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DXが遅れている業界、進んでいる業界はどこ?業界ごとのDXを比較

日本国内でも重要視されているDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、推進が遅れている企業と進んでいる企業の差が顕著になっていると指摘されています。
企業ごとの差だけでなく、業界ごとにも差があります。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
デジタルテクノロジーを使用して、ビジネスプロセス・文化・顧客体験を新たに創造して、変わり続けるビジネスや市場の要求を満たすプロセスである。デジタル変革とも。

DXが遅れている業界には、
アパレル業界・飲食業界・教育業界・建設業界などがあげられます。
先に述べましたように、業界全体としてDXが進んでいない傾向にあるというだけであり、アパレル業界でも特定の企業にクローズアップすればDXが進んでいるということは多々あります。

アパレル業界では、ZOZOやファーストリテイリング(ユニクロを経営)などのDX推進は目覚ましく、日本企業を牽引する動きを見せていることがあげられます。

一方で、DXが全体として進んでいると言われている業界には、
IT業界・タクシー業界・金融業界・物流業界・医療業界があげられます。
コロナショック時に大きなダメージを受けた業界も含まれますが、DX推進によって業績を回復させた企業も多くあります。

数字で分かるDXの推進度

日本国内の業界ごとにDXを推進できているかどうかの調査をした結果を見てみると、金融・保険業界で「推進できていると思っている」と答えた企業の割合が高いことが分かります。
一方で、製造業・卸売業・小売業ではDXが進んでいないと感じている企業が多いようです。

             企業IT動向調査報告書2022より引用(「得られた成果はなかった」以外は複数回答可)

上記の調査結果は日本国内企業だけを対象としていますが、2019年には富士通が世界9か国の900人に同様に、DXの取り組みや成果の状況についてアンケートを行っています。(数値はすべて%)

業種 実践して成果をあげた 実践中 試行中 検討中 未検討
金融 47 34 8 2 9
運輸 45 33 11 3 8
公共 35 40 7 1 17
製造 32 40 13 3 11
医療 31 42 10 1 16
卸売・小売 29 44 8 3 16

 

世界的にも金融業におけるDXは進んでいると言えるでしょう。
さらに、日本と比較して、世界ではどの業種もDXで成果を感じている人たちが多いことが気になります。
富士通のアンケートの方が古いものであるにも関わらずに、その時点で日本よりも世界の方がDXは進んでいることを考えると、今後ますます国内産業の競争力が懸念されそうです。

DXが遅れている業界

アパレル業界・農林水産業界・教育業界・建設業界・など、これらはDXが進んでいない業界と言われることが多いです。
しかし、DXに取り組むことで大きな成果を出している企業もあります。

どのような点でDXが進めにくく、DX推進が上手くいっている企業はどのような取り組みをしているのか、簡単に紹介していきます。

アパレル業界

アパレル業界でDXを推進することが難しい理由の一つに商品を実際に手に取ることができないことがあります。

衣服・ズボンなどは、自分で実際に試着してみないと、その商品が自分に合っているのかどうか、分かりません。

インターネットで注文をして、自宅に届いてから着て、
「着心地が悪かった」
「サイズがあっていない」
「色がイマイチ」
などの問題が発生することが多いと思われているのです。

消費者としても購入する前に店舗に行って試着したいという方も多いでしょう。
一方で、毎日忙しく、お店に行かずに自分にピッタリの衣服を簡単に見つけたいという欲求をもっている顧客層もあります。

このようなニーズに応えるためには、DX推進は無視できません。

アパレル業界で有名なZOZOTOWNは、MSP(マルチサービスプラットフォーム)というサービスを展開しています。
このサービス展開によって、利用者は自分の体重・身長を入力するだけで自分に最適な商品の提案をしてもらえるようになりました。

「縦、横の調整」・「横をスリム」・「もう少しゆったり」などの微調整までを可能にしたこのサービスはまさしく忙しい現代人のニーズに合ったものです。

また、顧客視点だけでなく、製造プロセスにおいても、いくつもの複雑な工程の一つひとつに対してエクセルで管理していたデータをkintoneのようなクラウドサービスを利用することによって情報の一元管理をしています。

管理の場所や方法は多くするよりも、スマートに一元管理した方が業務の効率は高くなります。
この他にも、業界全体としてはまだまだDXに「伸びしろ」はありますが、すでにDXによって大きな成果を出している企業も少なくありません。

