成功するブランド戦略とは?ブランディングとの違いや事例を紹介
「ブランド戦略って何?」
「ブランド戦略の立案方法とは」
「ブランド戦略の成功事例を知りたい」
市場の先が見えづらいVUCA時代においては、自社商品やサービスを他社と差別化することが必須です。そのため、ブランド戦略に取り組む企業が増えています。
しかし、そもそもブランド戦略がどのようなものか分からない方や、どのように立案したらよいか分からない方も多いでしょう。そこで今回は、ブランド戦略の概要や立案方法、成功・失敗事例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ブランド戦略とは
まずブランド戦略がどのようなものか理解するために、ブランディングとの違いなども交えて解説します。
ブランド戦略の概要
ブランド戦略とは、自社のブランド価値向上を目的に、ビジネスプランに合ったブランディングを実施するための戦略です。ブランド価値とは、顧客の購買意欲や利用率、エンゲージメントを向上させるための要素で、継続的な収益向上の実現に欠かせないものといえます。
ブランディングを効果的に実施するためには、ブランド戦略の立案と全社的な認識統一が必要です。そのため、ブランド戦略を推進する際には、ブランド価値や自社サービス、商品の存在意義、達成するべき目標などを、すべてのスタッフで共有することが重要だといえるでしょう。
ブランディングとの違い
ブランディングとは、ブランド価値を向上させるために実施するさまざまな活動のことです。ブランドのロゴや商品のデザイン、サウンドロゴなどのツールを活用して顧客に自社のブランド価値を訴求し、他社との差別化を図り市場における競争力を高める活動がブランディングといえるでしょう。
一方、ブランド戦略はブランディングをどのように実施するのかというガイドラインであり、ブランディングの上位に位置するものです。つまり、ブランディングの効果を最大化させるための作戦が、ブランド戦略といえます。
ブランド戦略が注目を集める背景
近年、ブランド戦略を実施する企業が増えているのは、市場環境やマス媒体の変化による影響が大きいでしょう。どのような変化が生じているのか解説します。
市場環境の変化
近年、新型コロナウイルスの影響などもあり、景気が低迷している状況です。また、市場が成熟化して同じような商品が溢れかえっており、他社との差別化を図る必要性が高くなっています。
そのため、ブランディングが非常に難しくなっており、成功の確度を上げるためにブランド戦略を立案する企業が増えている状況です。
マス媒体の変化
ネットやSNSが浸透し、TVなどのマスメディア一辺倒ではブランディングが困難になったことも、ブランド戦略が注目されている背景だといえるでしょう。
以前は、TV-CMなどに巨額の費用を投じてブランディングを実施していた企業がたくさんありました。しかし近年は、WEBやSNSを活用することで、広告宣伝費を抑えつつ効果的にブランディングを実施できるようになっている状況です。
そのため、ブランド戦略を立案して費用対効果の高いブランディングを実施しようとする企業が増えています。
ブランド戦略を実施する5つのメリット
ブランド戦略を実施することで、さまざまなメリットが得られます。代表的な5つのメリットについて確認しておきましょう。
1. 知名度の向上と新規顧客の獲得
ブランド戦略に則って、効果的にブランディングを実施することで、自社の商品やサービスに対する知名度向上が期待できます。その結果、多くの人々に自社のブランド価値を訴求できるようになり、新規顧客の獲得につながるでしょう。
2. 強気な価格設定が可能
ブランド戦略の立案によって、ブランディングの効果を最大化できれば、他社との差別化が実現できます。自社ブランドが市場においてオンリーワンの価値を提供できれば、商品やサービスのプライシングを自由に設定しやすくなります。その結果、強気な価格設定が可能になり、収益向上効果が期待できるでしょう。
3. 広告宣伝費の抑制
ブランド戦略によって、自社のブランド価値が高まることで、指名買いが増える可能性が高くなります。つまり、わざわざ自社の商品やサービスを宣伝しなくても、継続的な収益増加を実現することが可能です。また、SNSやWEBを効果的に活用するブランド戦略を立案することによって、広告宣伝費を抑制した費用対効果の高いブランディングが実施できるでしょう。
4. 顧客のロイヤル化による長期的な売上を実現
ブランド戦略によって自社のブランド価値が高まれば、顧客のロイヤル化につなげられます。ロイヤル化した顧客は、自社の商品やサービスを継続的に利用してくれるだけでなく、知人や友人にリコメンドしてくれるため新規顧客の獲得も期待できるでしょう。したがって、顧客にとって価値が高いブランドに成長させるためにも、ブランド戦略の立案が欠かせません。
5. 人材獲得コストの抑制
自社商品やサービスのブランド価値の向上は、企業価値を高めることにもつながります。企業価値が高まることによって、入社希望者が増えるため、優秀な人材が獲得しやすくなるでしょう。自社のブランド価値に共感したスタッフが入社することで、仕事へのモチベーションが向上し生産性向上につながる効果も期待できます。
ブランド戦略は5つのステップで立案
ブランド戦略のおおまかな立案方法をステップごとに紹介します。自社で実施する際の参考にしてみてください。
1. 顧客のターゲティング
