DX反対意見はなぜ起こる?社内でのDX反対意見が出た場合の対応を解説
DX推進の方向性を社内で決めても従業員にその大切さが伝わらないことはないでしょうか。
DXに限らず、社内で大きな決断をしたときに、その方針に納得できない様子を見せる従業員や場合によっては方針に従わない従業員。
ここ数年のDXへの方向転換はビジネスに大きな影響を与えるといわれており、DXに取り組まなかった場合と比較して推定すると、経済損失は年間で最大12兆円にもなることが予想されているのです。
DXへ舵を切ることは、既存の業務内容からサービスの提供の仕方までを変革させてしまうことにもなります。
もちろん、この変化は企業にとってもよい変化であることには間違いないはずなのですが、従業員の内面は前向きになり切れていないなどの課題もあるようです。
今回はDXが企業にとっての必須の課題であることのおさらいと、社内でのDXへの反対意見が出た場合の対応の仕方について解説しています。
目次
DX推進は必須の課題
DXはビジネスモデルの変革が求められる今後、ますます重要になるといわれています。
「DX」という言葉の意味とDXが必要な背景について簡単にまとめています。
DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した理論に基づく言葉で、今後の人々の生活はIT技術の進化によって、大きく変化を続けていくという考えから生まれたものです。
DXは単なる場当たり的な業務のデジタル化を指すものではありません。
DXがもたらす変革とは、ビジネスモデルそのものの変革であり、その変革の対象は企業の商品やサービスだけでなく、消費者の購入経路、消費者の購入体験など、あらゆる領域で変化をもたらすのです。
企業は膨大な蓄積された消費者に関わるデータを活用することによって既存の製品をアップデートすることや、新製品の開発のヒントを得ることが可能になります。
市場における競争の優位性に優れることになるのです。
DXが必要な背景
経済産業省もDXへの取り組みを本格的にスタートさせることを推奨しています。
その背景としてはどのようなものがあるのでしょうか。
細かくみるとたくさんあるのですが、よく取りあげられる
・2025年の崖
・人材不足
の2点につて簡単にまとめておきます。
◆2022年の崖
企業にレガシーシステムが残っている場合、そのレガシーシステムのメンテナンスやアップデートにかかる費用が増大するという課題のことです。
今では、クラウドサービスやソフトウェアを用いた情報の一元管理、業務フローの自動化が主流となっていますが、昔ながらの自社サーバーを使って社内のデータを蓄積している企業もまだまだあります。
社内でのメールのやり取りなども同様にこのサーバーを経由しているので、サーバーがダウンすれば社内での連絡が一斉に途絶えることになります。
サーバーがビジネスのインフラになってしまっている場合、そのインフラをベンダー企業のメンテナンスに依存していることにもなりますので、ベンダー企業がメンテナンスを行えなくなった場合には多大な損失が見込まれます。
システムエンジニアの世代交代もあり、古い構造をもったシステムのメンテナンスが行える人材も少なくなってきているという理由からも、費用の高騰も予想されるのです。
◆人材不足
多くの業界、企業で慢性的な人手不足に陥ってくる将来が予想されています。
今後30年以内には日本の人口は1億人程度まで減少するといわれており、全人口に占める約半分が労働人口になる見通しです。
雇用の流動化にも注目が集まる中、企業内で人材を抱えていることが難しくなっています。
この人材不足の問題の解決策に大きく貢献できるのがDXです。
DXの過程でのデジタイゼーションやデジタライゼーションによる業務の効率化・プロセスの自動化は処理業務を担当する従業員の数を圧倒的に削減します。
「2025年の崖」「人材不足」という大きな課題を乗り越えるためには、DXから目をそらさないことが大切です。
DX推進には仕事の棚卸が重要
千里の道も一歩からとはよくいいますが、DX推進にもこの考えが非常に重要です。
「DXをスタートさせよう」という勢いだけでツール選択に走って比較検討に入るというのはあまりおすすめできる手法ではありません。
まずは、自分たちの仕事がどのような流れで行われているのかを全員で確認していく必要があります。
これは、経営側の人たちも含めて一緒に社内の業務を確認していく作業が必要です。
これを一般的には「仕事の棚卸」と呼びますが、
・どこで
・どのように
・どのような人が
・どんな
仕事をしているのかを確認することになります。
全員で仕事の内容を確認できたら、どの部分を簡略化・自動化することが企業の生産性や担当している従業員のためになるのかを考えます。
