DX推進にコンサルティングは効果的?コンサル依頼のメリットと注意点を解説
今後の日本企業に求められるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、生産性の向上や企業どうしの競争力の優位性を保つためにも必須のことです。
一方で、
「DX推進と言われても何から手を付けていいのか分からない」
「一通り調べてみたものの、結局のところ自社の場合には何をすればいいのか分からない」
このような問題もあるのではないでしょうか。
書籍やインターネットの情報はあくまで一般論として書かれているものが多く、「個社」にとっての情報を具体的に教えてくれることは稀です。
そして、「コンサルティングをお願いした方がいいのか?」と疑問に感じる方もいると思います。
ここで、DX推進のためのDXコンサルティングについて、効果的なのかどうかや、メリット・注意点を解説していきます。
目次
DXコンサルティングとは?
「コンサルティング」は、企業や個人から依頼を受け、その経営戦略・技術的アプローチ・マーケティング手法などについて助言と指導を行うことが仕事です。
DXコンサルティングでは、企業のDX推進を後押ししたり、DXによって新しい価値の創造と提供を行ったりするための助言や指導を行います。
コンサルタントの中には、助言や指導だけでなく、その助言や指導をもとにした技術的な能力を兼ね備えている人もおり、実行者として任務を遂行することまでをまとめて担う場合もあります。
DX推進時の企業の課題
DX推進時に企業にとって課題になる部分は概ね決まっています。
その課題の中でDXコンサルティングを利用することで解決できるものもあれば、解決できないものもあります。
ここでは、DXコンサルティングで解決することができるのかどうかも踏まえながら企業がDX推進において課題になりやすいところをピックアップしています。
予算がない
予算の問題はDXコンサルティングでは解決することは難しいです。
むしろ、コンサルティングを利用することによって、より多額の費用を支払う必要があります。
しかしながら、予算の問題は企業の経営体力という問題以前に「DXに予算を割いていない」という企業の考え方・体質が反映されているケースも多いです。
意識の問題であるのかどうかは見つめなおすべきかもしれません。
部署ごとの連携不足・経営体質が追い付いていない
社内に複数の組織・部署がある場合、その中の一部でDX推進をしても、他との連携が取れていない場合、DXが単なる業務の効率化に終わってしまうことや、かえって他の部署の手間を増やしてしまうことにもつながります。
DXは他の部署とも連携がとれた経営体質をつくりながら進めていくことが重要です。
このような課題であれば、DXコンサルティングは、会社の組織構造をよく分析し、最適な進め方を提案してくれる可能性はあります。
DX推進の手順が分からない
DX推進の手順が分からない場合にもコンサルタントからの助言や指導をもらうことでロードマップを可視化できる可能性が高くなります。
ただし、推進の手順が分からないという理由だけでコンサルティングを利用することはおすすめできず、社内でロードマップを作成したうえで相談し、自分たちが作成したロードマップに対して助言と指導をもらう流れをとったほうが健全です。
コンサルティング会社は基本的に業界に対しては精通しているものの、あなたの会社のことを何も知らない状態で来ます。
自社の状態をよく知った人たちの考えをまとめたうえで、客観的な視点でアドバイスをもらうようにしたほうが建設的なDX推進が期待できます。
DX人材の不足
DXに必要な知識、特に技術関連の知識をもった人材が社内にいない場合はコンサルティング会社を頼るのは効果的です。
コンサルタント当人が会社で必要としていたDX人材であるケースもあれば、コンサルタントが課題解決に相応しいDX人材の人脈をもっていることがほとんどです。
異分野の人材を自分たちの目で見極めるのは難しく、専門的に扱っている人たちに人選までお願いできるのであれば高確率でいい人材に巡り合えます。
コンサルティングを依頼した方がいいケース3選
DX推進における課題を先ほどの項目で紹介しましたが、その多くはコンサルティングを依頼することで解決きます。
ただし、コンサルティングを依頼するには多額の費用がかかることも事実です。
費用形態としては、
◆顧問契約の場合で1ヶ月につき数十万円ほど
◆時間契約の場合で1時間に付き数千円~十万円ほど
コンサルティング会社によって料金変動が大きいのが特徴です。
成果報酬でコンサルティング料金を設定していることもあります。
これほどのコストがかかることを考えると、コンサルティングを依頼するときにはリターンが見込めるものでないと意味がなくなってしまいます。
ここでは、特にコンサルティングを依頼することで大きな効果が期待できるものを3つ紹介します。
DX人材が社内にいない場合
