生成AIの活用状況は?帝国データバンクの資料から読み取る企業の生成AIへの姿勢
この記事では、帝国データバンクの調査資料から、企業が生成AIにどのように取り組んでいるか、その姿勢を紐解きます。
生成AIは近年、業務の効率化や新しい価値の創出に役立つとされ注目されていますが、具体的な活用状況や導入の課題を知ることも重要です。
企業が生成AIをどのように評価し、どの分野で活用を進めているのか、また今後の展望やリスクへの意識も含めたデータを紹介しますので参考にしてください。
目次
生成AIの活用状況
株式会社帝国データバンクの調査によると、生成AIの導入状況は企業によってさまざまです。
2024年6月14日から7月5日にかけて、4,705社を対象とした調査では、業務で生成AIを「活用している」と答えた企業は17.3%にとどまる一方、「活用を検討中」と回答した企業は26.8%に達しました。
一方で、「活用の予定がない」とする企業も48.4%と多く、生成AIの活用にはまだ慎重な姿勢を見せる企業も少なくありません。
人手不足が顕在化する中で、生成AIは業務効率化や新たなビジネス機会の創出に大きな期待が寄せられていますが、導入の進捗には個別の事情や業界の課題が影響していると考えられます。
(出典:帝国データバンク 生成AIの活用状況)
生成AIの活用効果は?
生成AIは多くの企業で業務効率化や新たな価値創出に寄与すると期待されています。
調査によれば、多くの企業が具体的な効果を実感していると言えるでしょう。
(出典:帝国データバンク 生成AIの活用効果)
「大いに効果あり」という回答は36.1%
生成AIの導入によって「大いに効果があった」とする企業は36.1%にのぼりました。
これらの企業では、AIの活用による生産性の向上や業務の迅速化、新しいアイデアの創出が顕著に見られるといいます。
特に、文章生成やデータ分析のスピードが劇的に向上したことで、業務の効率化が可能になった例が多いです。
これらの効果は業界を問わず幅広く見られ、生成AIの有用性を裏付ける結果となっています。
「やや効果あり」という回答は50.6%
「やや効果あり」と回答した企業は50.6%と多数派を占めています。
生成AIの導入は一定の成果を見せつつも、現場に完全には馴染んでいないケースが多いことが背景に。
多くの企業では部分的な活用に留まっており、さらなるトレーニングや技術の向上が必要とされています。
それでも、具体的な業務の一部がスムーズになることで、人手不足の解消や新たな業務領域の開拓など、一定の効果を実感している様子がうかがえます。
「どちらとも言えない」という回答は11.9%
一方で、11.9%の企業は「どちらとも言えない」と回答しています。
これは生成AIを導入してからの時間が短い場合や、効果を見極める段階にあるケースが含まれます。
導入コストや効果検証の難しさから、思ったような結果を得られず様子見となっていることも要因と考えられます。
これからの活用次第で評価が変わる可能性があり、慎重なスタンスを取る企業も多いようです。
生成AIの活用の用途は?
