マネジメントを直訳すると「経営・管理」!? 必要なスキルや具体的な業務とは
「マネジメントとは?」
「経営層のマネジメントとは?」
「マネジメントの役割は?」
管理職やリーダーになると「マネジメント」を行う機会が増えると思います。一口にマネジメントといっても、経営層レベルから部長や課長といったミドル、また現場スタッフのマネジメントまで、その種類は多種多様です。
しかし、レイヤーは異なっても、マネジメントが担う役割の大枠に大きな違いはありません。また、必要なスキルや実施する業務も、扱う内容やレベルの差はありますが、ある程度は一貫しているといえるでしょう。
そこで今回は、マネジメントがどのようなものか解説しつつ、その種類や必要なスキル、実施する業務などを紹介します。
マネジメントとは
「マネジメント」という言葉自体はよく聞くと思いますが、どのようなものかきちんと説明できる方は、意外と少ないでしょう。本章ではマネジメントの父と呼ばれるピーター・ファーディナンド・ドラッカー(以下、ドラッカー)が唱える定義を中心に、マネジメントがどのようなものか解説します。
ドラッカーが唱えるマネジメントの定義
英語のマネジメント(Management)は、日本語に直訳すると「経営」や「管理」という意味です。一方、ビジネス用語としてのマネジメントを簡単に説明すると、社内のリソース(ヒト、モノ、カネ)を有効活用して、企業の目的を達成する活動だといえるでしょう。一般的には、アメリカの経済学者ドラッカーの著書「マネジメント」が出版されたときに、現在のマネジメントの定義が決まったといわれています。
なお、現在一般に流通している『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』のまえがきには、以下のように記載されています。
「組織をして高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策である。組織に成果を上げさせるものがマネジメントであり、マネジャーの力である。」
また本著において、ドラッカーはマネジメントとマネージャーを以下のように定義している点が特徴です。
・マネジメント:組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関
・マネージャー:組織の成果に責任を持つ者
つまり、組織の目標を達成するためのツールがマネジメントで、それを施行する人物がマネージャーといえます。
マネジメントの目的
ドラッカーによると、マネジメントの目的は「組織の目標を達成するために、組織を正しい方向に運営すること」だと説明されています。つまり、部下に指示をしてさまざまな施策を実施することによって、部門に課せられた売上目標や経費削減率などを達成することがマネジメントの目的です。
一方、リーダーシップの目的は「部下に対して方向性を示すこと」だといわれており、マネジメントを達成するためのツールのひとつといえるでしょう。
ドラッカーが唱えるマネジメントの役割
ドラッガーは『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』において、マネジメントの役割として、以下の3つを定義しています。
・組織が独自に掲げている特有の目的を果たす
・組織で働く人の自己成長を促す
・組織として社会に貢献する
まず、組織目標を達成するために、部署の目標を設定します。次に、部署の目標を必達できる組織を構築し、部下が日々の業務に邁進できるよう管理することが、マネジメントのひとつめの役割です。
そして、自部門で働く部下の成長に寄与することも、マネジメントの重要な役割だといえます。一方的に指示を与えるだけでなく、部下が自主的に行動できるように適切な課題設定を行うことも、マネージャーの重要な仕事です。部下への指示出しや管理、施策の実施などに加え、目標設定や評価、フィードバックを行う必要があります。
最後に、組織目標を達成することによって企業を成長させ、人々の生活を豊かにする商品やサービスを生み出したり、新たな雇用を生んだりすることで、社会に貢献することがマネジメントの最終的なゴールといえるでしょう。
マネジメントの種類
マネジメントは大きく「階層別マネジメント」と「業務別マネジメント」の2種類に分けられ、さらに目的に応じて細分化される点が特徴です。代表的なマネジメントの種類について、それぞれがどのようなものなのか解説します。
