの普及により部下の評価が困難になった
これまでの年功序列型から成果主義への移行が進み、従前の上司だけの上からによる評価だけでは、公正な判断ができない状況になりました。またそれに伴い、部下を評価する上司の負担が増えていることも課題となっています。さらに近年は、テレワークが普及したことで、上司が部下の仕事ぶりを把握しづらくなっており、同僚の目から見た評価を重要視する必要性が高まっている状況です。
少子高齢化で労働人口が減少する我が国において、社内の人材を育成し長期的な戦力にすることが重要な課題といえます。そのためには部下を適正に評価する仕組みが必要なので、360度評価を導入する企業が増えている状況です。
360度評価を実施する7つのメリット
360度評価を実施するメリットは非常にたくさんあります。その中で代表的なメリットを7つ紹介します。
1. 客観性のある評価ができる
360度評価は直属の上司以外の複数メンバーが評価を実施するため、客観性のある評価ができる点がメリットです。
直属の上司だけの場合、属人的に評価になるケースも散見されますが、複数スタッフが評価を行うことで、多面的な評価を実現できます。また、同じ部署の同僚などが評価すると、相手に忖度した評価になる可能性も否定できません。しかし、他部署のスタッフが評価に加わることで、フラットな評価の実施が可能です。
2. 評価への納得感が得られる
被評価者の納得感が高い評価を実施できる点も、360度評価のメリットです。
上司だけの評価では腹落ち感が得られない場合もあると思いますが、複数スタッフによる評価であれば、被評価者本人も納得せざるを得ないでしょう。また、周囲のスタッフから自分がどのように見られているか把握できるため、被評価者に事実を受け入れてもらいやすい点もメリットだといえます。
3. 被評価者の改善点を可視化できる
360度評価は被評価者の課題を明確化し、改善点を可視化しやすい点もメリットだといえるでしょう。
360度評価では自己評価も実施するため、他者の評価と比較しギャップに気づきやすい点が特徴です。自分自身では気づけなかった弱みを、これまでの業務を振り返って棚卸ができますので、改善点が見えやすくなり今後取り組むべき課題も明確になるでしょう。
4. 被評価者が自分の特性に気づける
360度評価では被評価者自身がなかなか気づけない自分の特性に気づける点も特徴です。
360度評価で可視化できるのは、被評価者の弱みだけではありません。自分の新たな強みに気づけることで、今後のキャリアプランや新たなマインドセットの構築などに活用できるでしょう。また、自分自身のやるべきことが明確化されることで、成長速度の促進も期待できます。
5. 上司の目が届かない部分を補完できる
上司がキャッチアップできない部分をサポートし、評価制度の向上や今後のマネジメントや部下の育成に活用できる点も360度評価を実施するメリットです。
360度評価を実施することによって、上司が知らない部下の強み・弱みに気づけるようになります。部下の強みを活かし、弱みを伸ばすためには、上司自身がそれらを把握して課題や助言を与えなくてはいけません。
360度評価の評価結果は、部下の育成プログラムにおける重要な参考資料なので、積極的に活用しましょう。
6. 部下だけでなく上司の育成もできる
評価の対象に部下だけでなく、上司も含まれる点は、360度評価の大きな特徴です。そのため上司は、普段部下や周囲のスタッフなどからどのように思われているかが、客観的に把握できるようになります。
人によってはショックな結果が待ち受けているかもしれませんが、良い部分も悪い部分も鑑みて、上司自身が成長するチャンスと捉えるべきでしょう。部下の不満を解消することも、上司のマネジメントの一環なので、評価結果を真摯に受け止めることが重要です。
7. 従業員の人間関係を把握しやすい
360度評価の結果を確認することで、社内スタッフ間の人間関係を把握しやすくなるでしょう。
上司と部下、また社内スタッフ同士のパワーバランスが可視化されることによって、パワハラやセクハラなどがあった場合でも、早急に対策を講じられます。社内におけるコンプライアンス強化が叫ばれる昨今、トラブルに発展する前に早期解決することは非常に重要です。
また、優秀な人材がハラスメントによって離職することを抑制するためにも、360度評価の結果を有効活用して防止に努めるべきでしょう。
