DXの内製化は重要?DX内製化の課題やメリット・デメリットを全部解説
DX推進をしていくと、最後はDXを自社で内製できた方が、コスト的にも運用のパフォーマンス的にも上がるのではないかと考えることがあるかもしれません。
DXに向けて動き始めた最初のうちは、コンサルティングを雇用したり、DX人材を外部から招きベンダー企業と協力しあったりすることでスムーズに進めることが求められます。
ある程度の流れをつかんだ後はDXを内製化する方がいいのでしょうか?
内製化を進めるにあたっては、見落とされがちな点や注意しなくてはならない点がいくつかあります。
「内製化」という言葉のイメージだけで進んでしまうと失敗する可能性が高くなります。
今回は、DXの内製化をするにあたっての課題やメリット・デメリットについて解説していきます。
DXの内製化とは?
DXが内製化できている状態とは、どのような状態を指すのでしょうか。
ここでは、DXが内製化できている状態を以下の3つの状態ができている状態と決めておきます。
・システムの内製化ができている状態
・DX推進体制を自社の裁量で行えている状態
・DX人材の育成が社内でできる状態
アウトソーシングに頼らずにこれら3つを達成するのは少し難しく感じるかもしれませんが、ゴールが分かっていれば手が付けやすいかもしれません。
システムの内製化ができている状態
まずは、自社企業内で使うシステムがすべて内製化できている状態が求められます。
これが3つの状態の中で最も重要な要素です。
自社企業の根幹となっているシステムやサービスがベンダー企業にその多くを依存している場合には、少しずつでも自社のシステムや人材を活用することで他社への依存割合を小さくしていきます。
ベンダー企業に依存していた場合、すぐに対応したい状況に見舞われたときに柔軟性や機敏性が得られにくいというデメリットがあるからです。
ベンダー企業に依存している状態からすぐにすべてを自社企業で内製することは難しいです。
ベンダー企業と話し合うことが可能であれば、システムを内製化していくための手順や方法について教えてもらえるといいでしょう。
DX推進体制を自社の裁量で決められている状態
自社企業内のDX推進の主役は外部のベンダー企業ではありません。
社内で必要なツール以外にも、ビジネスモデルまでもベンダー企業に依存しているというケースは少なくありません。
DXの内製化を進めるにあたっては、DXの中心が自分たちであるという認識を持つべきなのです。
ベンダー企業への依存の仕方の問題でもありますが、システムだけを依存している状態よりも深刻な状態です。
DX推進を目指している企業であれば、例外なくすべての企業でDX推進体制を自分たちの裁量でコントロールできる状態を目指すべきと言えます。
DX人材の育成が社内でできる状態
システムの内製化が進んでも、そのシステムが長く続くとは限りません。
そもそも、DXは「変革し続けること」が前提となっており、一度だけ刷新してDXが完結することはないからです。
外部環境の変化に合わせて、内部環境も適応させる必要があります。
現存するシステムが特定の従業員にしか理解できないものであったり、メンテナンスができないものであったりすれば、社内でさえブラックボックス化する可能性が出てきます。
DX人材を常に育成しておくことによって、誰もがシステムに対して一定の知識と技術がある状態が理想的です。
DXの内製化が注目されている3つの理由
DXの内製化が注目されている理由は何でしょうか。
ここでは、代表的な3つの理由として、
・ウォーターフォール型モデルが限界を迎えたから
・自社システムのブラックボックスをなくすため
・社内のDXレベルを高めるため
を解説しています。
理由①:ウォーターフォール型モデルが限界を迎えたから
従来からウォーターフォール型の商品・サービスの開発にはメリットが大きかったです。
しかし、現代では、このウォーターフォール型の仕組みが限界を迎えていると言われることもあります。
顧客ニーズが多様化し、時代の流れとともに市場が変わっていく現代においてはスピードの面において不利で、商品・サービスができたときにはすでに流行が去っていることも考えられます。
市場の動向に敏感になり、それと連動して開発、リリース、改善を繰り返すアジャイル方式が求められるようになりました。
自社企業内ですべてが行える状態の方がアジャイル方式には向いており、これが、内製化が求められる理由でもあります。
ウォーターフォール型システム開発
開発プロセス全体を複数工程に分割し、時系列に沿って各工程を順番に進めていくシステム開発手法のこと。
理由②:自社システムのブラックボックスをなくすため
自社内だけでもブラックボックス化してしまう可能性はゼロではありませんが、ベンダー企業にシステムを依存している状態であれば、ブラックボックス化してしまうリスクは高まります。
開発した人の転勤や退職によって、担当者がシステム現場から離れてしまえば、そのシステムを扱うことができないにも関わらず、システムだけが動き続けるという奇妙な光景が生まれます。
ブラックボックス化を避けることもDXの内製化が注目されている理由の一つです。
