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DXを無駄にしないために!DXに取り組むも、労働時間が減らない原因を解説

労働人口の減少に伴い、生産性の向上は中長期的な観点で取り組まなければならない課題であり、その解決策の一つにDXが含まれます。

先進諸国では、「DX」というのは意識して行うものではなく、市場分析や競争意識から「工夫した結果」とされることもあり、「DX」というスローガンを掲げている時点でDXには向かっていないと言われることもあるため、この意味で日本はまだまだ後進国であるのかもしれません。

しかし、今の日本が抱える労働人口減少はさらに危機的な状況になるとの予想もあり、生産性を高めることは必須です。
生産性を高めるためにどの企業もDXに取り組むために「DX」を全面に打ち出すことには意味があることのように思えます。

そんなDXですが、取り組みを始めてはみたものの、生産性が向上せず、むしろ生産性が下がっているのではと疑問の声が上がることがあります。
今回は、DXに取り組むものの、労働時間が減らず、生産性が上がっていないと感じる原因について解説します。

生産性と無駄の関係

DXに取り組んでいても生産性が上がっていないと感じるということは、仕事の中に無駄と感じる部分が含まれている可能性があります。
まずは労働人口の減少がどれほどの影響を与えているのかという外観と、生産性と無駄の関係について簡単に確認していきましょう。

人口の減少に伴う労働人口も減少

経済産業省がDXの旗振り役を担ってからすぐに周知された2025年の崖。
2025年問題とも呼ばれますが、団塊世代と呼ばれる人たちが後期高齢者(75歳以上)になり社会の構造に大きな影響を与えると言われている年です。
この団塊の世代だけで日本の人口の約5%を占めており、約806万人にあたります。

続く2030年には生産年齢人口とも呼ばれる15歳以上65歳未満の人口比率が6割以下となり、高齢化が進展していくとともに、労働人口の不足は644万人以上になると予想されています。

日本の人口の絶対値で見ても、2060年には8000万人ほどにまで減少していくとの見方で、
時間の経過とともに労働人口の減少はますます進行していくことになるでしょう。

しかし、ここ最近の最低賃金や初任給の増加傾向に注目している人たちも多いはずです。
賃金が上がるということは企業が売上を立てて利益を出して成長していくことを意味しており、それが国の成長へとつながります。

では、国の成長指標はどうでしょうか。
公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2022」によれば、
①日本の時間当たり労働生産性は49.9ドル。OECD 加盟 38 カ国中 27 位。
②日本の一人当たり労働生産性は、81,510 ドル。OECD 加盟 38 カ国中 29 位。
③日本の製造業の労働生産性は、92,993 ドル。OECD に加盟する主要 35 カ国中 18 位。


(出典:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」より引用)

日本は他の先進国と比較しても時間当たりの労働生産性の順位に課題があることが一目瞭然です。
しかし、ここでご覧いただきたいのは、日本の順位そのものよりもしばらく日本の労働生産性は横ばいという事実です。
実際にGDPそのものも横ばい状況が続いており、近年では下落の傾向さえ見せています。

GDPが下落ないし横ばいのまま賃金だけが上昇トレンドに乗り続けるということは難しいでしょう。
この状態のまま労働人口だけが減少し続ければ、生産性はもちろんのこと、生産量そのものまで減少していくことは避けられません。

経営資源の有効活用が生産性向上のカギ

DXに取り組むものの、「生産性が向上していない」「仕事時間や作業量が増えていると感じる」のような声の背景には、経営資源の有効活用と生産性向上の関係を理解していない可能性があげられます。

ここでの経営資源とは、ヒト(従業員)・モノ(設備など)・カネ・情報の4つを意味します。
これらを効率よく配分することによって全体のパフォーマンスを最適化することが生産性を高めることの本質であり、どこかに偏った配分をすることで特定のパフォーマンスを高めたとしても全体としてはそのパフォーマンスの高さを活かしきれないことになります。

無駄を削減して生産性を高めるためにまずすべきは「自分の仕事には生産性があるのか」を問うこと。
「生産性がある」と回答できるなら、続いて「その仕事のパフォーマンスはこれ以上生産性を高める必要があるものなのか」ということです。
この回答にも「必要がある」と即答できるのであれば投資対象として検討すべき内容でしょう。