農林水産業

農林水産業界はその性格からも、デジタルツールの活用が難しい部分があります。

農業ではドローンの利用による人件費の削減やAIを活用した肥料・給水の効率化など、部分的に進んでいるところもあります。

農林水産省も、農業DXガイドラインをまとめており、データを活用した農業の推進を推奨しています。

農業に関わるDXについては、以下の記事も参考にしてください。
「農業にもDX?農業DXのメリットや現状と課題を解説」

教育業界

教育業界は最も変化しない業界と言われてきた業界の一つです。
学校教育を例にあげれば、今も昔も教育のスタイルそのものが大きく変わったということはありません。
学習する内容に違いはあっても、教育の仕方には大きな変化がなかったのです。

教育業界でDX推進が進んでいない理由は、ICTを活用できる指導者が少ないこと、つまり、デジタル人材が少ないことが理由です。

多くの便利なITツールが多くあっても、それを使いこなす人材がいなければ導入していくことは難しいでしょう。
指導者のITリテラシーを高めていくことが業界全体のDX推進のために解決すべき課題となっています。

一方で、民間私企業の中には、オンラインを活用した家庭教師の全国展開に成功している企業もあります。
コロナショック時にはオンラインによる授業配信など、私企業の積極的なデジタルツールの活用が見られました。

後を追いかけるように、公教育現場でも映像授業の配信スタイルもできあがり、フットワークの軽重がDXの推進度に関わっていることが分かります。

建設業界

建設業業界も、デジタル化を進めることが難しい業界の一つです。
どうしても、機械ではなく、人間が行わなくてはいけないような肉体労働が中心になっていることが理由です。

建設計画、人員の配置や費用計算など、デジタル化ができそうな部分はあるにしても、限界があります。

建設には職人の方の肌感覚が重視されるところもあり、すべてを機械で代用することは難しいと言えるでしょう。
ここ最近ではAIなどが注目を集めており、既存の職業がなくなり、新しい仕事も増えるということが騒がれていますが、建設業界での労働力の需要は高そうです。

しかしながら、人的資本に依存するだけでなく、課題を明確にしながら適切なデジタルツールを導入できるか検討することが必要とも言われています。

DXが進んでいる業界

IT業界・タクシー業界・金融業界・物流業界・医療業界はDXを進めている業界です。
私たち消費者からも、「今までと利用の仕方が変わった」と感じさせるような変化に気が付いているのではないでしょうか。

予約からサービスの利用、支払いまですべてがオンラインで完結するものも出てきています。
急速に進むデジタル化によってデジタル格差を引き起こしているほどです。

IT業界

IT業界こそ、DXを牽引している業界の一つです。
DXに必要となる様々なクラウドサービスやアプリの開発などを行っています。

IT業界は自分たちの業界だけを考えてビジネスをしていません。
「他の業界で今後何が必要になるのか」
「どんなツールがあれば、ビジネスが加速していくのか」
を常に考えています。

ビジネスモデルの変革を目指した開発を進めているIT業界こそ、日本企業のDXの先駆けとなっています。

タクシー業界

タクシー業界では、ドライバーの高齢化による人材不足が懸念されています。
コロナショックで利用者が減ったことにより、業界が大きなダメージを受けたことも記憶に新しいです。

そんなタクシー業界ですが、ここ最近の利便性の向上にも注目が集まっています。
通常、タクシーを利用する場合
・電話で自分がいる住所を伝えて送迎してもらう
・タクシー乗り場まで行き、待っている
・送迎中以外のタクシー、いわゆる「流し」タクシーを拾う

この3パターンになります。
しかし、配車アプリの誕生によって、利便性が格段に上がりました。

配車アプリはスマホのGPS機能を活用するため、住所がわからない場所にいてもタクシー会社に正確な情報を伝えることができます。
利用者もタクシーがどの辺りを走っているのかが分かるため、到着時刻の予想をしやすいというメリットがあります。

アプリ内決済をするため、タクシードライバーが現金を扱う機会もなくなります。

日本国内では、まだ利用者は1割にも満たないのが現状であり、「自分が呼んで、決済も完了したタクシーを他の人に使われてしまった」というような事件も起こるなど、セキュリティ面で改善すべき課題は残っています。

