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ビジネスも生態系を気にする時代?DXとビジネスエコシステムの関係

ビジネスエコシステムとDX

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞かない日がないほど、DXが注目を集めるようになりました。
DXを目指す理由としては、レガシーシステムから脱却し、企業が変わりゆく市場変化に対応できるようにするためですが、それは自然界の「生態系」を連想させる部分があります。

ビジネスにも自然界の生態系に似た「ビジネスエコシステム」、デジタル分野の果たす役割が大きくなったことによる「デジタルエコシステム」という言葉があります。

どちらも企業が市場変化に適応し、生き残るうえで大切な考え方です。
この記事では、より広い意味で使われる「ビジネスエコシステム」をクローズアップし、ビジネスエコシステムとDXとの関係性について紹介しています。

ビジネスエコシステムとは?

エコシステム(ecosystem)とは「生態系」を意味する英語です。
自然界では様々な動植物が互いに関係しあって生命を維持し合っており、共存共栄を目的として個々に生命活動を続けています。
もともとは自然界を想定して使われている言葉ですが、ビジネスの世界でも生態系を考えたモデルが重要視されるようになりました。

ビジネスエコシステム(business ecosystem)を日本語にすると「ビジネスの生態系」。
ビジネスでも、業種・業界・企業がお互いに関連し合って企業活動を維持していこうとする考え方がビジネスエコシステムです。

総務省も「持続可能な社会」の実現に向けてはビジネスエコシステムに注目することは大切であるとの見解を示し、次のように考えています。

ビジネスエコシステムとは、まさにビジネスの「生態系」であり、企業や顧客をはじめとする多数の要素が集結し、分業と協業による共存共栄の関係を指す。
そして、ある要素が直接他の要素の影響を受けるだけではなく、他の要素の間の相互作用からも影響を受ける

(出典:総務省MIC第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長より引用)

DXとは?

「DX」は、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。これは、組織やビジネスがデジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを改革し、業務効率を向上させるに終わらず、新しい価値を提供する競争力を高める取り組みを指します。

また、情報技術の進化によって生まれた新しいビジネス戦略や組織のあり方を指す言葉としても広く使われています。

DXについて、その概要や進め方の手順、必要な理由などをもっと詳しく知りたい場合には、以下の記事も参考にしてください。
「DXとは何?デジタル化の先にあるDXを詳しく解説」

DX推進の必要性が訴えられてやや久しいですが、日本の企業ではDXがなかなか広まっていないという現状もあります。
DXが進まない場合には以下のデメリットが危惧されています。

●競争力の低下
DXを推進しない企業や組織は、競争相手に比べて効率性や革新性が低下し、市場での競争力が低くなる可能性があります。
これにより市場シェアの喪失や収益の減少が生じます。

●生産性の低下
DXテクノロジーを導入しないことは、業務プロセスの最適化や自動化の機会を逃すことになり、生産性の向上が妨げられます。

●イノベーションの停滞
DXは新たなビジネスモデルや製品の創出を支援しますが、停滞すれば、
競合他社によるイノベーションに対応できなくなり、成長の機会を失います。

●人材流出
DXが進んでいない企業は、才能ある従業員が他のDXに積極的な組織に流れていく可能性が高く、それに伴う機会損失が考えられます。

●継続する非効率
DXによるデータ分析やプロセスの自動化が行われない場合、無駄なコストや時間の浪費が続く可能性があり、これが経済的な損失として現れます。
2025年以降では年間にして12~15兆円という経済損失額が概算されています。

ビジネスエコシステムとDXの関係性

ビジネスエコシステムとDXには関係があります。
現代のビジネスエコシステムを構築するには、情報技術(IT)の活用が不可欠です。
同様に、DX推進をするにあたってもIT技術やAIの活用は避けて通れるものではありません。

IT技術を駆使してビジネスエコシステムを構築すること自体が、複数の企業が連携して行うDXへの前進であると捉えられるのです。

DXが目指すものは単なる業務の自動化や書類のペーパーレス化など、効率性を追求したものではなく、ユーザー顧客に新しい価値を提供することを目的にしています。

後述しますが、ビジネスエコシステムによって構築されたビジネスモデルによってユ-ザー顧客に多くの新しい価値の提供ができるようになります。
DXの目的と、ビジネスエコシステムが可能にするモデルは企業にとってもユーザー顧客にとっても望ましいものです。

ビジネスエコシステムの考えが重要な理由

ビジネスエコシステムがDXとともに注目されていますが、どうしてビジネスエコシステムという考え方が今後重要になるのでしょうか。
その理由を次の3つの観点から紹介していきます。
●市場変化が激しいから
●自社だけでの変革は難しいから
●市場や顧客から新たな価値提供を求められているから

市場変化が激しいから

自然界の生態系は環境に応じて変化し、個体が生き残れるように調整を図っていきます。
これと同じことがビジネスエコシステムにも当てはまります。
ビジネス環境も技術の進歩・市場や時代のニーズの変化・流行など、色々な要因が重なって変化していきます。