生成AIは多岐にわたる業務で利用されています。
情報収集や文章作成から、企画支援まで幅広い用途で活用されているようです。
(出典:帝国データバンク 生成AIの活用用途)
情報収集(59.9%)
情報収集に生成AIを活用する企業が最も多く、59.9%の企業が利用していると回答しています。
インターネット上の膨大なデータを素早く整理し、関連情報を収集することで、業務効率を大幅に向上させる事例が数多く報告されています。
これにより、社員が他の業務に時間を割く余裕が生まれ、企業全体のパフォーマンス向上にも貢献していると考えられます。
文章の要約・校正(53.9%)
文章の要約や校正に生成AIを活用している企業は53.9%を占めています。
社内文書や報告書の作成、校正業務の負担軽減に寄与することで、効率的な業務運営が可能になりました。
特に、定型文書や複雑な文章の整理を短時間で行える点が評価されています。
社員の負担軽減だけでなく、質の高い文章作成も実現されています。
企画立案時のアイデア出し(53.8%)
生成AIを使ったアイデア出しも多く、53.8%の企業がこの用途での利用を報告しています。ブレインストーミングや新しい企画の発案時に、AIが提案するアイデアや新しい視点が役立つとされます。
多様な意見をすばやく収集でき、従来の枠にとらわれない発想が生まれる場面も増えており、企画業務全体の質が向上しているとのことです。
コピーライティング・文章作成(39.7%)
広告や広報文、マーケティング資料の作成に生成AIを用いる企業は39.7%です。
創造的な文章やキャッチコピーの生成にAIが活用されることで、迅速な対応が求められる場面でもスピーディに結果を出せるようになりました。
また、人間のアイデアを補完する形で活用され、チーム全体の生産性を向上させる効果も期待されています。
プレゼン資料作成(37.8%)
生成AIを使ったプレゼン資料作成は37.8%の企業で利用されています。
スライドの構成を提案したり、視覚的に魅力的なデザインを自動生成する機能は、資料作成にかかる時間を削減し、説得力ある内容を短期間で用意する助けとなります。
また、既存のデータや情報をもとに効果的なビジュアル化を行い、視聴者にインパクトを与えることも可能です。
データの集計・分析(29.1%)
企業の業務でデータの集計や分析に生成AIを活用しているのは29.1%です。
大量のデータを瞬時に処理し、複雑な分析を迅速に行うことで、経営判断をサポートする能力を持ちます。
特にリアルタイムでのデータ分析や市場の動向を即座に捉える力があり、ビジネス環境の変化に対応するスピードを高めています。
企業戦略の強化や業績の向上が期待できそうです。
コード生成などプログラミング支援(25.0%)
プログラミング支援として生成AIを利用する企業は25.0%に上ります。
自動的にコードを生成したり、開発者の作業を効率化することで、エンジニアの負担を軽減し、プロジェクトの進行をスムーズにする効果が挙げられます。
特に、反復作業の自動化やコーディングエラーの検出と修正の補助により、品質向上を実現し、時間の節約にもつながっています。
翻訳(24.1%)
24.1%の企業が翻訳業務に生成AIを活用しています。
異なる言語間での円滑なコミュニケーションが求められる場面で、正確かつ迅速な翻訳が提供されることは、国際的なビジネスの支援につながります。
さらに、専門用語やニュアンスを反映させた高品質な翻訳も可能で、海外市場での情報発信のスピードを格段に向上させる要素として評価されています。
マーケティングや広告の最適化(23.5%)
生成AIをマーケティングや広告の最適化に利用する企業は23.5%です。
ターゲットに合わせた広告文やキャンペーン内容をAIが分析し、効果的なマーケティング施策を提案することが主な役割です。
これにより、費用対効果の高い施策を打ち出すことが可能となり、マーケティング活動全体の効率化が図られます。
製品開発やデザインの支援(23.4%)
製品開発やデザイン支援として生成AIを活用する企業も23.4%にのぼります。
新製品のアイデアを提案したり、デザインのプロトタイプを生成することで、開発スピードの向上を目指す取り組みが見られます。
また、顧客のニーズを的確に捉えた製品設計や改善策を提案することで、競争力のある商品開発を支援しています。
画像・映像の生成や編集(20.7%)
画像や映像の生成・編集に生成AIを利用する企業は20.7%です。
短時間で高度な映像コンテンツを制作したり、編集作業を効率化することが可能となります。
動画広告やマーケティング資料の制作において、AIの力が企業の創造性をサポート。
従来の作業を大幅に簡略化することで、制作スピードと品質向上が実現されています。
カスタマーサポート業務(12.6%)
12.6%の企業がカスタマーサポートに生成AIを導入し、顧客対応の効率化を進めています。チャットボットによる24時間対応や、問い合わせ内容の自動分析により、迅速なサポートを提供しています。
顧客満足度の向上に貢献する一方で、社員がより複雑な業務に専念できる環境作りにもつながっています。
企業の推進体制は?