また、配車アプリを導入していないタクシー会社も多いことも、利用率が高まらない原因です。

これらの問題が解決され、利用者のデジタルツールのリテラシーと一般利用者への認知度が高まれば、今後急速に普及していくことが予想されますし、近い将来は無人タクシーサービスなども提供されるかもしれません。

金融業界

金融業界は「DXを実践して成果を出した」と回答する企業が他の業界よりも多いのが特徴です。

金融業界は「2025年の崖」問題の影響を最も大きく受ける業界であると懸念されており、
DXへの意識も他の業界と比べても高いです。

※2025年の崖とは
「2025年の崖」とは、日本企業がDXの取り組みを十分に行わなかった場合、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生し、国際競争力を失うという課題を表す言葉です。

ネットバンクの普及やATMの数を減らしていることも、DXの一環と言えるでしょう。

既存のシステムを管理・維持していくためには、システムに精通した人材を常に確保した状態にしておかなければならないので、会社にとって大きなコストになります。
顧客ニーズとしても、わざわざATMに行く時間はないと感じていることが多く、既存システムの刷新には、顧客と業界の双方にメリットしかありません。

また、金融業界では、グループ会社をつくっていることが多く、互いに連携して顧客に関するビッグデータをグループ間で共有することができるため、データの解析を行いニーズの把握がしやすいこともDXを後押ししている要素の一つになっています。

物流業界

物流業界を騒がせている問題に自動車運転業務の労働時間に上限問題があります。
2024年4月1日より、自動車運転業務については、年間で最大960時間までと法律で定められています。

オンラインネットショッピングの普及によって、少量の注文に対して配送先が多くあるような小口の取引先が増えたことも、労働時間を圧迫した背景です。

・配送して自宅まで運んだが、注文先が不在であり再配達が必要になった
・配送のルートが混雑しており、思った以上に時間がかかった

など、これらはドライバーの労働時間も長くしてしまい、ストレスにつながることから、心身の健康状態に影響を与えかねません。

こうした問題を解決するべく、物流業界では、
・AIを活用した最短ルートの自動最適化
・在庫管理の自動ツールの導入で在庫数を数えない
・物流のオート化
などに成功しており、業務の効率化につながっています。

医療業界

医療業界は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、人手の観点で最もひっ迫した業界です。
診療所内での感染リスクや、働き方の側面からもデジタルツールを活用した効率化と安全・安心はどのようにして確保できるかを考え、積極的なDXの推進をしてきたと言えます。

オンラインでの予約機能の充実、オンライン診療による感染リスク管理など、これら便利で効率的な手法はコロナ感染が比較的落ち着いてきた今でも実施されています。

地方と都会の診療機関の数の差、安心した医療サービスを受けられる人・受けられない人
の違いが住んでいる地域によるものであるとの指摘もあり、ますますオンライン診療の需要が高まっています。

以上のような経緯もあり、医療業界でのDXは進んでいると言われています。

「DXが向かない業界・企業」もある

建設業界の項目でも少し紹介しましたが、どの業種であってもデジタルツール・デジタル技術を導入すれば効率化ができるというわけではありません。

機械に任せられない、機械に任せるよりも人間がやるべき仕事というのはたくさんあります。
同じ業界・業種であっても、サービスの提供の仕方や状況は企業ごとに違います。

「自社の場合はどうなのか?」を冷静に考えて現状をしっかり分析し、目的にあった手段を導入して実現に向けて取り組むことが重要です。

まとめ:DX推進は業界・社内の分析から

この記事では、DXが遅れている業界として、
・アパレル業
・農林水産業
・教育業
・建築業
の4業種を取りあげ、DXが進んでいる業種として
・タクシー業
・医療
・金融
・物流
の4業種を取りあげました。

しかし、実際にはその業界全体の傾向を知りながら、「自社の場合はどうするべきなのか」を考えることの方が大切です。
業種としてはDXが進んでいないように思われていても、個社で見るとDX推進に成功している会社もたくさんあります。

業界としてのDXの進捗の確認はアンケートの対象や個人による回答が多くを占めるので、その実態はその会社の社員や、社内の数字による分析でしか正確な答えは導き出せません。

周囲がデジタル化を進めているから真似してやってみたものの、自社とのミスマッチによって失敗するというケースは少なくありません。

経営戦略の観点から、「自社の場合には」を常に考えながら市場競争に参加する意識が不可欠です。

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