コモディティではダメ!美容業界から学ぶ過当競争の生き残り方
「美容室の種類」
「美容業界の過当競争の実態」
「コモディティとならない美容室の戦略」
美容業界の競争は特に厳しいことで有名です。店舗の数が多く、お客さんを近隣の美容室で取り合っているような状況です。
しかし、あなたにも行きつけの美容室があるのではないでしょうか。
なぜ、そこを行きつけとして選んだのでしょうか。
慣れてしまったからという理由の方もいると思いますが、一番初めに訪れたときはあるはずです。
他の美容室と比較したことがある方であれば、そのサービスを主体的に選んだ理由がきっとどこかにあります。
美容室だけでなく、どんな業種であっても、競合は存在します。
競合が多く、苦戦しているところもあれば、競合が多くても順調に業績を上げているところもありますよね。
業界や競合を最初に知っておくことはとても大切なことです。
今回は美容室を例にとって考えていきます。
目次
美容室の種類
美容室にはどのような種類があるのでしょうか。
同じ業種であるからと言って、全てが競合相手であるとは限りません。
美容業界だけでなく、全ての業界において競合に成り得るところと、そうでないところとに分け、適切な施策をすることが重要です。
低価格美容室
業界の売り上げの半分以上を占めているのがこの種類の美容室です。
低価格を売りにしており、1000円カットなども有名です。
パーマやカラーなど、普通は高いと思われるものも安く提供できる強さをもっています。
確実に安定して稼いでいきたいと思っている美容師の方にもおすすめである場合が多く、安定した企業運営の形をとっているので、福利厚生や社会保険なども完備されています。
ターゲットとなる顧客は高齢者やサラリーマン、ファミリー層で、最新のファッションや流行を求めている若い男性や女性は含まれません。
小・中美容室
個人事業の美容室から中小企業も含まれます。
美容師の人数はおよそ3名~10名ほどで、それぞれに役職などがあります。
店舗数が多く、過当競争の代表格になっています。
個人経営の場合には、マンツーマンで技術指導を行ってもらえるところも多いようですが、美容師の人数が多くなると、全体でスキル研修を行うところもあります。
美容師の待遇としては歩合制を導入しているところもあり、休日やそのほかの福利厚生にも差があります。
美容室も売り上げが厳しいところが多く、求める条件の全てを備えているところはなかなかありません。
一方で、最新の流行やファッションを追い求める客層が多いため、そのような環境で自身のセンスや技術を磨きたいという美容師が多くいます。
高級美容室
「芸能人も利用している」というようなフレーズも飛び交うほどの最高級サロンもあります。
カット料金だけで4000円を超えるところも一般化しつつあります。
美容業界に限らず、価格の差による技術の差は大きいのでしょうか。
他の業種であっても価格設定のヒントになりそうです。
もちろん、料金が高い方が技術力は高いでしょう。
しかし、「お客様全員がその技術の高さを求めているか?」の問いの答えはNoです。
お客様は技術以外のものを買っているケースもあります。
お店の雰囲気やブランドなどの付加価値がそうです。
その付加価値を何にするかが、差別化のポイントになります。
求人倍率も高くなりますが、技術以外にも多くのことが学べる環境の美容室です。
美容業界の過当競争の実態
美容業界は過当競争であると言われますが、実際にはどうなのでしょうか。
2020年以降の指標では、カット代(散髪代)の市場は伸びていながらも、パーマ代の市場は減少傾向にあるようです。
コロナ禍になったこともあり、外出の自粛で美容室へ行く回数を減らしている人たちも増えました。
自宅でお手頃に美容室の仕上がりを体験できるグッズの流行の逆風もあり、理髪にかける費用も以前よりは格段に抑えられている傾向です。
美容師の数と店舗数
比較的簡単に参入ができる美容業界は、国内の店舗だけでも令和元年には25万店舗を超えています。
これは過去最高記録であり、いかに美容業界が過当競争であるかが分かっていただけると思います。
倒産と新規出店を比べても新規出店の方が多い美容室業界では他との差別化は最も大きなテーマの一つです。
店舗数に対して、国内の美容師の数はおよそ55万人弱と言われていますから、個人経営として、一人で営業している美容室も相当数あることが伺えます。
このような業界ですから、参入することは簡単でも、参入した後に売上をどう作るかに行き詰まるのも早い業界なのです。
美容室に限らず、ご自身の専門分野であっても、同じような状況は思い当たるのではないでしょうか。
どのようにして「選んでいただくか」を考え抜くことが求められています。
2022年度は有効求人倍率が1.23
美容室の店舗数に対して、美容師の数も不足気味なのも気になります。
労働力が充足していない状態ですので、いわゆる人手不足に陥りやすい業界でもあるのです。
美容院のおよそ8割は人手不足に見舞われているというデータがあります。
人手不足であるにも関わらずに離職率が高いということも問題です。
美容師の給与計算は、時給制を導入しているところもありますが、美容院によっては歩合制を採用しているところもあります。
歩合制を採用している場合、お得意のお客様から指名を受けることによって給与が変動します。
同じ美容室で勤務していても、一部のトップ美容師と、指名を取ることができない美容師の間では、年収にも大きな差が生まれてしますのです。
また、美容師は簡単になれる職業ではありません。
求人倍率こそ今では低いですが、美容師になるためには国家資格が必要です。
なるのが大変であるにも関わらず、労働環境が厳しいとなれば、離職率も高いうえに、今後はそもそも美容師を志す人が少なくなるかもしれません。
美容業界は、客足の減少と人手不足問題に直面しています。
美容技術での差別化をするべきか?