理由③:社内のDXレベルを高めるため
DX内製化を進めるにあたっては、相当な企業体力を使うことになります。
それは、企業のこれからを真剣に考えることであり、どのような変革が自分たちにとっても最も大きなプラスになるかを考えることでもあります。
業界に革新的な出来事が起きてから対応するのではなく、先駆者となるためにはDX関連の知識や技術は必要不可欠です。
社内のDXレベルが向上すれば、市場における競争の優位性が高まることも期待できます。
DX内製化のメリット
DX内製化のメリットについて解説していきます。
DXのノウハウが蓄積される
開発を通して自社企業にノウハウが蓄積されることが大きなメリットです。
ベンダー企業にシステム開発を依頼した場合、ベンダー企業は完成品の納品と使用方法(ベンダー企業目線でのユースケース)のレクチャーをするにとどまります。
開発プロセスやシステム改修の方法までセットで伝授するようなベンダー企業は基本的にはありません。
外部委託に依存してしまうと、自社にはIT関連の知識・技術が蓄積されないというデメリットがありますが、内製化することによって従業員のスキルや技術が年数を重ねるごとに蓄積されることが期待されます。
アジャイル方式で素早く効果測定ができる
内製化の最大のメリットは迅速さが向上することです。
システムの多くを外部に委託している状態では、システム改修一つ依頼する際にも連絡を取り、契約書を作成し、日付を決めるなど、費用以外にもコミュニケーションや、やり取りに発生する時間コストもかかります。
このやり取りをしている間にベストなタイミングを逃してしまうことはリスクであり、
アジャイル方式でシステム開発をする際には向いていないと言えるでしょう。
内製化を行うことでアジャイル方式での開発が可能となり、効果測定から次の改善までの時間も大幅に短縮されることになります。
市場動向が変わりやすく、すぐに新しいものが生まれやすい業界においてはアジャイル開発が有効ですから、内製化の恩恵は大きいはずです。
長期的にはコスト削減になる
「内製化」という言葉を聞くと、真っ先に思い浮かぶのがコストの削減ではないでしょうか。
アウトソーシングに頼る開発関連業務をすべて自社で補うことができるのであれば、そこで発生するコストはかかりません。
長期的に見ればコストの削減につながることもあり、これは大きなメリットとなります。
DX内製化のデメリット
内製化を行うことは、メリットだけが注目されがちですが、実は見落とされやすいデメリットも多くあります。
システム維持費 < 人件費になる可能性
内製化のメリットには「コスト削減」の内容がありましたので、一見すると矛盾しているように思われるかもしれません。
理論的には、内製化すればアウトソーシングにかかる費用を支払う必要がなくなるので、コスト削減につながります。
しかし、内製化によってコストが削減できるのは長期的に見た場合であって、短期的にはコストの削減ところか、コストは増大すると思っておいた方が無難です。
ベンダー企業に依頼しているシステムのリース料や維持費よりも、DX人材の育成にかかる教育関連費の方が高くなる場合は十分に考えられます。
内製化がコスト削減につながるのは、以下の条件を満たす場合です。
・ベンダー企業と同等レベルのDX・IT人材が社内にいる場合 → 技術力の課題
・社内開発においてシステムコードの再利用を多く行う場合 → 生産性の課題
(ベンダー企業は一度つくったコードを蓄積しておき、同じような依頼があったときに再利用することが多い一方で、内製化している企業は使いまわすことがほとんどありません。)
・DX人材育成のサイクルが回っている場合 → 人材育成の課題
これらの課題の解決がされているほど、内製化によるコスト削減のメリットが大きくなりますが、課題が放置されたままであると、逆にコストがかさんでしまうデメリットになります。
コスト試算の曖昧さ
コスト試算が曖昧になるのも内製化のデメリットです。
外部委託している場合にはベンダー企業が見積書を出しますので、その費用を負担すればいいというのがすぐに分かります。
費用に対してどの程度の効果が得られるのかが事前に分かっていることも多いです。
一方で、内製化の場合にはすべてが未知数です。
システム開発にかかる費用はもちろん、開発にかかる時間や人件費、効果測定に至るまでが不確定要素になります。
最初のうちは特に、正確なコスト試算ができないことは大きなデメリットです。
内製であってもブラックボックス化する可能性
システムがベンダー企業に依存している場合にはブラックボックス化のリスクがありましたが、この問題は内製化であっても同じことです。
内製化の場合にも、社内の従業員全員がシステムの開発や運用に携わることは少なく、その分野に得意な人たちでチームを組んで携わることが一般的です。
このようにシステム関連の業務は属人化する傾向があります。
システム開発に携わっていた人たちが離職すれば、他の従業員がシステムを使いこなすことができなくなる可能性があるのです。