360度評価を実施する5つのデメリット
360度評価にはたくさんのメリットがある反面、デメリットもあります。メリットとデメリットの両方を把握したうえで、360度評価を有効活用する方法を見定めることが大切です。
1. 主観的な評価になる可能性がある
360度評価では、普段部下を評価しないスタッフも携わるため、主観的な評価になる可能性がある点がデメリットです。
部下の評価を実施する上司は、比較的フラットな視点をもって評価を実施できますが、一般社員の場合、嫌いな相手に対して感情的な評価を下す可能性がある点は否定できません。また、これまで他人を評価したことがない方にとっては、どのように判断すればよいのかわからないというケースもあるでしょう。
したがって、360度評価の実施前には、評価者に対して評価基準や方法についてオーサライズしておくことが必須です。
2. 甚大な工数が発生する
360度評価はその性質上、多くのスタッフが評価に携わるため、甚大な工数が発生する点はデメリットだといえるでしょう。
評価に携わったスタッフ分の人件費が発生することと、準備や評価結果を出すまでにも多くの時間が必要です。360度評価を実施することで多くのメリットが得られる反面、それなりの工数が発生するトレードオフの関係といえるため、実施前に考慮しなくてはいけません。
3. 適正な評価ができなくなる可能性がある
360度評価は、適正な評価ができなくなるリスクも孕んでいます。
近年、パワハラ防止法が施行された影響もあり、上司が部下に忖度するケースが散見される状況です。その結果、上司が部下に良く見られないがために、評価を甘くする可能性があります。その結果、適切なマネジメントやコーチングができなくなり、結果として部下が育たず、生産性も下がってしまうでしょう。
一方、一般社員同士で評価をつけあう際、お互いに高評価をつけるように調整するなど、不正につながるリスクも否定できません。
4. 評価に一貫性がなくなる
一貫性のある評価がしづらい点も、360度評価のデメリットです。
360度評価は複数のスタッフによる、複数の判断基準によって評価されるため、一貫性のある評価を行なうことは困難だといえます。また、評価スキルのレベルにも個人差があるので、スタッフの内訳によっても結果に大きな違いが生じるでしょう。
したがって、360度評価を実施する際は、評価をする人材の経験やスキルレベルなども確認して、精度を均一化するための調整も必要です。
5. 周囲への不信感が生まれやすい
他人の評価が可視化される360度評価では、被評価者の中に周囲への不信感が生まれやすいというリスクがあります。
特に、評価結果が厳し過ぎたり、内容が不服だったりした場合は要注意です。スタッフ間の人間関係が悪くなったり、厳しい評価をした相手を探したりするなど、トラブルに発展する可能性もあるので、360度評価の結果を被評価者へフォードバックするときは慎重な対応を心がけましょう。
360度評価を導入するときの注意点は5つ
360度評価のメリット・デメリットを踏まえ、有効活用するための注意点を5つ紹介します。実際に360度評価を実施する前に、確認しておきましょう。
1. 全社員を対象に実施すること
360度評価の実施対象者は、全社員を対象にしましょう。
一部の社員のみを360度評価の対象にすると、不公平感が生まれるからです。そのため、特定のスタッフのみが評価を行うことや、特定のスタッフのみが被評価者になる運用は避ける必要があります。
したがって、客観性と公平性を担保するためにも、すべての社員を対象に360度評価を行なうべきでしょう。
2. 実施目的を事前に説明しておくこと
360度評価を社内で実施する場合は、事前に実施目的を明確化しスタッフへ周知しておきましょう。
実施目的や評価の反映先を、事前に評価者、被評価者へ説明しておかないと、期待した効果が得られなくなる可能性が高いからです。
3. 執務態度を中心に評価すること
360度評価の結果を、報酬決定に反映させるのはNGです。報酬決定にかかわる従前の評価は、上司が実施します。
360度評価では執務態度を中心に評価し、普段の被評価者がどのような姿勢で業務に取り組んでいるのかという点を可視化するツールとして活用しましょう。そのため、業務の成果や発揮能力にフォーカスしない、処遇や人材育成に影響しない評価項目にすることが360度評価の基本だといえます。
