中小企業のDX成功ポイントを紹介!成功事例9選と成功企業の特徴を解説
日本国内全体で見ると、現状まだまだDXは進んでいません。
DXが大手企業を中心に進んでいると考えれば、中小企業のDXの進捗は予想以上に進んでいないことが伺えます。
業界・業種によってDXへの「向き・不向き」は確かにありますが、従来の仕組みを維持していくことができなくなることが懸念されていること、維持コストも増大する見込みがあることから、DX推進はどの企業にとっても解決するべき課題となっています。
「DX推進に着手したものの、思うようにDXが推進していかない。」
「順序がよくわからずにとりあえず進めたけど挫折してしまった。」
このような企業も少なくありません。
DXを上手く浸透させ、推進させていくためには、実際にDX推進に成功した企業をモデリングすることが成功への近道となります。
大手企業のように多大な費用をかけて急速にDXを組織に普及させることは難しくても、低予算から取り組めるところから取り組むことが大切です。
すでに多くの中小企業でもDXへ向けた一歩を踏み出しています。
成功している中小企業のDX推進の事例をもとに、貴社のDX推進の参考にしてください。
DXに成功した中小企業の特徴
DXに成功した中小企業の多くに見られる特徴を4つ紹介します。
逆に言えば、自社がDX推進を目指すにあたって、以下の4つに不足があると感じれば、DX推進が失敗する可能性が高くなることを意味します。
具体的にDXが成功した中小企業の特徴としては、
・経営者がDX推進を理解し、ある程度トップダウン推進
・ITリテラシーが高く、学び続けられる人材が豊富
・クラウドサービスを使いこなせている
・DX推進に長期的な目線がある
などがあげられます。
順番に解説していきます。
経営者のDXへの理解がある
部門ごとにDXを推進しようと考える企業も多いですが、組織全体での協力を得らないDX推進は失敗します。
「経営者がDXに興味・関心がない」
「必要な支援を経営者が行ってくれない」
という失敗例は後を絶ちません。
昔ながらの慣れた方法で運営を続けた方が効率的と考える経営者や、DXを進めると、現場に権限委譲する部分が多くなり心配だと答える経営者もいます。
効率面を考えればDXを推進させ方が間違いなく高くなります。
権限委譲については、現場社員が取り扱える情報量が増える側面を心配してのものかもしれませんが、必要な情報は社内ですぐに共有ができた方が生産効率は上がりますし、セキュリティの観点からも情報の閲覧に制限をかけることはできます。
まずは経営者がDXについての知見を深め、企業として成功するためにはDX推進が一つの課題になっていることを認識できている状態をつくりましょう。
ITリテラシーが高く学び続ける人材が豊富
DX推進の課題で最も多くあげられるのが、IT人材の確保です。
企業・業種によってはすでに本業の部分において人材不足が慢性化しているところも多く、IT人材の確保にまで手が回らないというのが本音ではないでしょうか。
社内でIT人材を育成するのは時間もコストもかかると心配する経営者もいます。
また、ITに関する知識はすぐに移り変わり、1年前に当然だった知識は今年になってからアップデートされていたということも日常茶飯事です。
一度スキルを身に付けて終わりではなく、常に学び続けられる人材であり続けるマインドを持った社員の育成が前提になります。
IT知識だけをもった社員ではなく、仕事に関する捉え方・マインドが育っている人材に恵まれている企業はDX推進に大きく貢献してくれます。
クラウドサービスを使いこなせている
便利なクラウドサービスを手頃な価格で使えるケースも多くあります。
DX推進が軌道に乗って成功している企業は部分的に、このような便利なクラウドサービスを利用しているケースがほとんどです。
・社内書類のペーパーレス
・電子印鑑・電子署名
・ワークフローシステムによる申請業務の一括管理
・会計ソフト導入による請求業務・決算業務の自動化
あげればきりがありませんが、大企業、中小企業を問わずに導入しています。
クラウドサービスを導入する際には初期導入費用+月額利用料となる場合がほとんどですが、業務にかかる時間や人件費を考えれば、総合的に判断して、どの企業であっても結果的に費用の負担が軽くなることがほとんどです。
外部に人的リソースを頼らなくて済む分野も見つかるでしょう。
中長期計画で取り組んでいる
DXに取り組み始め、その成果をすぐに求めようとしないことが大切です。
一朝一夕に成し遂げられるものではなく、改善・改良を重ねて中長期的に結果を少しずつよくすることが大切です。