当然のことのようにも思えますが、不要なところへ便利な「投資」という言葉で経営資源を使うことも多いのではないでしょうか。
後述しますが、スケーラビリティやサンクコストの考え方が経営資源を有効活用するためには大切です。

無駄の種類と生産性

業務改善の取り組みを行う技術の一つに、IE(Industrial Engineering:インダストリアルエンジニアリング)があります。
IEでは、仕事の作業時間を「価値作業」と「非価値作業」に区分し、非価値作業を三つの無駄に分けています。


(出典:大阪工業大学「作業におけるムダの概念」より引用)
①すぐに省けるムダ
②作業そのもののむだ
③設備に起因する無駄

作業全体では、多くても20%程度が付加価値を生む正味作業となっており、「仕事」と認識している多くのものが無駄なものと区別されています。

効率化を目指す前に、無駄の種類を明確にしておくことで、どの問題点を解決する必要があるのかの取捨選択が重要です。
何も考えない状態でDXへ取り組み始めたり、新しいことを導入したりすれば、単純に「無駄な作業を増やしただけ」にもなりかねません。

常に目的を意識した取り組みを意識してみましょう。

営業分野の無駄な時間が露呈

どのような職種にもその職種特有の「無駄」があるものです。
ここでは、営業職の無駄に注目したレポートがありましたので紹介します。

CRMプラットフォームを提供するHubSpot Japanがまとめた「日本の営業に関する意識・実態調査2023」を基にして営業分野での労働生産性について見ていきましょう。

営業職の労働時間は金額換算で遺失金額1兆円規模

国内ではDXを本当の意味で成功させている企業は少数派と言われていますが、その過程でデジタイゼーションやデジタライゼーションといったことに取り組み始めている企業は多くなっています。

便利なクラウドツールやアプリの導入もあり、労働時間は削減されているのではないかと考えるのが自然ですが、このレポートでは真逆の結果が報告されました。


(出典:HubSpot Japan株式会社「日本の営業に関する意識・実態調査2023の結果」より引用)

この調査対象になっている企業の組織的なデジタルツール等の導入状況は
「テレワークを導入している」の回答が56.2%
「リモート営業を導入している」の回答が42.1%
「CRM(顧客管理システム)を導入している」の回答が36.1%
「顧客の管理方法が不明確・分からない」の回答が31.0%
となっています。

この結果だけを見る限り、デジタルツールを使いこなしている印象を感じ取る人も多いのではないでしょうか。
ところが、実際の調査結果では前回の調査時よりも「ムダ」と感じる時間は増加しており、法人営業の無駄にあたる遺失売上額はおよそ1兆円規模に迫る勢いになっているのです。

これは大きな課題として認識しておく必要があるでしょう。
「DX」という言葉だけが独り歩きしてしまい、本質を理解しないまま「生産性の向上」という曖昧な目標に突き進んでしまった結果なのかもしれません。
便利であるはずのツールが逆に足枷(あしかせ)になっているケースも考えられます。

ツールを導入するためには目的が重要です。
「何のためにそのツールを導入し、そのツールを導入することによって何が得られるのか、何につながるのか。」
このような問いに明確な回答を出すことが必要なのです。

例えば、顧客のデータを手動で入力していた場合、顧客データを自動で管理してくれるシステムは便利に思えます。
事実、顧客データを入力する時間そのものは短縮されるでしょう。
しかし、その顧客データの活用を考えていない場合、しばらくそのデータに触れることがないかもしれません。
社内にデータだけが蓄積されていく状態です。

急に必要になった顧客データを探す時に、探し方が分からない、見つかっても活用の仕方が分からないとなってしまうようでは、手動で入力していた時の方が使い勝手が良かったのかもしれません。
また、他のシステムと連携することができないなどの理由で、ツール導入には成功したものの、別の仕事が追加で増えるケースもあります。

システムツールを導入する際には、導入の目的はもちろん、ツールの導入で他の業務がどのように変わるのかまで考えなくてはなりません。

業務の無駄と感じること2位は社内報告、1位は?