こうして社内全体でDXへの方向性を暗に確認していくことでDXへの反対意見を事前に出ないように工夫することもできます。
DX反対意見が起こる大きな理由
DX反対意見が出てしまう要因として考えられる要素を5つ取りあげて解説しています。
反対意見は出ないに越したことはありません。
しかし、反対する人たちの考え方を知っておくことで、事前に反対意見を出ないような工夫ができるかもしれません。
理由①:デジタルツールについていけるかどうかが不安
DXを推進していくと、社内業務でデジタルツールを使わない業務が徐々に少なくなります。
従業員の中にはこうした変革を怖がり、「自分がデジタルツールについていけるか不安」と考えるケースが想定されます。
導入するツールを用いた業務内容の変革や使い方を事前にロードマップとして提示したり、使い方をレクチャーしたりすることが重要です。
理由②:過去の成功体験に縛られている
今までのやり方で特に困ったことがない、あるいは今までのやり方で大きな成功を生み出した従業員の中には、「このままの仕事のやり方で何が問題なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
やり方が変われば今までのようなパフォーマンスを発揮することが難しいと感じる人も出てくることでしょう。
今の安定したポジションを保ちたいと考える従業員はこのタイプの理由でDX推進への反対意見を寄せる人もいます。
理由③:情報格差があるから
社内でもっている情報の量は経営層に近い人たちほど多くなっていくのが普通です。
現場の従業員が抱えている情報量と経営者が抱えている情報の量と質が同じはずがありません。
そこで、経営層がDXの必要性を正確に認識し、自社にとって必要なことが分かり、従業員にDX推進を伝えても現場からは「どうしてDXが必要なのか?」の理由が分からないケースが出てくるのです。
これは、情報の格差によってもたらされる考え方の差です。
DXが必要な理由を数値なども交えてしっかりと従業員への説明責任を果たすことが重要です。
業務をデジタル化したとしてもサービスの根幹をなしている部分が「人材」である場合には、従業員が「納得」できる範囲での情報の開示も必要かもしれません。
デジタル化をしても、従業員による生産性やサービスの質が下がってしまっては本末転倒です。
自社の利益を生み出す源泉が「人」である場合には、従業員の声にも耳を傾ける必要があるでしょう。
理由④:単純に新しいことは面倒と感じる
通常、組織で働いてきた(いる)人たちは変革を好みません。
新しいやり方に替わると、自分たちの仕事の量が増えるような気がするからです。
これは人の本能ですので、変革を好むような人たちへと育成していくことは大変難しい課題です。
DXだけでなく、社内の仕事のやり方が従来と変わるとなればそれに対して内面的には反発している従業員がいることを忘れてはいけません。
理由⑤:自分たちの立場が心配
「過去の成功体験に縛られている」タイプに似ているのですが、DXが進むことによって自分たちが行っている仕事がどうなるのかに不安を抱く従業員も出てくると思われます。
「この仕事ではなく、まったく別の仕事に回されるかもしれない」
「今の仕事が自動化されるようになったら、自分はどうなるの?」
など、不安を抱えることになるでしょう。
そうした不安を先回りして、どのような展開になっていくのかロードマップを事前に作成しておくことが有効です。
DX反対意見への対応の流れ
DXへの反対意見の対応方法として、概要を紹介します。
DXだけでなく、社内で何か大きな意思決定をする際には、穏便な施策だけでなく、強硬な施策へシフトしていくことも重要であるとリーダーシップ論ではいわれています。
ここでも、リーダーシップ論に基づいた穏便な施策から強硬な施策への流れについて書いています。
従業員の啓もう活動
最も穏便な施策が従業員への啓もうです。
これは、いわゆるマインド面の成長を促していくようなイメージです。
成長意欲の高い従業員であればいいのですが、時間だけがかかり、成果が得られない従業員もいるのが実情ですので、素早い意思決定をしたいときには向いていません。
DX推進へ巻き込む
トップダウンで下ろされた何かを遂行するよりも自分たちで決めたことに対してなら前向きに取り組める従業員には有効です。
DX推進を前提としつつ、その詳細を決めることに携わってもらうのです。
DX推進プロジェクトの一因であるかのように思わせることによって味方につけてしまうという穏便な方法です。
新しい環境に対する補助
デジタルツールを使いこなせるかどうかが心配という方に有効かもしれません。
環境が変わっていくことにおびえている従業員に対しては補助をすることで安心してもらいましょう。
交渉