まず、自社の商品やサービスをどのような顧客に届けるのかという、ターゲティングを行いましょう。自社のブランド価値に共感し、将来的にともに成長できる関係性を築ける顧客がどのような存在なのか検討します。
そのためには、顧客になりうる存在の年齢や性別、年収、家族構成、趣味嗜好、行動など、可能な限り具体的な条件を考慮したペルソナの設定が必要不可欠です。
2. 市場におけるポジショニング
顧客のターゲティングと並行して、自社ブランドの市場におけるポジショニングの確定も必要です。自社ブランドが市場において、どのような存在でありたいのかを検討します。競合他社のブランド価値と比較検討した際、差別化ポイントが明確になっていることが大切です。
他社による模倣が困難なブランド価値を築ければ、市場における唯一無二のポジションを獲得できるでしょう。
3. ブランド・アイデンティティの確定
顧客ターゲティングと市場におけるポジショニングが確定したら、次は顧客にとって自社の商品やサービスがどのようなブランド価値を与えるべきかという、ブランド・アイデンティティを確定しなくてはいけません。
具体的には、自社ブランドに対して抱いてもらいたいイメージや顧客に与える価値、自社ブランドが達成しようとしているビジョンなどを可視化します。このとき、自社の強みを活かし、他社と明確な差別化ができるブランド・アイデンティティにすることが重要なポイントです。
4. プロモーション方法の検討
ブランド・アイデンティティが確定したら、ブランド価値の具体的な訴求方法を検討します。ブランド価値を体現するロゴやデザイン、キャッチコピー、サウンドロゴなどの作成や、販促媒体、キャンペーンなども含め、総合的な観点から最適なプロモーション方法を策定することが必要です。
ターゲット顧客と親和性のある媒体の有効活用はもちろん、自社媒体やインフルエンサーなどの活用も含め、ブランドのトーン&マナーに即したブランディングを心がけてプロモーション戦略を実施しましょう。
5. ブランド戦略の検証
ブランド戦略に即したブランディング、プロモーション活動を実施したら、施策ごとに適宜PDCAを実施することが重要です。期待した効果が上がっていない施策に関しては、できるだけ早く状況を把握し、改善するようにしましょう。
また、市場における自社のブランド価値の浸透度を測るために、定期的に顧客推奨度調査を実施することも必要です。顧客推奨度調査とは「この商品やサービスを家族や友人にすすめたいですが?」という設問に対して10段階で回答する調査で、0~6が批判者、7~8が中立者、9~10が推奨者となります。推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたものを、顧客ロイヤリティを測る指標として使うことが一般的です。
ブランド戦略における5つの成功事例
ブランド戦略に成功した企業の事例を5つ紹介します。成功のポイントを参考にして、ぜひ貴社のブランド戦略に役立ててください。
成功事例1. 星野リゾート
星野リゾートのブランド戦略は、徹底した他社との差別化を打ち出したことが成功要因です。具体的には「星のや」「界」「リゾナーレ」の3つのブランドを展開し、顧客満足度と収益の向上に成功しました。
「星のや」のコンセプトは「現代を休む日」です。テレビや時計のない上質な和の空間で、非日常的な体験ができます。地域の新たな魅力に気付ける上質な温泉旅館「界」は、「王道なのに、あたらしい」というコンセプトの体現に成功している点が特徴です。そして「リゾナーレ」は「大人のためのファミリーリゾート」というコンセプトの通り、豊富なアクティビティを提供するリゾートホテルという唯一無二のサービスといえるでしょう。
どのブランドにも共通するポイントが、「その場所へ行ったときに誰と何ができるか」という体験までがイメージできるようなブランディングを実施していることです。また、ブランドのコンセプトを経営層ではなく、現場のスタッフが決めることで、自社サービスの理解度を深めつつ質の高いサービス提供を実現している点も同社のブランド戦略の大きな特徴といえます。
成功事例2. ワークマン
作業服ブランドの大手であるワークマンも、独自のブランド戦略によって大きな成功をあげた企業です。作業服市場における収益拡大に苦慮していた同社は、新規事業や新ブランドの立ち上げが急務な課題でした。
そこで、同社はアウトドア、スポーツウェアの市場に「ワークマンプラス」というブランドを立ちあげます。自社の強みであった高い機能性をアピールしたことで「安価でかつ高機能」という新たなブランド価値の実現に成功し、見事ブルーオーシャンへの事業参入を果たしたのです。
なお、ワークマンプラスで販売されている商品は、既存のワークマンと同じものであり、ブランドの見せ方を変えただけで、収益を向上させた画期的な事例だといえるでしょう。その結果、2019年の決算では、前年比の20%以上の業績を上げることに成功したそうです。
成功事例3. アキレス株式会社
シューズメーカの老舗であるアキレス株式会社は、小学生向けのブランド「瞬足」で大きな成功を収めました。
2000年頃、同社は少子化の影響で大きな経営の危機を迎えており、新ブランドの立ち上げが急務な課題だったそうです。また、競合他社が小学生向けのスポーツシューズ市場に参入をはじめたことも、同社の収益に大きな影響を与えました。