階層別マネジメント
役職や役割といったレイヤーが変わると、求められるマネジメントの内容も異なることが一般的です。レイヤーごとに、どのようなマネジメントを実施する必要があるのか解説します。
トップマネジメント
トップマネジメントとは、社長や役員などの経営層に求められるマネジメントのことです。
企業や組織全体のビジョン・計画の立案、および経営戦略を検討し、意思決定が求められます。
また、自社の業績に対する責任を負う役割を担う点もトップマネジメントの特徴です。
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントとは部長や課長、支店長など、いわゆる中間管理職が担うマネジメントです。
経営層をサポートしつつ、与えられたミッションを達成するために、自部門の目標設定や管理、部下への指示出しや施策の実施などが求められます。一方で、部下からの要望や疑問点を集約し、経営層へ伝えつつ、具体的な解決策を提案することもミドルマネジメントの重要な役割です。
つまりミドルマネジメントは、経営層から現場に対する「橋渡し」のような役割を担うマネジメントだといえるでしょう。
ロワーマネジメント
ロワーマネジメントとは、係長やリーダーなど、現場で施策を実施するスタッフを直接的に指示、管理する役割の人材に求められるマネジメントです。企業全体の目標を達成するためには、部署ごとの目標必達が条件となるため、ロワーマネジメントは非常に重要な役割だといえます。
また、ミドル層からの指示や要望、経営層からミッションなどを部下に伝えることも、ロワーマネジメントの役割といえるでしょう。
業務別マネジメント
部門やグループ、プロジェクトなどの組織を運営する場合には、それぞれに即した形のマネジメントが求められます。ここでは、組織運営と人材管理を実施する際に求められるマネジメントについて、簡単に紹介します。
組織運営に関するマネジメント
組織運営を行う際に必要なマネジメントは、チームマネジメントとプロジェクトマネジメント、ナレッジマネジメントなどが挙げられます。それぞれの役割は以下の通りです。
・チームマネジメント:部門やチームの目標を達成させるために、部下の指示管理、フィードバックなどを担うマネジメント
・プロジェクトマネジメント:成果物を納期内に開発するなど、プロジェクトの目標を達成させるための進捗やスケジュール管理、スタッフのアサインなどを担うマネジメント
・ナレッジマネジメント:業務に関する知見やスキルなど、さまざまな情報を社内に浸透させ、生産性を上げる役割を担うマネジメント
人材管理に関するマネジメント
人材管理を行う際に必要なマネジメントは、タレントマネジメントやモチベーションマネジメント、パフォーマンスマネジメントなどです。それぞれの役割を簡単に紹介します。
・タレントマネジメント:目標達成に向けた最適なスタッフをアサインするために、スタッフのスキルや特性を育成、理解する役割のマネジメント
・モチベーションマネジメント:スタッフのモチベーションを上げる、また成果が上がらないときなどにフォローアップする役割のマネジメント
・パフォーマンスマネジメント:PDCAサイクルを回しながら、スタッフの自主的な行動を促す役割のマネジメント
マネジメントに必要な5つのスキル
マネジメントを行う際には、さまざまな業務をこなさなくてはいけないため、マネージャーには多くのスキルが必要です。マネジメントに必要な代表的なスキルを5つ紹介します。
1. 分析・判断能力
マネージャーには分析・判断能力が必須です。目標を達成するためには、市場や自社が抱える課題や問題を分析し、どのような施策を打つべきか判断する必要があります。
そのためには、数値など客観的に判断できるデータから課題を抽出し、最適な施策を導きださなくてはいけません。
2. 管理能力
スケジュール通りに施策を実施し、目標を達成するためには、管理能力も必要です。マネージャーは目標達成に必要な施策を検討した後、最適なスタッフをアサインして施策を実施させ、進捗管理を行わなくてはいけません。
また、問題や課題が発生した場合には、施策の内容やスタッフのアサイン、スケジュールなどを柔軟に変更して対応する必要もあるでしょう。
3. コーチング能力