DX推進の課題にも頻繁に取りあげられる「DX人材が社内にいない」という課題。
特に、システム開発などの技術関連人材を指して使うことが多いです。
コア業務を他に抱えている企業ではIT分野に詳しい人材が自社にいないことの方が普通でしょう。
ただ、この問題が浮上するということは、企業のDX推進のロードマップがある程度見えているということも多いです。
人材・技術が揃えば問題が解決され、その先に進めると確信がある場合にはコンサルティング会社に依頼し、自社に相応しい人材を紹介してもらったり、アドバイスや指導を受けたりすることは効果的な投資と言えるでしょう。
事業規模が大きく、組織が複雑化している場合
事業規模が大きく、会社組織が複雑な場合も、コンサルティングを利用することで大きな成果を得られる可能性が高くなります。
組織が複雑化している場合、社内のどの部分から手を付ければいいのか、また、DX推進をしていくことによって他の部署にはどのような影響が出てくるのかを総合的に判断する必要があります。
コンサルタントであれば、複雑化した組織の中でのDX推進の経験も蓄積されていることが多く、自分たちが見えていなかった他の問題点にも気が付けるかもしれません。
一般的に、事業規模が大きく、組織が複雑化している企業の方が、コンサルティングを利用したときに得られる成果は大きいと言われていますので、検討してもいいでしょう。
自社で蓄積しているデータが活用できていない
ビッグデータの活用はDXの最重要テーマの一つです。
DXは本来、新しい価値を創造し、その価値を顧客に届けて企業の競争優位性を確保することで収益を高めていくことを目的とします。
そのため、単なる社内業務のデジタル化だけにとどまっている場合にはDX本来のテーマとは少しかけ離れてしまいます。
社内に蓄積したデータを解析するには、顧客層が多ければ多いほど困難になります。
・顧客の趣向
・問い合わせや購入の時間帯
・性別や年齢
・居住地
などの情報をいかに効率よく集めて分析していくかによって、プロダクトアウトまでの時間も短縮されます。
限られた時間を有効に活用し、他社よりも競争優位性を保つためにはデータ分析は欠かすことができません。
多くの企業は、情報を集めるところで止まっており、そこから先のステージに移行することができていないのが現状です。
社内に蓄積されたデータをどのように活用していくのが効果的なのか、他の企業の事例を豊富に持っているコンサルタントに相談することは有効な解決策です。
DXコンサルタントの役割は?
DXコンサルタントの役割には様々なタイプがあり、大きく以下に分類されます。
◆戦略立案型
◆総合型
戦略立案型は、会社のビジネスモデルの変革をサポートし、DXを活用した売上・収益の拡大方法などについてのアドバイスを行います。
総合型はITシステムの導入・システム開発のサポートや人材育成、データの活用方法のアドバイスなど経営戦略を支える根幹をサポートするのが役割です。
経営戦略立案タイプ
経営戦略をもとに、どのようなデジタルツールを導入するべきかを検討し、導入後のツールの使い方を指導し、業務内容の変化を予測します。
すでに行っている事業についての業務改革だけでなく、新規ビジネスの立ち上げも提案します。
ITシステム導入・サポート型
ITシステムの導入と新システムに移行するにあたっての業務内容をメインでサポートします。
ITシステムを新しく導入する場合、開発企業にツールの使い方の説明を依頼すると、開発者が思う活用方法の説明になりがちです。
その点、コンサルティング会社に依頼した場合、企業に最も適したユースケースを考えてもらえるメリットがあります。
ツール利用者のレベルに応じたユースケースを作成してもらうことで、ITツールに詳しくない人材であってもスムーズに使いこなすことが期待できます。
導入するシステムが決まっていても実装に手間がかかっている場合にもシステム導入をサポートしてくれるコンサルティング会社は心強い味方になってくれます。
DX人材育成型
DX戦略を継続して実行していくためには、DX人材を確保することが必要です。
DXコンサルタントは、社内の人材育成をサポートしてくれます。
社内で導入したツールの活用の仕方はもちろん、ITリテラシーを高めるための学習方法なども伝授します。
社内に必要なデジタル人材がどのような人物なのかを明確にしてくれるので、今後の採用活動における求める人物像も明確になります。
データ活用型
蓄積されたデータも活用することができなければ意味がありません。
データを活用してマーケティング活動や商品開発に活かすことができている企業は意外と少ないものです。
DXコンサルタントは、蓄積されたデータの活用の仕方や、その他必要な情報収集ができるツールの紹介・導入の策定も行います。
DXコンサルティングを依頼するメリット
DXコンサルティングを依頼するメリットには、
◆客観的で合理的な意見が得られる