生成AI導入の際、企業の推進体制にはさまざまなアプローチが見られます。
内製化を進める企業も多く、その割合が高いことが特徴です。
(出典:帝国データバンク 推進体制)
「すべ内製」が57.6%
生成AIを「すべて内製」していると回答した企業は57.6%に達します。
自社での内製化を推進する背景には、外部依存を避け、独自のニーズに合わせたシステムや運用を構築することで、競争力を高める狙いがあります。
また、内製化によって社内のAIリテラシーが向上し、柔軟な対応が可能になることがメリットとされています。
これにより、迅速な対応が必要な環境下でも、生成AIを有効活用できる体制が整うのです。
「ほぼ内製で一部を外注している」が15.3%
「ほぼ内製で一部を外注している」と答えた企業は15.3%です。
この体制は、自社での内製を基本としながら、特定分野や技術において外部の力を借りることで、効率的な運用を図るケースが多いです。
専門知識や技術が不足している場合でも、外部のサポートを受けることで、内製化と外部リソースの融合を図り、最適な運用を目指しています。
柔軟な推進体制が求められる場面で特に有効な手法といえるでしょう。
「ほぼ外注している」が6.9%
生成AIの推進において「ほぼ外注している」と回答した企業は6.9%です。
このケースでは、社内のリソースや専門性の不足を補うため、外部パートナーの技術やノウハウを活用することが主な特徴。
外部リソースを活用することで、スピーディに生成AIの導入を進められる反面、自社独自の運用が難しくなる課題も見られます。
外部との連携による成果を重視するため、プロジェクト管理やコスト調整が重要になるでしょう。
指針・ガイドライン策定状況は?
企業が生成AIを活用する中で、指針やガイドラインの策定についても注目されています。前向きな姿勢を示す企業も多いです。
(出典:帝国データバンク 指針・ガイドライン策定状況)
「策定に前向き」が52.5%
生成AIの指針やガイドライン策定に「前向き」と答えた企業は52.5%を占めています。
これらの企業では、生成AIの利用における倫理的な課題や情報セキュリティへの配慮を重要視しており、適切な利用を進めるための明確な基準を設けることに力を入れています。また、内部規則やルールを整備することで、社員間での理解を深め、より一貫性のある活用を目指す姿勢が見られます。
企業内外での信頼を高めるためにも、この取り組みは大きな役割を果たすでしょう。
「策定していない」が43.5%
一方で、43.5%の企業は指針やガイドラインを「策定していない」と回答しました。
この背景には、生成AIの活用がまだ模索段階にある場合や、業務への導入が十分に進んでいないケースが含まれると考えられます。
規模の大きい企業であっても、実際の業務との整合性やリスク管理に課題を抱えており、指針の必要性を感じながらも慎重に検討を重ねている状況です。
これからの導入が進むにつれ、策定の動きが広がることが期待されます。
生成AI活用上の懸念・課題は?