推進に成功している企業にも、「最初は費用対効果をあまり感じることができなかった」と感じていることがありました。
クラウドサービスなど、導入すればすぐに業務の効率化を実感できるものもありますが、顧客サービスへつなげるためのDX推進の難易度であれば高くなります。
「新しいツールを導入し、活用しただけですべて上手くいく」と考えるのではなく、使いこなす側のスキル研鑽、問題発見・解決力はどの分野においても重要な要素です。
中長期的な計画を立て、
・いつまでに
・どこまでの
成果を求めるのか、ロードマップを作成しながらDXに取り組んでいる企業は成功する傾向にあります。
DX推進をするうえでの課題
DXに成功してきた中小企業に共通した項目は
・経営者がDX推進を理解し、ある程度のトップダウン推進
・ITリテラシーが高く、学び続けられる人材が豊富
・クラウドサービスを使いこなせている
・DX推進に長期的な目線がある
というものでした。
これと逆境している社内文化はDX推進の妨げとなる可能性が高くなります。
経営者のサポート不足
経営者のサポートはDX推進のためには絶対的に必要です。
成功している企業の多くはトップダウン形式で、ある程度まで進めてしまうことがほとんどです。
ボトムアップで現場の社員からの声を拾い上げてDXに成功したという企業はむしろ少数派になります。
経営者がDX推進のロードマップを見せ、必要な予算を組み込むなど、大まかな指針をつくることが求められています。
デジタル人材確保の難化
人材不足の問題は根が深いです。
日本の労働人口は今後も減少していくことが明らかであり、その少ない労働人口の中からデジタル人材を見つけ、しかも自社で働いてもらわないといけないので、何重にもフィルターがある状態で人材確保に努めなくてはいけません。
外部に人的リソースを期待することができない場合、自社で育成するという選択肢しか残りませんが、時間も費用も心配されるでしょう。
費用面では、DX推進を考える上で有効に活用できるものもありますので、参考にしてください。
「リンク」(16pt以上)
デジタル人材確保が難しくなれば、今以上にDX推進に消極的になる企業も多くなることが予想されます。
予算不足
経営者がDXに積極的であったとしても、現実的に予算を組むことができない場合もあります。
先行きが不透明でありすぎるものに対して積極的な予算を組むことに消極的な企業が多いのです。
スモールスタートでDXを行う場合、先に予算を決めてから計画をつくるという方法もあります。
まずは現実的にDXに充当できる予算を考え、自社の問題点の中から優先順位の高いものと費用を天秤にかけて取り組んでいきます。
既存システムを維持し続けた方が将来的なコスト増大につながることは明らかです。
現状のコストと予算を比較するのではなく、将来的にかかる費用と予算を比較することが正しい比較と言えます。
中小企業のDX成功事例9選を紹介
実際に中小企業でDXに成功した事例を9つ選んで紹介していきます。
ここで紹介する事例以外にも成功している企業はたくさんありますが、身近なクラウドサービスを活用した成功事例なども含まれていますので、多くの部分で参考にできると思います。
事例①:画像認識による会計の自動化(効率化)
株式会社ブレインは、画像認識機能を搭載したシステムの開発をしている企業です。
小売店では、レジの自動化が進んでいる部分もありますが、全国的にはまだ店頭で担当者が会計処理業務をしている方が一般的になっています。
画像認識機能を搭載したレジ装置では、商品を個別に認識し、数量と種類から会計を自動で行うことが可能です。
株式会社ブレインの開発した画像認識システムは、全国のベーカリーショップ(パン屋)に導入されています。
会計の自動化を進めることによって、導入した企業・店舗では、コア業務への集中が期待できます。
事例②:IoTの導入によって新規事業への参画(効率化)
IoTを活用した効率化をすることで新しいビジネス機会に巡り合い、そこに参入することができる可能性が高くなります。
生産性を高め、時間を資源として活用して成功した中小企業があります。
株式会社木幡計器製作所がその代表です。
この会社は、もともと圧力計、差圧計、温度計などの計器を製造する企業でした。
これらの精密機器は製造された計器の確認作業に時間も人件費もかかります。
人材不足という課題も重なり、計測器の情報をクラウドと連携させることで計器の情報を遠隔地からでも管理・確認することを試み、成功しました。
生産性の向上によって生まれた新しい時間を新規事業への参画資源として活用していき、今では、呼吸機能測定器等の医療機器の製造・販売も手掛けています。
※IoTとは?
