データ活用が失敗する理由!DXのデータ活用でやってはいけない目標設定とは?
データ駆動の時代に入り、多くの企業がデータを活用してビジネスの成果を上げようとしています。
しかし、業務をデジタル化しながら効率よく売上・利益につながりそうなデータを集めているにも関わらず、なぜかうまくいかないケースが少なくありません。
この記事では、データ活用が失敗する理由とDXのデータ活用でやってはいけない目標設定について解説していきます。
社内に眠る有益なデータを活用するためのヒントとして参考にしてください。
目次
DXとは?デジタル化とは違う?
DXの最終ゴールはデータの利活用であると言われることも多いですが、その多くが失敗に終わっているという現実があります。
DXとデジタル化の根本的な違いを知ることで、DX推進の方向性が正しいのかどうか、修正しながら取り組むことが重要です。
DXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビジネスやサービスをデジタル化し、変革や革新を促進する取り組みを指します。
この概念は、現代の企業や組織が直面する多くの課題やチャンスに応じて、IT技術やデジタルツールを活用して事業モデルや業務プロセスを最適化、変革するためのものです。
DXの目的は、顧客体験の向上、業務効率化、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまです。
デジタル技術を駆使して情報を即座に収集・分析し、それを基に迅速な意思決定やサービス提供が可能となります。
特に、クラウド、AI、IoT、ビッグデータといった先進技術を組み合わせることで、従来のビジネスでは考えられなかった新しい価値を生み出すことができます。
DXについての概要や取り組むべき理由などについては、以下の記事も参考にしてください。
「DXとは何?デジタル化の先にあるDXを詳しく解説」
デジタル化とは
デジタル化は、物理的、手動、またはアナログの情報やプロセスをデジタルフォーマットに変換することを指します。
たとえば、紙の書類をスキャンしてデジタルデータとして保存するのがデジタル化の一例です。
これにより、データのアクセス、共有、保存が簡単になり、効率的な業務遂行が期待されます。
しかし、デジタル化自体は単に情報の形式を変えるだけのもの。
それに対し、DXは、ビジネスモデルや組織文化そのものを変革することを意味します。
デジタル技術を活用して業務の効率化、新しい価値提供、または顧客体験の向上を目指すのがDXの目的となります。
したがって、デジタル化はDXの一部とも言えますが、DXが求められるのは単なる情報のデジタル変換以上の深い変革です。
デジタル化のステップを経て、組織全体の変革に取り組むことがDXの真の目的です。
この違いを理解することで、より効果的なデータ活用とデジタル戦略の策定ができるようになるでしょう。
DXやデータ活用で失敗する企業の特徴
データ活用はビジネスの成功要因として注目されています。
デジタル化の波に乗り、その効果を実感している企業がある一方で、失敗する企業も少なくありません。
なぜ一部の企業はDXを成功させ、一方で失敗する企業が存在するのでしょうか。
DXやデータ活用でつまずく企業の共通点や特徴を深掘りし、その落とし穴を回避するためのヒントになるかもしれません。
「DX化」は要注意
「DX」と「デジタル化」の違いで触れたように、DXの中にデジタル化というプロセスがあります。
実際に、DXの前段階として、多くの場合はデジタイゼーション、デジタライゼーションのプロセスを踏むことが一般的とされています。
しかし、DXの目的は変革であり、デジタル化に付随するその他の部分はすべてDXのための手段であることを忘れてはいけません。
「DX化」と「化」をつけた表現をする人たちの中には、ある状態に行きつけばDXは完結すると思っている人たちも多いです。
DXとは常に変革によって市場での競争優位性を確保する取り組みのことであって、何かをすれば終わりということではありません。
便宜的に使う場合は例外としても、「DX化」と表現してしまう場合はDXの本質を理解していない可能性が高いです。
まずは、「DXとは何か」を知ることからスタートしましょう。
データ分析の目的が曖昧
具体的な目的を持たずにデータ分析を始めると、どのデータを収集すればよいのか、どのように解析すれば有益な知見を得られるのかが不明確となり、結果として意味のない情報の集積や誤った方向性に進んでしまいます。
例えば、企業が売上向上を目指してデータ分析を始めたとします。
しかし、「どの商品が売れているのか」や「どの地域の顧客が最も購入しているのか」といった具体的な目的がなければ、方向性が見えず、適切なデータを収集・分析するのが難しくなるのは明らかです。
また、目的が曖昧なままデータ活用を推進すると、結果の解釈や活用方向がばらばらとなり、チーム間でのコミュニケーションが難しくなり、組織全体の生産性や意思決定のスピードを低下させる要因にもなりえるでしょう。
データを活用したいと思う「その目的は何か」の初期設定が曖昧であればあるほど失敗の可能性が増してしまいます。
データの純度が低い
「データの純度」は、企業がDXを進める上で非常に重要な要素となります。
「データの純度が低い」とは、データに不正確さや不整合が多い状態を指します。