これらの変化に対応するために、従来のサービス・製品のブラッシュアップを続けていく必要があり、必要としているユーザー顧客に届けるための仕組みとして、ビジネスエコシステムが機能します。

自社だけでの変革は難しいから

変化する市場のニーズに自社単体で変革をすることは難しいかもしれません。
生態系のようなつながりを企業間で構築できていれば、自社のノウハウと他社のノウハウの相乗効果によって、新しいものを生み出せる可能性が高くなります。

どちらかが一方的に依存するような関係ではなく、お互いに価値を提供し合えるビジネスエコシステムの関係構築が求められています。

市場や顧客から新たな価値提供を求められているから

市場やユーザー顧客が求める価値は刻一刻と変化していきます。
従来であれば、求められているニーズに対して、グループ企業や系列企業などのクローズドな状況でニーズに応えられる高品質な商品・サービスを提供する傾向にありました。

しかし、すべてのニーズに応えるために新しく事業を展開したり、グループ企業の拡大を図ったりする手法をとり続けることは現実的ではありません。
また、市場も先代的にニーズは感じているが、そのニーズが必ずしも顕在化するとは限りません。

商品・サービスが市場に登場して初めて「欲しい」「便利だ」と感じた経験は誰もがもったことがあるのではないでしょうか。

事業展開をするためには時間がかかりすぎるというデメリットがあり、製品・サービスが完成するころには市場のニーズは去っている可能性も十分に考えられます。
スピードが追いつかないために、従来の方法からシフトする必要性があるということです。

そこで、すでに事業として成り立っている複数の企業で協力して商品・サービスの開発を進めることができれば、お互いの製品として市場に打ち出すことができ、市場の熱が冷めないうちに提供を開始することができるというメリットがあります。

総務省のホームページから紹介した先ほどのビジネスエコシステムの図解でも、

総務省MIC第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長より引用

消費と需要が企業間、消費者間で行われるようなビジネスエコシステムの構築が消費者、企業にとって有益なものになり得ます。
この実現のためには、
●リアルタイムで情報を共有し合うシステム
これが欠かせません。

情報をリアルタイムで共有する仕組みをつくりあげるためにはDXを促進することが必要です。
商品・サービスが一方通行になることなく、IoT・AIなどの新しいICTを活用することによって、多様な流通機能を確保することが重要になります。

ビジネスエコシステムはDXで拡大していく

ビジネスエコシステムはDXとの相乗効果で拡大しており、今後もこの傾向は変わらないと見られます。

一つのサービスや商品を考えても、そこにIT技術が関わっていないものは今ではほとんど見ることができなくなりました。
レストランでの予約にもインターネットを使いますし、遠隔操作できる電気器具にもIT技術が応用されています。

他にも、
金融とITをかけあわせたフィンテック
医療とITをかけあわせたメドテック
など、こういった既存の業界とITをかけあわせることで発展していく「クロステック」の考え方も加速していくでしょう。

これらすべて、業界・企業の枠組みを超えた生態系を意識したモデルであることは間違いなく、このようなビジネスエコシステムの構築にIT分野が仲介となっていることは自明です。

どの企業でもIT分野の活用をベースに事業運営をすることで、そこをポイントとしたビジネスエコシステムの構築の可能性が広がります。
DX推進はビジネスエコシステム構築への第一歩となるでしょう。

ビジネスエコシステムのメリット

ビジネスエコシステムのメリットをここまでの内容も踏まえたうえでまとめていきます。

メリット

顧客創造のコスト削減

アメリカに本社をおく外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが調査した結果によると、健全なビジネスエコシステムをもった企業では、顧客獲得コスト(CAC)が通常の企業が顧客獲得にかけるコストと比較して1割~2割程度削減されているというデータがあると言います。

パートナーシップ企業の商品・サービスの中に自社の製品・サービスが組み込まれていることによって、それそのものが広告媒体となって機能することが理由であると分析されます。
また、顧客情報を企業間でやり取りすることも容易となり、ビジネスエコシステムでは、企業間を競合として意識するのではなく、協力者としてみていることも、情報交換がスムーズになる一因です。

アメリカにあるシティバンクでは、Googleと提携することで、デジタル志向が強い若い世代の顧客層の獲得に成功しているなどの例があります。
IT×金融のフィンテックが成功した一例であり、独自にITシステムを開発するよりも時間も費用も大きく節約することに成功しました。

異業種ビジネスとの相乗効果

異業種とビジネスをともに創造していくことで収益が拡大していきます。
電子決済サービスがその代表例です。

店舗に訪れなければ商品を購入できなかった時代から、インターネットで商品を選ぶことができ、決済までも完結させることができます。
これによって市場範囲を特定する必要がなくなり、運送業とのコネクションを持つことによって商品を届けることも可能となりました。