マネージャーには部下の自主性を促し、成長させるコーチング能力も欠かせません。部門の目標を達成するためには、部下のパフォーマンスを最大化する必要があります。また、部下に目標を達成するための能力が足りない場合には、スキルアップさせることもマネジメントの役割です。
コーチングを行う際は1on1ミーティングなどを活用し、部下と一緒に課題を挙げて解決策を考え、定期的に成果を確認していくようにしましょう。このとき、上司から一方的に指示ばかり与えると、部下が指示待ちになってしまうため避けるべきです。
なお、1on1ミーティングについては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
1on1とは?具体的なメリットや効果、実施方法を分かりやすく解説
4. リーダーシップ
目標を達成するためには、マネージャーが部下を適切な行動ができるように導くリーダーシップを発揮する必要があります。マネジメントを行う際には、目標を達成するために最適なスタッフをアサインし、スケジュール通りに施策を遂行できるようにリードする能力が欠かせません。
また、日々の業務においては、さまざまな課題や問題が発生したり、スタッフから意見が寄せられたりすることもあるでしょう。そのため、マネージャーには明確な意思決定を行い、現場をまとめ上げるスキルも必要です。
5. コミュニケーション能力
マネージャーは自部門のスタッフだけでなく、他部署のスタッフや外部企業などとも頻繁にコミュニケーションをとらなくてはいけません。よって、マネジメントを行う際には、高いコミュニケーション能力が求められます。
特に部下が相談しやすいように普段から良好な関係性を構築しておくことが、目標達成には欠かせない要素といえるでしょう。そのためには、部下の価値観や能力を認め、リスペクトする姿勢も必要です。
具体的なマネジメント業務
マネージャーが普段のマネジメントで実施しなくてはいけない代表的な業務をピックアップして紹介します。
部下への動機づけ
部下の仕事に対するモチベーションを喚起し、自発的に動く意欲を引き出すための環境整備は、マネージャーの重要な業務です。普段から部下と友好な人間関係を構築しておくことはもちろん、1on1ミーティングにおいては「なぜこの仕事が必要なのか」「アサインした理由」「期待する能力や成果」など、できるだけ具体的な部下への動機づけを行う必要があります。
そのためには、マネージャーと部下が密接にコミュニケーションをとることが欠かせません。
目標管理
自分が担当する部署の目標を設定し、部下の具体的なミッションを決める目標管理もマネージャーのメイン業務のひとつです。すべての部下にそれぞれ最適なミッションを与え、期待する成果やパフォーマンスを伝えます。
また、目標設定の際には、ミッションを与えた理由を部下に腹落ちさせることも重要なポイントだといえるでしょう。
部下の管理
部下を今後どのような方向へ伸ばすべきかという人材育成も、マネージャーの重要な業務です。今後のキャリアパスを部下と一緒に検討し、必要な経験やスキルが積めるように調整することが求められます。
また、業務遂行中に課題やトラブルが発生したり、うまくパフォーマンスを発揮できなかったりする場合には、部下のメンタルケアも必要です。
なお、人材育成については、以下の記事でも詳しく解説しています。
人材育成とは?必要な準備や育成方法、進めかたのポイントなどを紹介
部下へのフィードバック
人材育成を行う際には、部下へのフィードバックを行いながら、改善やスキルアップをしていくステップが欠かせません。部下へのフィードバックは、半期に1度実施する人事評価の面接だけでは不十分です。隔週に1回程度は1on1ミーティングを行うなど、細かいスパンで実施するとPDCAサイクルが回しやすく効果的でしょう。
部下に自分のウィークポイントや課題に気づいてもらい、自発的に活動してもらうためには、マネージャーも一緒になって課題設定や目標を決めることがポイントです。
適切なマネジメントの実施が全社的な生産性向上につながる
企業や組織の目標達成に欠かせないマネジメントは、経営層から現場のリーダーまで幅広いレイヤーの人材にとって重要な業務です。マネジメントには高いスキルが要求されますが、適切に実施できれば企業や組織全体の生産性向上につながります。今回紹介した内容を参考に、ぜひ今日からでも適切なマネジメントに取り組みましょう。
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