たとえば、古い情報、重複データ、誤った入力などが混ざっている場合、そのデータを基にした分析や予測は信頼性が低くなり、誤った意思決定や戦略を採用するリスクが高まります。
企業がDXやデータ活用を成功させるためには、まずデータの質を高めることが必要です。データのクリーニングや整理、そして定期的なデータの更新・検証は欠かせません。
純度の高いデータを持つことで、正確な分析が可能となり、ビジネスの競争力を向上させるための有効な意思決定を下すことができるようになります。
データ活用・分析できるIT人材の不足
企業がデータを適切に活用するためには、データサイエンティストやデータエンジニア、アナリストなど、専門的なスキルを持つ人材が不可欠です。
しかし、このような人材は、現在の日本をはじめとする多くの国々で不足しています。
その理由の一つとして、近年のデータの増加速度に、教育機関や企業の人材育成のスピードが追いついていないことが挙げられます。
また、ITやデータ関連の技術は日々進化しており、それに伴い継続的な学習が求められるため、専門性を維持するのが難しいという側面もあります。
この人材不足は、企業のDX推進を大きく阻害する要因です。
適切なデータ活用ができなければ、新しいビジネスモデルの創出や、顧客ニーズの的確な把握、効率的な業務改善など、多くのチャンスを逃してしますことは国際的な競争力を低下させるリスクとも繋がります。
成功するデータ活用のための4つのステップ
データ活用に失敗する共通の特徴を確認しましたので、ここからはデータ活用に成功するためのステップについて解説していきます。
ここで紹介するデータ活用のための4つのステップを確実にこなすことができる人材こそがDXに欠かすことができない人材と言い換えることができるでしょう。
「DX推進のため、DX人材の採用が必要」
「人財採用時の見るべきポイントが分からない」
という場合の参考にもなると思います。
成功するデータ活用の4つのステップは
●目標設定
●仮説構築
●データ収集と活用
●分析レポートの作成
の順番で進んでいきます。
目標設定
DXを成功させるために必要なことを調べていくと、ほぼ間違いなく最初は「目標を立てる」という項目が出てくるのではないでしょうか。
それだけこのステップが重要だということです。
データの収集、活用、分析のすべては企業の目的を達成させるためのものであり、DXやデータの利活用・分析なくして企業の目標が達成されていて、そのモデルに将来性があるのなら取り組む必要がないとさえ言えてしまいます。
明確な目的があって初めて
●どのようなデータが必要になるのか
●データをどのように集めればいいのか
というような方法論の段階に進んでくのです。
DX・データ活用で売上を目標にしてはいけない理由
データをもとに売上を直接の目標とするのは危険な傾向があると指摘されています。
第一に、売上をつくる要因はデータだけでは計り知れません。
たとえば、顧客の購買意欲や感じる価値、さらには社会的な背景や時代の流れなど、定量的なデータだけでは捉えられない要素が数多く存在します。
データだけを重視して行動すれば、これらの要因を見落としてしまう危険があります。
データの解釈が非常に複雑であり、数字だけを見て結論を出すのは、表面的な情報だけを把握することになる恐れがあります。
そのため、データの背後にある本質的な意味を理解するための深い分析が欠かせません。
仮説構築
データを効果的に活用するためには、正確な仮説構築が不可欠です。
仮説とは、ある前提や条件のもとでの予測や期待される結果を表すもの。
データ分析の方向性を示すコンパスの役割を果たし、データをどのように解釈するかの基盤となります。
データ分析の目的は、単にデータを集めて眺めるのではなく、特定の疑問や課題に答えを出すことであり、この答えはビジネスの成果を向上させる手助けをすることが期待されます。
そのため、目的や課題に対する明確な仮説を立てることで、効率的なデータ活用が可能となるのです。
仮説を構築する際のポイントは、具体的かつ測定可能なものであることです。
例えば、「この広告キャンペーンは効果的である」という抽象的な仮説ではなく、「この広告キャンペーンによって、サイトの訪問者数が前月比で20%増加する」という具体的な仮説が望ましいです。
具体的であっても、遠い先の目標につなげた仮説は推奨されません。
今回の広告の仮説を例に取れば、「この広告によって売上は10%上がる」というような仮説です。
広告を打ち出した後には、まずはその広告を閲覧する人がいなければ商品・サービスの購入には至りません。
仮説を立てる時には、ある事象によっておこる一つ次のことを想定して立てるようにしましょう。
あまり遠くを見すぎないことがポイントです。
また、仮説構築の際には、過去の経験や知識、または業界のトレンドなどの外部情報を参考にすることが推奨されます。
これにより、仮説の妥当性を高めることができるでしょう。
データの収集と活用
このステップは、目標設定や仮説構築の成果を具体的な形で示すための土台となる部分です。
では、このステップの中心となるデータ収集とは、具体的にどのようなプロセスを経るのでしょうか。
まず、データ収集の際には、事前に明確な基準やガイドラインを設定することが求められます。
データの質や範囲、そして使用目的を念頭に置いて、適切な方法やツールを選択することが必要です。