◆ノウハウを吸収できる
◆無駄なくDXが推進できる
ことが挙げられます。
客観的で合理的な意見が得られる
自社だけで企画を推進しようとすると、経済合理性を深く考えず、
「業務が楽になる」
「作業時間が短縮される」
「目先の費用を抑えられるようにする」
などを優先して考えがちです。
DXコンサルタントは、企業にとっての最適解を探すことを優先してDX推進を提案します。
コンサルティングを依頼することは、客観的で経済的に合理的な方法で提案をしてくれることがメリットです。
ノウハウを吸収できる
コンサルティング会社は他にも多くの企業のDX推進の事例を持っています。
同じ業種のDXの成功事例を共有してもらえることは、市場での優位性を保っていくうえでは重要です。
まったく同じような推進ができなかったとしても、どういうビジネスモデルなのかを知ることで、競合を避けることにも活用できます。
無駄なくDXが推進できる
DX推進には多くの工程があります。
リソースが何もないところからスタートする場合には、社内の人材育成からがスタートです。
この場合、人材育成を始め、人材が育つまではDX推進ができないことになります。
コンサルティングを依頼することで、この人材育成のプロセスを省略することが可能です。
DXが進むにつれて社員に求められるスキルの幅や水準は高くなりますが、どのような技術が必要なのかも助言してもらえるので、実践的で役立つスキルに絞った育成ができるため、効率的にDXを推進することができます。
DXコンサルティングを依頼するデメリット
企業のDX推進の背中を押してサポートしてくれるコンサルティングですが、依頼する時のデメリットもあります。
ビジネスモデルの理解不足
コンサルティング企業はコンサル業界ですが、依頼を出す企業には、「飲食」「製造」「観光」「IT」など様々です。
同じ業界であっても企業によってはビジネスモデルが異なっているケースも珍しくありません。
コンサルタントが依頼主である企業のビジネスモデルの理解度は成功の可否に関わります。
コンサルティング会社には業種に詳しい人材も豊富にいますが、経験豊富な担当者に巡り合えるとは限りません。
戦略が自社のモデルとの整合性が取れない場合、現場の混乱を招くこともあれば、DX推進に余計に多くの時間がかかることもあります。
自社や業界の理解が不十分であるコンサルティング会社への依頼は避けた方がいいでしょう。
費用が高騰する可能性
DX戦略を実行するのにコンサルティングの必要性を判断しても、その費用の高さに驚かれた担当者の方もいるのではないでしょうか。
経験豊富なコンサルタントを味方につけられるのは大きなメリットですが、費用が高額なのはデメリットです。
また、一見報酬が低く見えるコンサルティングの場合、
◆人材育成
◆ITシステムの実装サポート
などは別オプションとして設定されており、総合費用が高騰するケースもあります。
コンサルティングを依頼する場合には、サポートしてほしい内容を明確にしておき、どこまでの費用がかかるのか確認の必要があります。
効果測定が曖昧になりがち
効果測定が曖昧になりがちなこともデメリットの一つです。
組織内の変革によって具体的な成果として表れるのは数年先かもしれません。
業務の簡略化を目的としたツールの導入であれば、すぐに業務担当者の感想がフィードバックとして得られますが、顧客を巻き込んだDX戦略を推進している場合には効果測定までに時間がかかることが普通です。
時間がかかればかかるほど、その効果測定を最後まで追いかけないこともあり得ます。
このような曖昧な効果測定を避けるためにも、事前に
「いつまでに」
「どのような成果」
を求めるのか、目標を明確にしておくことが必要です。
DXコンサルティングを依頼するときの注意点
DXコンサルティングを依頼するときの注意点を解説していきます。
ビジョンは自分たちが主役であること
コンサルティング会社の役割は、企業のビジネスの「サポート」をすることであって、その企業のビジョンを決めることではありません。
コンサルティング会社の社員よりも自社社員の方が内部事情には詳しいはずです。
目標設定はコンサルティングを依頼する前に明確にしておきましょう。
コンサルタントの意見を丸のみにしない
コンサルタントの意見は「いかにもプロっぽい」模範解答のようなものが多い場合があります。
自社のレベルを大きく超えたDX推進は、ツールもデータも活用しきれずに費用だけが高くなるという失敗にもつながります。
コンサルタントがいなくなった後も、そのシステムや仕組は機能し続けるのかを問い続けてみて下さい。
コンサルタントの意見に少しでも疑問が生じたら、曖昧なままにせずに具体的な回答を得られるまで質問を続けましょう。
社内全体にDX推進の意識を持たせる
社内の一部の人たちだけがDX推進の意識をもっていても、社内に浸透していなければ失敗の可能性を高くしてしまいます。