4. 評価合計の平均値を評価得点にすること
360度評価の評価得点は、平均値を使います。360度評価では上司、同僚、部下といったレイヤーによって、評価得点にばらつきが生まれる可能性が高いです。そのため、評価の最高値や最低値をとると、かなりの差が生じる可能性があるでしょう。
したがって、評価全体の平均値を取らないと適正な評価が困難です。
5. 被評価者へのフィードバックを必ず実施すること
360度評価の実施後は、必ず被評価者へ結果をフィードバックしましょう。
被評価者に自信の強みと弱みを把握してもらい、今後の業務やキャリアプランの形成に活かしてもらう必要があるからです。ただし、フィードバックをしたスタッフの名前は匿名にすることや、誰がどのような評価をしたかについては開示しないなど、慎重な対応が求められます。
評価基準作成時の注意点と具体例
360度評価の評価基準をつくるときの注意点と、項目の具体例を紹介するので、参考にしてみてください。
評価基準を作成するときの注意点
360度評価の評価基準を作るときのポイントは大きく以下4つです。
・設問項目は30項目程度に留め、15分程度の回答時間を目途に作成
・回答者が答えやすいように、客観的な事例の質問を心がけること
・評価項目は5段階に抑え「どちらともいえない」「わからない」という項目を含めること
・フリーコメント欄の可否については、企業ごとに検討すること
まず、360度評価の工数があまりにも長い場合、評価者の負荷が高くなるので、30項目を目安に15分程度で回答できるように調整しましょう。また、回答者が状況をイメージしやすいように客観的な設問では事例を紹介することも大切です。
評価の項目は5段階程度に設定しますが、被評価者のすべてを把握しているわけではないので、「どちらともいえない」「わからない」といった項目を入れておかなくてはいけません。そして、フリーコメント欄については、人によってかなり辛辣なコメントを記入する場合があるので、採用するかどうかについては企業の社風などを鑑みて判断しましょう。
評価項目の具体事例
評価項目の具体事例を一般社員とリーダー向けの2種類を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
<一般社員向けの具体事例>
・態度(普段、業務に取り組む姿勢や周囲のスタッフへの態度は?)
・印象(話したとき、業務中の印象は?)
・受け入れ、対応力(イレギュラーな事象やトラブル発生時の対応力は?)
・部署での態度(部署内における業務中の態度は適切か?)
・仲間への対応(チームメンバーへのフォローアップは行えているか?)
・業務遂行(業務を滞りなく遂行できるか?)
・チームワーク(周囲のメンバーと協力して業務に臨めているか?)
・挨拶(挨拶はきちんとできているか?)
<リーダー向けの具体事例>
一般社員のものに加えて、以下の項目を追加
・課題思考力(課題や問題を分析し、解決方法を見出せるか?)
・業務遂行力(チームやグループのミッションを滞りなく推進できるか?)
・目標達成志向(絶対に目標を達成するという意思はみられるか?)
・判断力(適切かつ迅速な判断を行えているか?)
・リーダーシップ(チーム内でリーダーシップをいかんなく発揮できているか?)
・コミュニケーション(上司、部下、同僚と円滑なコミュニケーションが取れているか?)
・人材育成(部下の育成能力は十分あるか?部下は育っているか?)
・組織の動機付け(組織の目標を理解し、それを達成するために行動できているか?)
・経営理念の理解(自社の経営理念を理解し、日々の行動に移せているか?)
360度評価の結果を人材育成に活用し生産性を上げよう
360度評価を実施することで、貴社の人材の強みと弱みが可視化され、今後取り組むべき課題や、キャリアプランへの有効活用が期待できます。工数が発生するなど、デメリットもありますが、360度評価を有効活用して人材育成につながれば、生産性向上の実現も可能でしょう。
今回紹介した内容を参考に、ぜひ360度評価を実施してみてください。なお、HUB on(ハブ オン)は、貴社の求める人材の採用からキャリアデザインまでを一貫して支援します。
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