「IoT(Internet of Things)」とは「モノのインターネット」を意味し、家電製品・車・建物など、さまざまな「モノ」をインターネットと繋ぐ技術です。たとえば近年では、家電とインターネットを繋ぐIoTデバイスが一般家庭に普及しています
事例③:RPAを導入したバックオフィス業務の自動化(効率化)
建設業界向けの土木積算システムを開発している株式会社okicom。
システム開発をしているということも理由かもしれませんが、経営サイドのDXへの知見も深く、デジタル人材育成にも注力しており、DX推進に前のめり姿勢を見せていることがDX成功の一因と言えそうです。
RPAの導入と活用をしている同社では、クライアント情報や請求書業務などの経理業務はすべて自動化していると言います。
業務の効率化によってヒューマンエラーを防ぎ、他に人的リソースを回すことができるのは人手不足が深刻化していく社会において重要です。
※RPAとは?
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、ホワイトカラーがPC上で行う業務をロボットで自動化するテクノロジーのことです。
クラウド上でデータ管理、入力まで自動化できるツールはRPAに含まれます。
商品個々の検査や、人間の判断を仰ぐ必要な業務はRPAによる解決は難しいと言われています。
事例④:製造品質の確認を画像診断(効率化)
金型設計から順送プレス加工までを超短納期で実現させる株式会社ヨシズミプレス。
製造から納品までを1週間程度で行っている同社では、製造品の確認まで含めてすべて人的作業によるものだったと言います。
小さな部品を扱う同社では品質に確認作業は必須でしたが、この部分を画像測定器、投影機などを導入して活用することによって作業効率を向上させることに成功しています。
iPhoneXの部品を受注したこともある同社は、職人にしかできない精度の高い部品製作と業務の効率化によって日本の基幹産業であり続けるでしょう。
事例⑤:店舗にロボットを導入(顧客対応)
店舗にAIロボットを設置し、そのロボットが顧客の顔を覚えることで追加のサービス拡充を行っているお店があります。
マイクロソフト社と共同開発されたというこのシステムが導入されているのは、「鶏ポタ ラーメン THANK」。
来店した客の顔をロボットが記憶し、来店客が3回目の来店であると認識すると、無料トッピング券をサービスするというシステムになっています。
ロボットが撮影した画像をAIがクラウド上で解析し、来店客の顔を識別していると言います。
サービスを利用するためには事前に自分の顔を登録しておく必要があります。
ユニークなサービスの提供は、常連客を獲得するための新しい企画と言えるでしょう。
これは一例ですが、他にも顧客対応にAIを導入している企業があり、店舗ビジネスの常識も変わりつつあります。
事例⑥:アプリケーション開発で新規事業拡大(顧客創造)
旅館「元湯陣屋」を運営する株式会社陣屋。
訪日外国人の宿泊者数で売上を確保できる観光地とは真逆に、地方で宿泊業を営む旅館は宿泊者数の減少に頭を抱えています。
元湯陣屋もその例外ではなく、一時は年間で6,000万円ほどの赤字であった時期を経験しています。
そこで、自社のITスキルの高い社員を中心に「陣屋コネクト」というアプリを開発。
サービスの品質改善に注力し、生産性の効率化を実現させました。
陣屋コネクトは、チェックインやチェックアウトはもちろん、旅館内のサービスや近隣施設やアクティビティの予約までアプリで行うことができ、本当に人のサービスが必要なところで「おもてなし」ができるようになったと言います。
旅館業を営む人たちへ陣屋コネクトの提供を行っており、今ではグループ売上の30~40%が陣屋コネクトによる収益であるとのことです。
全国で500を超える施設に提供されているこのアプリは、初期費用から導入まで無料で使うことができ、アプリを通じた正規予約によって収益が発生する仕組みとなっており、導入障壁も非常に低いということで好評です。
事例⑦:ダイナミックプライシングによって価格最適化(利益拡大)(
ダイナミックプライシングとは、過去のビッグデータを踏まえ、AIが
・時期
・年齢
・性別
・天候
などを分析し、最適な価格を自動で算出してくれるシステムのことです。
サッカーJリーグの横浜F・マリノスは、観客チケットの販売にダイナミックプライシングを導入しています。