内製化は、属人化を招き、ブラックボックス化するリスクを減らすことはできても、なくすことはできませんし、属人化は社内で外注しているのと同じことになってしまいます。
大規模開発ができない可能性
DXの内製化は大規模なシステム開発には向いていないことが多いです。
大規模なシステム開発をするためには、高度なスキルが必要であり、そのようなスキルを持った人材を社内で確保することは難しいでしょう。
大規模なシステム開発が自社内で行えてしまうようであれば、ITベンダーとして事業を立ち上げられることを意味します。
人材育成に時間がかかる
人材育成に長い時間がかかることもデメリットの一つです。
ゼロの状態から自社で育成をすることが難しい場合、外部講座を利用することも考えられます。
育成にかかる費用コストだけに注目が集まりがちですが、自社でシステム開発ができる人材になるまでにどのぐらいの時間がかかるのかにも注目する必要があると言えます。
コストについては、助成金を活用することもできます。
参考までに、以下のリンク先の内容もご確認ください。
「デジタル人材の育成には助成金の活用を!これだけは知っておきたい助成金」
リスク分散ができない
開発をある部門に依頼していて、仮にシステム開発に失敗したり、製作が間に合わなかったりした場合、その責任は自社企業だけの責任となります。
ベンダー企業で委託している場合には、システム開発に失敗することや間に合わないことは考えにくいですので、この点は気にしなくても大丈夫だと思われます。
内製化での失敗はすべて自分たちの責任となるので、人選などにも慎重になる必要があります。
品質の低下
ベンダー企業に依頼した場合よりも内製化した製品の方が一般的に、品質は低下すると言われています。
経験や知識、技術力など、ベンダー企業と比べればそこまで高くないことは直感的に分かっていただけると思いますが、これが事業において致命的になる場合には内製化はおすすめできません。
アジャイル方式では80点程度の点数であっても運用してみて、改善点があればその都度修正を加えていくことも重要です。
最初から完璧な状態にして運用をスタートする必要がない場合には、品質の低下は許容できるかもしれません。
DX内製化の成功要素
DX内製化に成功している企業に共通している要素には
・経営層のサポート
・内製化するべき範囲を決める
・ベンダー企業との共創関係が築けている
・上流工程から小さくスタートさせている
・DX人材の育成ができる
のような要素があります。
順に、もう少し細かく確認していきます。
経営層のサポート
経営層の理解やサポートは必須です。
DX内製化をスタートさせるためには多大な初期費用と時間的コストがかかります。
経営層にDXを内製化させる担当の責任者がいると理想的です。
内製化するべき範囲を決める
複数システムの内製化をするために、いきなりすべてを内製化しようとするのではなく、自分たちで取り組める領域がどのあたりまでになりそうなのか、範囲を決めることが重要です。
これは後述する、上流工程から取り組むという内容に通じてきます。
ベンダー企業との共創関係が築けている
ベンダー企業に委託していたシステムを自分たちで内製化しようとすれば、それはベンダー企業にとっては不利益になります。
しかし、DX内製化の推進にあたって、ベンダー企業の協力なくして成功させるのが難しいのもまた事実です。
ベンダー企業との良好的な関係を築き、お互いのメリットになるところを考えることを忘れてはいけません。
ベンダーとの共創を考え、両社にメリットがある取引がどのような取引なのか、積極的に提案をしあえる関係性の構築が大切なポイントです。
上流工程から小さくスタートさせている
DX内製化はできそうなところから手を付けていくのではなく、上流工程から手を付けることが重要です。
上流工程には、
・要件定義
・機能定義
・構成管理
・計画立案
などが含まれます。
下流工程では、実際に上流工程の内容を踏まえてプログラミングを行っていきますので、難易度は下流工程の方が難しいです。
しかし、上流工程の内容までもベンダー企業に依存している企業は意外にも多いものです。
DX内製化の初歩としては上流工程から取り組むことが重要です。
DX人材の育成ができる
最後は人材の育成になります。
DX人材を育てることが内製化を成功させ続けるうえでは必須です。
得られたノウハウは社内で蓄積しながら育成に活用できるような仕組みづくりを考え続けましょう。
まとめ:内製化は範囲を決めて実施するのが正攻法
内製化にはメリットがある反面、軽視できないほど大きなデメリットもあります。
コストの削減だけを考えてしまうと、以下の前提条件を忘れがちです。
・ベンダー企業と同等レベルのDX・IT人材が社内にいる
・社内開発においてシステムコードの再利用を多く行う
・DX人材育成のサイクルが回っている
これらの前提がクリアできている場合にはDX内製化を本格的に考えてもいいかもしれません。
アウトソーシングに頼ることは悪いことではありません。
自社企業にとって最もバランスの良い手段が何かを考えることが大切です。
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