例えば、顧客の購買履歴を取得する場合、POSシステムやECサイトのデータベースから情報を抽出することが考えられます。
一方、市場の動向や競合情報を知りたい場合は、外部のデータベンダーやリサーチ会社からの情報提供を活用することが適しているかもしれません。
次に、収集したデータはそのままでは活用しにくいため、整理や前処理を行う作業が欠かせません。
不要なデータの削除や、欠損値の補完、さらには変数の変換など、分析に適した形にデータを変形するプロセスを経ることで、分析の精度や効率が向上します。
最後に、実際の活用の段階では、収集・整理したデータをもとに具体的な分析や評価を行います。
この段階で、仮説構築の際に設定した問いや目的に応じて、データの特徴やパターンを明らかにし、事業戦略や意思決定の根拠として使用することが可能となります。
データ収集と活用のステップは、単なる数字や情報の集めだけでなく、それを事業の価値ある知見へと変えるための重要な過程と言えるでしょう。
正確で質の高いデータを基に、戦略的な意思決定を下すことが、成功するデータ活用の鍵となります。
分析レポートの作成
分析レポートは、結果のみならずその背後にあるプロセスや考え方も詳細に示すことが求められます。
結果の信頼性や妥当性を他者に示すことができる情報伝達能力やコミュニケーション能力も要求されるでしょう。
分析レポートは継続的な更新や改善のためのフィードバックの場としても活用されるべきです。
初回のレポートから得られた知見やフィードバックを次回以降の分析に活かすことで、より精度の高いデータ活用が可能となり、繰り返しのプロセスが、組織全体のデータ活用の質を高めます。
データ分析・利活用の効果測定
データ分析・利活用の効果測定は必須です。
ただ取り組んでいるだけではその方向性が正しいのかどうか分からず、場合によっては間違った方向に進んでいることさえあるでしょう。
効果測定と聞くと、多くの人は数字ベースで判断することが普通なのではないでしょうか。
売上が○%上がった
この商品の売上個数が○個増えた
など、これらは典型的な数字ベースで効果測定を行う際に用いられる項目です。
これらの判断はもちろん重要です。
しかし、先ほど紹介した通り、売上をつくる要因は多岐にわたり、データの利活用によってその結果にたどり着いたのかは曖昧さがぬぐい切れません。
ここでは、売上などの数字以外に重視したい考え方をここでは紹介していきます。
データ分析結果から従業員の行動が変わること
重要となるのは、データ分析結果をどれだけ実際のビジネスや業務にフィードバックできるか、という点です。
データ分析結果から従業員の行動が変わるというのは、その意味で非常に意義深い現象です。
従業員の行動や意識が変わることで、組織の生産性や効率が向上する可能性があります。例えば、売上データや顧客の購買履歴を分析することで、顧客のニーズや動向を正確に把握することができ、この情報をもとに、営業戦略やマーケティング戦略を調整することで更なる売上向上を目指すことができます。
一見すると数字ベースでの効果測定であるように思えますが、ここには従業員の行動が挟まっています。
データ分析の結果を受けた従業員の行動によって、さらなる売上に貢献したという事実こそが最大の資産となるのです。
このように、データ分析結果を実際の業務に適用することで、従業員の行動や意識の変化を促すことができます。
しかし、そのためには、データ分析の結果を従業員に正確かつわかりやすく伝えること、そしてデータに基づくアクションプランを明確にすることが重要です。
従業員の行動がデータに基づいた合理的なものであること
従業員の意識が変わったとしても、それが自己判断でありデータではない他の何かに影響されての行動であるならデータの利活用における効果を享受でいたとは言えません。
従業員の行動がデータに基づいた合理的なものであるということは、効果的なデータ利活用の核心です。
組織における意思決定やアクションは、しばしば経験や直感に基づいて行われることもあるでしょう。
これは短期的には問題ないかもしれませんが、長期的にはデータを元にした合理的な判断が必要となります。
また、従業員の行動を変えるために組織のリーダーやマネジメント層が、データの重要性や利活用の意義を十分に理解し、それを組織全体に浸透させる役割も果たす必要があることは言うまでもありません。
まとめ:「データ」は量と質、「分析・利活用」は質より量
「データの活用」と聞くと、分析ツールや特別な技術を求めがちですが、多くの企業で導入している分析ツールで十分すぎるほど情報を得る手段はそろっています。
性能の差はあるにしても、それ以上に重要なのはデータを実際に活用した場数です。
データの活用は数をこなさなければ身に付くことはなく、どれほど優れたツールを導入してもデータだけが蓄積され、ビジネスに応用することはできません。
データを集める技術はテクノロジーの進化によって異なってもデータの活用の仕方・分析の本質的な部分は大きく変わっていないのです。
最初から失敗をせずに上手にデータを活用できていた企業はありません。
データの活用が上手くいっている企業は、昔からデータを活用しようとする姿勢を大切にし、その経験が今になって積み重なり成果に結びついたと考えるべきなのです。
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