従来は座席によって格付けがされていましたが、ダイナミックプライシングを導入したことによって、席そのものではなく、市場の需要に応じで最適な価格で提供することができるようになりました。
事例⑧:運送業界のデジタル化とサービス提案(効率化・顧客創造)
物流会社としてユニークな存在であることを目的にする株式会社ヒサノ。
九州地方を拠点に事業を営んでいます。
同社は半導体や産業用機器の輸送と搬入・設置までを行うサービス(ワンストップ・サービス)を提供しています。
デジタル技術を駆使し、物流業のリソースである人・トラックや倉庫を顧客に尤も効率よく安心して届けられる最適解を常に探し続けています。
データの解析に基づいて顧客への新しい提案にもつながり、顧客でさえも気が付かなかったニーズを掘り起こすことで市場開拓も可能になりました。
事例⑨:製造現場を映像化し、技術継承に活用(人材育成)
大企業にはなりますが、タイヤ事業を中心に規模を大きくしてきたブリヂストンは技術者の熟練した技術を後世に継承するためにデジタルツールを人材育成に活用しています。
一人前の技術者の作業現場や製品を映像に記録することによって遠隔地での人材の育成も可能にしました。
人材育成に距離や場所を問題にしている中小企業は少なくありません。
オンラインツールを活用することで効果的な研修をすることも可能になります。
中小企業だからこそDXを推進するメリット
中小企業でもDX推進を目指す企業は増えています。
中小企業の方がフットワークは軽く、助成金額が大きいというメリットもあります。
生産性や効率が高まれば、削減された時間を今後のビジネス展開、サービス拡充を考えることに使うこともできます。
安価で便利なクラウドサービスも多く、中小企業にとっても導入しやすくなっているものが多いです。
安価で便利なクラウドサービスの誕生
安価で便利なクラウドサービスは中小企業にとって活用するべきツールと言えます。
大企業であれば多くの人的リソースを活用し、費用をかける戦略をとっていくこともできるかもしれませんが、中小企業にとっては、人材確保が難しい上にコストがかかるというデメリットしかありません。
しかしながら、実際には中小企業よりもDXが進んでいるのは大企業の割合が大きくなっています。
ペーパーレスや電子署名など、作業を単純化するだけのツールの導入であっても大企業で推進されている傾向にあることを踏まえると、安価で便利なクラウドサービスを前に中小企業が導入しないのは宝の持ち腐れになりかねません。
何でも導入すればいいわけではありませんが、確実に便利になる確信を持てる分野での導入と活用は積極的に検討するべきでしょう。
生産性の効率化
何度か本文中で登場していますが、生産性の効率化は時間の短縮につながります。
時間が短縮されれば、その他の生産活動に時間を充てることができます。
生産性の見直しをすることで、競合他社との市場競争を優位に進められるというのもメリットです。
非効率な生産活動を行っている時間で新しいプダクトローンチを考えることもできれば、まったく違った事業への参入を画策することもできます。
生産性の効率化を単なる労働時間の短縮とみるのではなく、その他の生産的活動に充てるための手段とみると、「DX推進」への見方も変わってくるかもしれません。
助成金が活用できる
DX推進のための人材育成、教材の導入には多額の費用がかかります。
しかし、企業はその全額を負担する必要はなく、要件を満たせば助成金を活用することができます。
助成される金額は条件によって様々ですが、中小企業の方が大企業よりも助成率が高くなるのが一般的です。
中小企業でこれからDX推進を目指していくときには、助成金を活用しない手はありません。
まとめ:DXは企業の競争力維持のためにも必須
DXを本当の意味で成功させるためには、組織全体でDXに関心を持っている状態でなくてはなりません。
まだまだ日本の中小企業への取り組み・関心は高くないことが統計から伺えますが、文明の利器とも呼べるツールを導入しないことは様々な機会損失へとつながっていきます。
DXは企業の競争力を維持していくためには必須です。
すでに成功している事例を参考にし、社内での生産性の向上・業務の効率化を目指しましょう。
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