会社で仕事をしているとき、「この仕事は必要?」「この仕事は無駄なのではないか」こう思うことは少なからずあるでしょう。

その考えが正しい・正しくないかは別にして、法人営業を対象とした調査結果では社内報告が業務として無駄であると回答した人の割合が2番目に多いという結果でした。
ただし、社内報告そのものが不要であるかは分からず、その報告の形態や方法に問題があると回答したとの見方もできますので、社内報告そのものをなくせばいいという結論は導き出せません。

そして、社内報告以上に従業員が無駄だと感じているものはが「会議」です。


(出典:HubSpot Japan株式会社「本質的な業務改善を阻む課題」より引用)

生産性を意識した末に「会議を完全になくしてしまった」との声も聞きますが、同じように真似して上手くいくとは限りません。
「人とのつながり」の大切さが求められている一方で、会議などで人と会う時間は無駄に感じられるというところに生産性の本質が詰まっているようにも感じます。

「人とのつながり」には、単純に対面で接点をもつことではなく、困難に陥ったときに相談することができる人間関係の構築など、いざというときの安心感を求めているのではないでしょうか。
この点を踏まえると、コミュニケーションやモチベーションを名目にして何度も顔を合わせるような会議であれば、不必要に設ける必要性はないかもしれません。

会議を行う際には、全員で時間を共有することが本当に必要かを考えましょう。

ルーティンワークは限定要因になりうる

社内報告のスタンダード化にとどまらず、業務には企業ごとのスタンダードがあると思います。
スタンダードは一定の品質を保つうえでは重要ですが、それ以上のパフォーマンスをもった人材の能力を活かしきることができないという難点もあります。

そして、その高い能力を活かしきることができないことが結果的にその人の生産性を下げていき、本人が自覚し始めるとモチベーションの低下も招きます。

「このルールがなければもっと早く仕事を終わらせることができた。」
「自分が早く終わらせても他が遅れているから、それに合わせればいい。」
というような考えが少しでも出たら要注意。
何が生産性を限定してしまう要因なのか、常に生産性の最適化を見直すことが大切です。

DXに取り組んでいるものの労働時間が減らない原因

DXに取り組んでいるものの労働時間が減らない原因について見ていきましょう。

DXリテラシーの高くない人たちが緻密なロードマップ作っている

DXに取り組む前にはロードマップの作成が重要です。
しかし、緻密すぎるロードマップがそれほど重要にならないこともあります。
特に、社内のDXリテラシーがそこまで高くない人たちが作ったロードマップであれば、作成した後に変更・修正が加えられることが関の山です。

作り込まれたロードマップに従い続けると、会社のためのDXではなく、ロードマップのためのDXになります。
ロードマップ通りに終わっても、会社が求めていたものと大きく異なっているケースも珍しくありません。

途中で違和感を覚え始めてからの取り組みは従業員のパフォーマンスを奪います。
意識的に仕事量が増えたと感じるのは自然なことでしょう。

システムだけが先走り、従業員のリテラシーが追い付いていない

ある程度のところまでであれば、DXはトップダウンで進めたほうが、効率がいいと言われています。
これ自体は間違っていないのですが、従業員のリテラシー向上計画と両輪で進めていかないと従業員にとっては負担と感じる可能性があります。

経営陣の中で十分なツール運用のイメージが出来上がっていたとしても、そのツールを実際に活用するのは現場の従業員です。
普段であれば自分でできた仕事を、ツール導入によって余計な時間をかけて仕事をしているように感じるケースは多々あります。

使いこなせば汎用性も高く、時間の短縮にもなるツールは、リテラシーが高くない従業員が使うと不満につながる傾向にあります。
業務の方法や手順が根本から変わってしまうようなツールの導入は従業員のリテラシー向上のための育成も同時に考えることが大切です。

業務内容とシステムのミスマッチ

業務内容とシステムのミスマッチも仕事時間が増えたと感じる要因の一つです。

先にも取りあげた顧客管理システム(CRM)の例であれば、CRMが顧客の情報を一元管理できない、または顧客とのコミュニケーション履歴が適切に記録されない場合、従業員は情報を集めるために複数のシステムを使用しなければならず、その結果作業時間が増加します。