大きな影響力をもっている人に直接交渉して合意に向かわせます。
これが必要になるシチュエーションとしては、DX推進を担当している若手社員がいて、それに応じたくない年配社員がいるという場合でしょうか。
自分よりも上の年齢の人が反対意見をもっている場合、スムーズに事を運びにくいことが多々あります。
そのような場合には、影響力の大きな人に直接交渉をすることも有効かもしれません。
トップダウンによる推進
企業の方針としてDX推進をしていく方向になり、何をやるのかまで決まっている場合には、トップダウンで決定事項を伝えてしまうのが効率的です。
DX推進の効果測定には時間がかかることが普通ですが、ある程度スピード感をもって取り組まなくてはいけないものも多くあります。
それゆえ、経営層のDXへの関心の有無はそのままDX推進の成功の可否につながります。
最も強硬な施策にあたるところですが、DXを成功させた企業には、こうしたトップダウン型の変革で成功させた企業も多いのが現実です。
DX反対派の意見を抑える有効かつ具体的手法3選
DX反対意見への対応段階(穏便・強硬)でみてきた内容について具体的な方法を3つ紹介します。
手法①:経営層の人に直接告知してもらう(トップダウンによる推進)
DXの方向性やその具体的な内容まで部署が中心となって行う場合、決定した内容の報告を経営者にはもちろん、周りの従業員にも告知しなくてはいけません。
しかし、その際に反対意見をもつ人たちの反発にあうことも少なくないでしょう。
このようなときには、決まった内容を経営層の人たちから直接告知してもらう方法があります。
手法②:決定権のある人たちの前での報告(トップダウンによる推進)
決定権のある人たちがいる前での報告はその場での承認は、そのまま企業の方針になります。
合意を目指すことが難しい場合には、会議など決定権のある人が目の前にいる状況で報告をすることでそのままDXがスムーズに進むきっかけをつくれるかもしれません。
手法③:コミュニケーションの強化(啓もう活動)
最も穏便な解決方法ですが、この対応で十分なことも多いです。
DX推進の必要性やメリットを説き、今のままではいけない理由を伝えていきます。
こうすることで、お互いがもっている情報に偏りがなくなり、共通の価値観をもちやすくなります。
DX人材育成に必要な意識改革
トップダウン形式でスムーズにDX推進を図るにしても従業員のモチベーションに対する考察は必要です。
ここでは自然な形でDX推進へのモチベーションを高める啓もう方法について紹介します。
DX推進に対する反対意見に対応するのではなく、DX推進に対する反対意見が出ないようにすることも重要です。
数値を用いた危機感の共有
まずはDXが必要である理由を共有しましょう。
ここでは数値を用いた危機感の共有が効果的です。
漠然としたメリットや必要性では納得してくれません。
客観的に市場のデータ、消費者のニーズなどを数値化したものを提示できるように準備しておきましょう。
経営ビジョンの共有
数値をもとに危機感を共有したら、目指すべきビジョンをつくり共有します。
簡潔で分かりやすいビジョンの方が浸透しやすいかもしれません。
ビジョンはto doリストではないので、将来のデザインが思い起こされるようなものであれば抽象的なものでもいいでしょう。
従業員のDXへの参加意識の醸成
DX反対意見への対応も大事ですが、DXへの反対意見をもつ人たちをDX推進への協力者と変えていくことはもっと大事です。
普段の職場での関係性の見直し、良好なコミュニケーションをとっておくところからDXはスタートしているかもしれません。
短期間でDXによる成功体験を積み上げる
DXの効果測定は長期的なスパンで考えておくことが重要です。
試行錯誤を重ねて改良していくことが前提の取り組みであることは間違っていないのですが、短期間で結果を出した方がいいでしょう。
DXに消極的な印象をもっていた従業員も、結果が出て、その一部に自分が貢献していると分かった方がモチベーションの向上にもつながるからです。
DX文化の定着
DXは一度の取り組みで「終わり」となるものではなく、変革を前提にしています。
一度成功体験を積んでしまえば、DXの変革にも慣れてくるはずです。
変化と適応を繰り返すことができるようになったら、それを企業文化として定着させられるようにしましょう。
まとめ:DXでの変革は継続することが重要
DXによる変革は継続していくことが重要です。
反対意見が出ずにスムーズに進めていけることが望ましいですが、表立った反対意見がなくても、従業員の心理状態のケアは必要です。
人材育成の観点からもDXに対する考え方を全員が身に付けておくことをおすすめします。
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