ビジネス分野が美容室でなくても、同じような問題に直面したことはあるでしょう。
競合他社からお客様を離反させ、自分たちを選んでもらうためには差別化が必要です。
もっとも顕著な例は価格です。
同じサービスであれば価格が安い方を選びます。
技術の高さで差別化をすることもできます。
同じ価格であれば技術が高い方を選ぶでしょう。
実際に差別化を図っている多くの美容室では技術面での差別化は敢えてしないこともあるようです。
全ての美容室ではないにしても、お客様との接し方をはじめとする「体験」を提供する形に注目している美容室があります。
コモディティとならない美容室の戦略
美容業界であれば、最もありふれた商品(コモディティ)となってしまいがちなのは、小・中の美容室です。
コモディティは、大多数の中の一つです。
簡単に言ってしまえば、交換可能なものが他にもたくさんある状態のことを指しています。
この状態ではお客様から選んでいただくのは難しいです。
一人の営業マンが、お客様が集まっている美容室の共通点を分析して、その付加価値について話してくれました。
接客力・対話の価値
美容室のオーナーの態度はそのまま美容師の接客力にも表れます。
ワンマンなオーナーのもとで働く美容師には閉塞感が漂い、お客様を明るく元気にすることは難しくなる一方で、理解のある経営者の運営する美容室は明るくポップで、人を惹きつけるようなふんいきを自然と出せていると言います。
お客様と美容師のコミュニケーションも大切です。
対話の中でお客様の名前を入れることで特別感を演出するなど、細かいところにも気を付けた美容室もあるようです。
美容師に要求される技術は、通常の美容師としての技術ならではのもの以外に、対人スキルも要求されます。
緊張と緩和の価値
流行している美容室では、同じ職場のビジネスマンが利用しているところもあるようです。
一般的なお客様が利用する美容室とは少し違うのかもしれません。
その美容室のオーナーは一つ一つの行動に無駄がなく、予約時間には必ず開始されるということで評判のようです。
多忙を極めるビジネスマンにとって時間厳守であることは心強いです。
「時間を守る」という当たり前のことのように思われることでも、つい忙しくて予定時間より遅くなり、お客様を待たせてしまうことがある美容室もあります。
当たり前のことを当たり前のように守るだけでも獲得できる顧客層は広がるのかもしれません。
また、施術時間中は真剣で、緊張感が漂う雰囲気がありつつも、終了後の一瞬の緩和も評判だそうです。
緩急をつけた接客対応からも学べることは多そうです。
体験の価値
美容室には何を求めに行くのでしょうか。
もちろん、髪を整えるためです。
しかし、それは当然として、それ以外のお気に入りの美容師さんとの会話を楽しみにして来店するお客様がいることも確かです。
お客様の中には単に施術をしてもらいに行くという感覚ではなく、その時間そのものを楽しみたいと考えているお客様もいるようです。
今では美容室でも、フードサービス、ドリンクサービスや本棚の整備などが一般化しされつつありますが、美容室という空間で何かの体験を求めている人もいます。
昨今、急速に広まっているオンラインショッピングではなかなかできないことです。
まとめ:コモディティとならないための付加価値
多くありふれた商品の一つとならないような強みを見つけることは市場で生き残るために必要不可欠です。
今回は美容室の例でしたが、その差別化の一つになるのはコミュニケーション能力です。
誰もが持っていそうで、実は持っていないこのスキルは、どの業界で仕事をしていくにしても必要な能力なのです。
専門分野特有の技術力を高めることは大切ですが、お客様の心をつかめるような話し方、話の聞き方を練習することも売上の貢献になるかもしれません。
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