社内全体の意識が変わっていない場合、以前の業務体系や仕事の仕方に徐々に戻っていくことや、便利で時間の短縮にもつながるはずの仕組みが面倒に感じることもあります。
トップダウン形式で一定のけん引力は必要ですが、その後は社員各自の意識でDXを推進できる状態を目指しましょう。
費用の枠を捉えておく
DXを進めていくことで追加費用が発生するケースが多々あります。
コンサルティング会社の支払い体系を事前に確認しておくことが必要です。
顧問契約・時間契約・報酬契約などコンサルティング会社によって契約の種類は多岐にわたります。
どこまでがコンサルティング範囲内のサービスとなるのか確認しておかないと、予算を大きく超える費用となることも珍しくありません。
ITシステムの導入と人材育成は別々に費用がかかることになっていたなど、トラブルを避けるためにもコンサルティングを依頼する前に費用の枠組みを確認しておくことをおすすめします。
組織構造によってコンサルティング効果が異なる
一般的に、企業コンサルティングは、
・自社の組織構造が複雑であればあるほど
・事業規模が大きければ大きいほど
効果を得られやすいと言われています。
同業他社が企業コンサルティングをお願いしてよい効果を得られたとして、まったく同じ内容の企業コンサルティングを受けたとしても、費用対効果は見劣りするかもしれません。
DXコンサルティング会社の選び方
DXコンサルティング会社を選ぶときには、「得意分野」や「実績」を調べておくことが望ましいです。
コンサルティング会社を選ぶときに注意するポイントを5つ紹介します。
コンサルティング会社の得意分野を知る
コンサルティング会社によって得意分野が偏っているケースがあります。
得意分野が何かを調べることで自社との相性を事前に知ることができるでしょう。
代表的な分野としては、次のようなものがあります。
◆経営戦略の立案
◆既存のシステムに代わるITツールの導入と業務のデジタル化
◆ITツールを駆使できる人材の育成
◆データを活用したマーケティング方法のコンサルティング
得意分野を知ることでミスマッチを防ぐことができます。
保有資格などを確認する
DXコンサルティングを行うのに必要な資格はありません。
しかし、資格を取得していればその分野についての一定の知識を担保することができます。
名刺などに保有している資格が記載しているコンサルタントも多いです。
資格が決め手になってコンサルティングを依頼することは少ないと思いますが、確認してみるのもいいでしょう。
コンサルティング会社の実績を調べる
コンサルティング会社の実績を調べることも重要です。
特に、コンサルティングを依頼している企業規模や業界を調べるのが望ましいです。
コンサルティングを担当した業種や分野に偏りがないのかどうかなども調べてみましょう。
一般的にはホームページを利用することになりますが、掲載されていない場合もありますので、直接問い合わせをするケースが確かです。
実績数が多くても、自社にマッチしないコンサル会社に依頼してしまうと軌道に乗せられないことがありますので、注意したいポイントになります。
費用や相場と比較する
費用や相場を事前に比較しておくことも重要です。
相場に対して、極端に費用が安い場合や高い場合には、その理由についても確認をしましょう。
費用はコンサル企業によって振れ幅が大きいです。
この記事内でも上述した通りです。
◆顧問契約の場合で1ヶ月につき数十万円ほど
◆時間契約の場合で1時間に付き数千円~十万円ほど
◆成果報酬の場合は成果による
実際にかかる費用はコンサル会社と直接やり取りをしないと分からない場合も多いですが、その場で決定するのではなく、いろいろなコンサル企業と比較検討してから決めることをおすすめします。
コンサルティング手順や方法が自社に相応しいか確認する
一般的なコンサルティングは
①ビジョンを決める
②不足しているもの(人材・情報など)を集める
③企画と計画を練る
④企画を実行する
⑤結果の評価と改善をする
の順番に進んでいきます。
①のビジョンは自社の中でしっかりと固めて、このビジョンがDX推進によって実現可能かどうかを確認することが望ましいです。
最終的には、やや直感の要素も混ざってきますが話し合いながら自分たちに合うコンサルティング会社・コンサルタントかどうかを総合して依頼するかどうかを決定しましょう。
まとめ
メリットの多いDXコンサルティングですが、注意すべき点もいくつかありました。
・費用
・自社に合うコンサルティングなりそうか
・コンサルティング会社の実績や得意分野はどうか
・自分たちのビジョンは明確になっているか
など、これらを気にしながらDX推進のためにコンサルティングを依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。
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