生成AIの活用が進む一方で、企業は多くの課題や懸念に直面しています。
特に人材や法的な問題に対する対応が求められています。
(出典:帝国データバンク 生成AI活用上の 懸念・課題)
「AI運用の人材・ノウハウ不足」が54.1%
AIの運用に必要な人材やノウハウ不足を課題として挙げる企業が54.1%と最も多く、この分野に対する関心の高さがうかがえます。
生成AIを効果的に活用するためには、専門知識を有する人材の育成や、新たな技術を取り入れるための組織体制が欠かせません。
この不足はAI導入のスピードを制約する要因ともなっており、企業は人材確保と技術の習得に力を入れる必要があります。
「情報の正確性」が41.1%
生成AIが提供する情報の正確性に対して懸念を抱く企業は41.1%にのぼります。
AIが生成するデータや回答が不正確な場合、意思決定に悪影響を及ぼす可能性があり、誤情報の発信や業務の混乱を招くリスクも高まります。
そのため、AIによる情報の信頼性を高めるためのチェック体制や、補完する仕組みを整備することが求められるでしょう。
「生成AIを活用すべき業務が不明確」が39.1%
生成AIをどの業務で活用すべきかが不明確な企業は39.1%です。
AIが多岐にわたる業務に適用可能である一方で、具体的な導入分野やその優先度を明確にすることが課題となっています。
企業によっては、適切な業務にフォーカスすることで業務効率化を進めることが期待されますが、全体的な導入戦略を欠くと効果が薄れる可能性もあります。
「トラブル時の責任所在など社内的なルール整備」が36.6%
トラブル時の責任所在を含む社内ルールの整備を懸念する企業は36.6%を占めています。生成AIの運用では、問題が生じた際の責任の所在が曖昧になることが多く、業務トラブルを防ぐためには明確なルール策定が重要です。
適切な対応策を設けることで、企業内の混乱を最小限に抑え、スムーズな運用を図ることができます。
「著作権・プライバシー保護などの法的な規制」が30.6%
生成AIに関する著作権やプライバシー保護など、法的な規制を課題とする企業は30.6%です。
特にAIが生成したコンテンツに関する権利やプライバシーに関わる問題が注目されており、法的なリスクを回避するための対応が求められています。
この分野では今後の法整備が重要であり、企業が適切に対処できるよう支援が必要です。
「情報漏洩などセキュリティ不安」が29.4%
情報漏洩やセキュリティに対する不安を挙げる企業は29.4%に上ります。
AIの活用によって情報が外部に漏れるリスクが懸念されるため、セキュリティ対策の強化が必須。
特に機密情報や個人情報の取り扱いには細心の注意が必要であり、企業は適切な管理体制を構築することが重要です。
「システム導入にかかる資金不足」が21.5%
生成AIのシステム導入に必要な資金が不足していることを課題とする企業は21.5%です。初期導入コストが高額なため、特に中小企業にとっては負担となりやすい現状が見られます。
「人間との協調」が14.6%
生成AIと人間の協調が課題とする企業は14.6%です。
AIがもたらす業務効率化の一方で、既存の業務プロセスとの適合性や、AIが人間に取って代わるという懸念が挙がります。
人間の役割をどのように位置づけるかが、組織の今後を左右する重要なポイントとされています。
「生成AIの必要を感じない」が12.5%
12.5%の企業は生成AIの必要性を感じていません。
この背景には、現在の業務で十分な成果を上げている場合や、技術の恩恵を見出しにくいと感じている場合があるようです。
しかし、業界全体でAI活用が進む中、取り残されないための視点も求められています。
「ユーザーへの説明責任」が11.2%
生成AIに関するユーザーへの説明責任を課題とする企業は11.2%です。
AIが生成した内容や判断の根拠を説明できるかどうかが、信頼性を保つ鍵とされます。
特に消費者や取引先に対して透明性を持たせることが、企業イメージの向上につながります。
「懸念や課題はない」が1.8%
生成AIの活用において懸念や課題がないと回答した企業は1.8%にとどまります。
これらの企業では、導入が順調に進んでいるか、もしくは既に対策が整っていることが推測されます。
とはいえ、他企業が抱える課題への意識を持つことで、今後の対策が強化される可能性もあります。
まとめ:今回の調査対象企業は比較的AIリテラシーが高い企業の可能性も
今回の調査対象企業は、生成AIを積極的に活用または検討していることから、比較的AIリテラシーが高い企業が含まれている可能性があります。
これにより、先進的な活用例や課題意識が示されましたが、AI導入が遅れている企業へのサポートや知識の普及も今後の課題となるでしょう。
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