通常、小学生向けのスポーツシューズは、男女はもちろん、幼児から高学年まで幅広い層をターゲットに商品展開することが通例だったそうです。しかし、同社はあえて小学校低学年のみにターゲットを絞り、「小学生が速く走れる靴」を基本コンセプトに「駿足」の開発に取り組みはじめました。そして「速い子はより速く、苦手な子には夢を」というスローガンの下、2アイテムに限定したブランディング戦略を展開したのです。
その結果、初年度から高い売上を実現し、現在では小学校低学年の半数近い生徒が駿足を利用するほどに成功しています。同社がターゲットにした小学校低学年はもっとも生徒のボリュームが多いことから、ここを押さえることで、高学年および幼児の生徒も押さえられると確信していたそうです。
成功事例4. スターバックス
スターバックスは「サードプレイス」というブランド価値の下、巧みなブランド戦略で成功を収めています。
同社は店舗での体験価値を最大限高めるブランド戦略を実施しており、顧客に対しておしゃれな店内での非日常的な体験の提供に注力。スターバックスの店内でしか味わえない極上体験を提供することで、市場における競争力を最大化しています。一杯300円以上する同社のコーヒーは競合他社にくらべ高額な料金設定ですが、連日お店に長蛇の列ができているのを見たことがある方も多いでしょう。
また、同社はSNSを有効活用し、定期的な新商品を訴求することによって、顧客に店舗へ足を運ばせることに成功しています。新商品を体感した顧客が、SNSでさらに情報を拡散してくれるため、大きな広告宣伝費をかけなくても高い宣伝効果を実現している点は、同社のブランド戦略の大きな特徴といえるでしょう。
成功事例5. Apple
MacやiPhoneなど、多くの人々にとってなくてはならないプロダクトを生み出し続けるAppleも、数々のブランド戦略を展開しています。近年もApple WatchやAirPodsなど、ユーザーの感性に訴える魅力的な性能とデザインの商品を次々に販売し、Appleファンを増やしている状況です。
同社のブランド戦略で特に有名なものが、Apple Storeを活用したブランディングでしょう。Apple Storeでは同社の新プロダクトが発表される度に、多くのファンが集まり、Appleユーザーはもちろん、そうでない顧客に対しても高い興味をひくことに成功しています。また、Apple StoreのGenius Barでは、確かな知識とスキルを持ったスタッフによる質の高いサービスが受けられ、リピート率の向上に寄与しています。
一度、Apple製品を購入すると、なかなか他の商品へ乗り換えない方が多いのは、こうした巧みなブランディング戦略による効果も大きいでしょう。
ブランド戦略における3つの失敗事例
ここまでブランド戦略の成功事例を紹介してきましたが、すべての施策が成功するわけではありません。また、誰もが知っている大手企業が失敗することもあります。ブランド戦略における失敗事例を3つ紹介するので、同じ轍を踏まないために確認しておきましょう。
失敗事例1. GAP
GAPは2010年にロゴを変更し、わずか6日で取り下げたことがあります。取り下げた理由は、これまで慣れ親しんだロゴとデザインが大きく変わったことに対して、顧客から多くのクレームが寄せられたためでした。
ロゴはブランディングにおいて非常に重要な役割を果たします。そのため、従来のイメージと大きく異なるデザインや方向性を打ち出す場合には、反対意見が寄せられることも想定し、最悪の場合、取り下げる可能性があることも念頭におくべきでしょう。
失敗事例2. ドクターペッパー
世界的に有名な清涼飲料水ドクターペッパーは、2011年に発売した「Dr Pepper TEN」のブランド戦略で失敗した苦い経験があります。同社はカロリーが10Kcalしかないという特徴を打ち出し、男性をメインターゲットにしたブランド戦略を展開しました。
例えば、テレビCMにおいては、女性向けの商品ではないことを明確に打ち出し、Facebookのキャンペーンページには女性アカウントで入れないなど、男性向けの商品である点を徹底的に訴求したそうです。しかしその結果、女性顧客からの反感を買い、同商品のブランド戦略は失敗に終わりました。
どんなに素晴らしい商品でも、ブランド戦略の方向性誤ると失敗する可能性があることを端的に示した事例といえるでしょう。
失敗事例2. ファーストリテイリング
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、「SKIP」という野菜の通販事業で失敗した経験があります。同社におけるアパレル業界のノウハウが活かせないまったくの新業態だったことで、2002年のサービスリリース後、わずか2年で撤退を余儀なくされました。
同社のブランド戦略の失敗要因は、やはり自社の強みを活かせなかったことに尽きるでしょう。その後、GUなどの新規ブランドで大きな成功を収めたことからも、市場における優位性を担保しつつ、効果的に訴求できるブランド戦略でなければ、大きな効果は見込めないことが明白となりました。
まとめ: VUCA時代を生き残るためにはブランド戦略の立案が必須
自社のブランド価値を最大限に高めるためには、ブランド戦略の立案が必須です。特に、VUCA時代と呼ばれる先が読みづらい昨今においては、他社と差別化し競争力を上げるために、一刻も早く取り組むべき課題といえるでしょう。
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