このように、関わる業界にも、ユーザー顧客にもメリットが大きく、好循環が期待できます。

ファミリー製品・サービスによって顧客の囲い込みができる

●複数のお店で利用できるポイントカード
●決済ができるアプリやクレジットカード
●Googleアカウントでの複数サービスへのログインの自動化

これらはすべてファミリー製品・サービスと呼ぶことができます。
ユーザー顧客のロイヤリティを高めることもでき、囲い込みができるというメリットがあります。

ITを利用しない場合でも、ある企業のサービスを利用している方が自社サービスを利用した場合に割引特典を付与したり、企業間で紹介制度を設けたりすることも、根本的には同じ考えです。

業界や企業のDXが促進される

ここまで見てきたように、業界相互に関わり合うためには情報の交換やITリテラシーの高さなど、ITスキルが必要です。

業界、企業でビジネスエコシステムの構築を進めていこうとすれば、少なからずITリテラシー・スキルの向上が求められることになります。
この流れが浸透すれば、業界・企業でのDXが進むことにつながるでしょう。

新しい商品を生み出せる

互いの情報を共有し合うことで、新しい商品開発を行いやすくなります。
商品開発の根拠もデータに基づいたものであるため、成功確率も高まるというメリットがあります。

企業単独でイノベーションをおこすことが難しくても、他社のデータを活用することで今までにない視点からのイノベーションに期待がもてます。

ビジネスエコシステムの種類

ビジネスエコシステムは、ITが中心となって構築されます。
そのビジネスエコシステムには、
●クラウドエコシステム型
●データエコシステム型
の大きく2つの種類があります。

クラウドエコシステム型

ソフトウェアやプログラムを連携させるための接点をAPIといいます。
近年Open AIがリリースしたChat GPTを利用したことがある方の中にも、APIという言葉を聞いた方も多いのではないでしょうか。
APIという言葉も馴染みのある用語へと変わってきています。

このAPIを使うことによってそれぞれのサービス・情報を連携させることが可能になります。

会計ソフトで決算書を作成している場合、勤怠情報やその他の決済システムの情報も一か所に集めた方が便利です。
それぞれのソフトウェア会社がもっているAPIを活用すれば、これらのシステムは互いの情報の共有ができるようになります。

近年ではAPIによるソフトウェアどうしの連携はIT業界では常識になっているところがあり、APIをもたないサービスの方が少なくなりつつあります。
つまり、ビジネスエコシステムがより構築しやすい環境になったと言い換えることができるでしょう。

データエコシステム型

業界や分野を越えたデータの収集を活用したビジネスエコシステムがデータエコシステムです。

走行距離に応じて保険料の金額が変わる自動車保険を例にとってみましょう。
このサービスを開始するためには、走行距離データなどを集める必要があります。
このようなデータ収集もIoT機器の導入によって可能となりました。

自動車の走行距離、家電製品の利用状況、業務処理用の機械など、これらは絶えずデータを収集しています。
「いつ」
「どこで」
「どのぐらいの時間」
「どのように」
使われているのかなど、これ以上細分化できないレベルでのデータの収集が可能になりました。

ここで集めたデータを、業界を越えたところでも共有し合うことで新しい価値提供の契機をつくることができるようになります。
データの活用によって企業活動が効率的で創造的なものになっていきます。

ビジネスエコシステムの事例

世界を代表する
●Amazon
●Apple
●Microsoft
を例に、ビジネスエコシステムの例を簡単に紹介します。

Amazon

Amazonという巨大プラットフォームにも多くの企業が関わっています。
●種々の商品を提供する個人・企業
●商品を配送する運送業
●ECサイトの管理に携わるIT企業

Amazonのビジネスエコシステムの構築スタイルは企業だけでなく、個人単位でも参加できるところに注目が集まっています。
個人で参加できるという点においては、Amazon以外にも近年では、スキルシェアプラットフォームも注目を集めています。

Apple

Apple社の開発する製品には多くの企業が関わっています。
●部品の製造企業
●スクリーンの製造企業
●カメラの製造企業
●音楽や動画コンテンツの制作会社
●Google
など、これらがもとまって一つの製品を生産する流れになっており、
Apple社の製品の売れ行きは、その製品に関わるすべての企業の利益につながります。

業界では「下請け企業」などと言われることもありますが、これもビジネスエコシステムの一例と言えるでしょう。

Microsoft

パートナー企業との情報交換、共同開発が盛んなMicrosoft。
高品質なプロダクトの開発はMicrosoft社単体ではなく、他のパートナーシップ企業のもつビッグデータの解析の上に成り立っていることを忘れてはいけません。

様々なアプリケーションにMicrosoftと一緒に他の企業の名前が入っていることに気が付かれた方もいるでしょう。
これこそファミリー製品による顧客層の囲い込み効果であり、認知度のさらなる向上に貢献している例です。

まとめ:DXとITでビジネスエコシステムを構築する時代

ビジネスエコシステムはそこに参加する企業・個人にとって大きな利益をもたらすものです。

今後は、
●市場変化が激しい
●自社だけでの変革は難しい
●市場や顧客から新たな価値提供を求められる
時代へとますます変わっていくことでしょう。

ビジネスエコシステムは変化の激しい時代には必要不可欠な考え方になります。
DX推進とともにITを駆使したビジネスエコシステムの考え方も大切にしたいです。

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