また、プロジェクトの進捗状況やタスク管理が不十分なシステムを導入してしまった場合には、チームメンバーが互いの進捗を確認するためのコミュニケーションが増えて結果的に作業の効率が落ちるでしょう。

DXを無駄にしないために重要な3つの概念

最後に、DXへ向けた投資を無駄にしないための3つの概念を紹介します。
DXに限らず以下の項目を意識した取り組みは投資回収の観点では重要な考え方ですので参考にしてください。

サンクネス・サンクコスト

サンクネスとは投資回収が不能になった状態を指します。
投資回収が難しくなる傾向が高いものに無形資産があります。
無形資産とは形をもたない資産のことで、知識や情報・人的資本などです。

研究開発分野を例に出すと顕著ですが、ある研究を続けるために莫大な予算を割いたとしても実用化されなければ投資回収はできません。

DXでも同じことが当てはまります。
DXへの投資では、ツールなど有形資産だけでなく、教育という無形資産への投資も必要です。
しかし、実際にDX人材を育成するような、教育への投資はあまり多くは行われてはいなく、ツールなど有形資産への投資割合の方が圧倒的に多くなっています。

この傾向は企業だけでなく、個人単位に当てはめてみると、より分かりやすくなるかもしれません。
いわゆる「スキル」を磨くための投資という考え方は、大事だと分かっていつつも投資回収ができないかもしれないという抵抗感があるのかもしれません。

また、一度リスクをとって教育などスキル向上へ投資をした後にはその効果を回収し続けようとするサンクコスト効果を考えることも重要です。
無形資産への投資は事前に引き際を決めておくことがいいでしょう。

無形資産への投資は、適正なリスクの取り方は実際に適正なリスクをとろうとしてみないと分かりません。
人材育成に時間とコストをかけてこなかった場合、DX推進という理由だけでDX人材の育成にコストを割くことに抵抗を感じるのが普通です。

スケーラビリティ

DX推進で最も費用がかかるのは初期段階です。
ツールの導入、人材育成の体制を整えることなど多くの面で費用がかかります。
また、継続したコストも発生し続け、途中でさらなる投資も必要になるでしょう。

ここで重要なのがスケーラビリティの考え方です。
スケーラビリティは、システムやビジネスモデルの成長または縮小に適応できる能力を指します。
特に、追加のリソース(人員、技術、資本など)を投入することで、効率的に性能を向上させるか、さらなる需要に対応するかを評価する指標として用いられることが多いです。

既存商品の形を変えて販売するなどの方法は典型的なスケーラビリティを意識した投資と言えるでしょう。
DX推進の場合も、進むにつれてどのような変化・投資が必要になるのかを見据えて後から最小投資で最大リターンが見込める状態を目指すのが理想的です。

モデリング

現代では情報が共有されるスピードはすさまじいです。
新しい企業ができても、その形態が他と全く異なっているのは稀で、既存のモデルと同じか、複数の掛け合わせでサービスを展開していることがほとんどです。

だからこそ、新しいこと早く進めることが重要なのです。
スピードこそが競争の優位性を決定すると言っても過言ではありません。
SNSやインターネットで情報が瞬時に共有されている状態になった以上、真似することも簡単であれば真似されるのも早いです。

成功している企業や上手くいっていると感じる企業の取り組みは適正なリスクの範囲で積極的にモデリングをすることもDXへ向けた投資を無駄に終わらせないために重要です。

企業風土やリソースの違いによって実現の可否はありますが、成功している企業のモデリングは生産性の観点では高いコストパフォーマンスを発揮するでしょう。

まとめ:DXの成否は労働時間の短縮だけではない

DXへの取り組み方を誤ると、労働時間が増えてしまう可能性について言及しましたが、労働時間だけでDXの成否を判断するのは早計です。

大事なのは中長期的に見てどのような変革をもたらしてくれるのかであり、目先の業務時間だけに捉われてはいけません。
特に、この考え方は現場の従業員が理解しなくてはいけないものであり、浸透していないと、DXに対して消極的な感情を抱きかねません。

明らかに誤っている取組は修正しつつも、場合によっては適正なリスクを見極めたうえでの投資であると構える姿勢も大切です。

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