履歴書の提出を任意にしたら採用後の離職が減ったって本当?採用コストを削減するには定着率を高めるところから!

人手不足が深刻な中、苦労して採用した人材には長く活躍してもらいたいもの。
しかし、期待の新人がすぐに辞めてしまう「早期離職」に悩む企業も少なくありません。最近では、採用時に履歴書の提出を必須にしないという大胆な試みを行い、入社後のミスマッチ(不適合)を減らして離職率の低下につなげた企業も登場しました。
社員の定着率(在職し続ける割合)を高めることこそ、結果的に採用コストの削減につながる鍵。
この「履歴書任意提出」の事例を軸に、中小企業が実践できる社員定着策を考察します。
オンボーディング(入社後研修)、柔軟な勤務形態、メンター制度など社員の定着率向上に効果的な施策にも簡潔に触れ、自社でも取り入れられるヒントを探っていきましょう。
目次
採用コストと定着率:人材を定着させる重要性
採用活動には多くのコストと労力がかかりますが、せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまっては、その投資は無駄になってしまいます。
中小企業に重くのしかかる採用コスト
新たに人材を採用し育成するには、大きなコストと手間がかかります。
求人広告費用、面接にかける時間、入社後の研修費用など、見えやすい支出だけでも中小企業には負担です。
実際、社員1人を採用して戦力化するまでに約1,000万円の費用がかかるともいわれています。
これは大企業に比べて人的リソースの限られた中小企業にとって、非常に重い投資と言えるでしょう。
せっかくかけたコストも、採用した人材が短期間で辞めてしまっては無駄になってしまいます。
早期離職が引き起こす損失
採用後まもなく社員が辞めてしまう「早期離職」は、企業に様々な損失をもたらします。入社わずか数ヶ月で社員が離職すると、1人当たり約187.5万円ものコスト損失が発生するとの試算もあります。
この損失には採用に要した経費や在籍中の給与、研修費だけでなく、採用担当者や教育担当者にかかった人件費など間接的なコストも含まれています。
早期離職者の穴埋めのために残った社員に負担がかかり、業務効率の低下や残業増加を招くことも考えられます。
残された社員のモチベーション低下や連鎖的な離職にもつながりかねず、企業にとって早期離職は見逃せないダメージとなります。
採用ミスマッチはコストのムダ遣い
早期離職の大きな原因の一つに「採用ミスマッチ」があります。
採用時に期待していた仕事内容や職場環境と、入社後の実態にギャップがあると、社員は不満を抱いて辞めやすくなります。
例えば「聞いていた話と違う」「社風が合わない」といった不一致があれば、せっかく採用しても定着しません。
つまり、採用時のミスマッチは企業にとって採用コストの無駄遣いになってしまいます。人材確保が難しい中小企業では、一人ひとりの人材が貴重です。
最初から組織にマッチした人材を採用し、定着してもらうことが何より重要なのです。
定着率向上が採用コスト削減につながる
社員の定着率を高め離職率を低下させることは、結果的に採用関連のコスト削減に直結します。
離職者が減れば、新たな採用活動に費やす費用や時間が節約できますし、経験を積んだ社員が社内に蓄積されることで生産性も向上します。
逆に定着率が低い職場では、常に補充採用に追われて採用コストがかさむばかりか、ベテランが育たずに効率も上がりません。
中小企業こそ「人が辞めない会社づくり」に取り組むことで、長期的には大きなコストメリットを享受できるでしょう。
定着率の高い職場は社員の結束力も強まり、生産性や業績の向上にもつながる好循環を生み出します。
採用コスト削減の近道は、目の前の人材をしっかり定着させることに他なりません。
履歴書提出任意の採用戦略と定着率向上
近年、一部企業では履歴書の提出を任意にし、対話を重視する採用手法を取り入れる動きが見られます。
この章では、履歴書に頼りすぎない採用がどのようにミスマッチを減らし、定着率の向上につながっているのかを解説。
中小企業でも実践できる工夫や取り入れ方のヒントも紹介します。
履歴書に頼りすぎる採用の限界
日本の従来の採用では、応募者に履歴書提出を課し、その学歴や職歴など書面の情報を重視しがちです。
しかし履歴書や過去の経歴をいくら眺めても、その人が自社の文化やチームに合うかどうかを判断するのは難しいのが実情。
書類では優秀に見えても、組織の価値観や雰囲気と合わなければ早期に離職してしまう可能性があります。
特に中小企業では一人ひとりの人格や社風との相性が業務に与える影響が大きいため、書面の情報だけで人材を判断するやり方には限界があると言えるでしょう。
対話重視の採用でミスマッチ防止
上記の課題に対し、近年注目されているのが履歴書に依存しない「対話重視」の採用です。ある経営コンサルティング企業では、採用時にあえて履歴書の提出を必須にせず、その代わりに入社前に最低5回以上の面談を行うという独自の手法をとりました。
時間をかけて候補者と対話を重ねることで、お互いの価値観や働き方のスタイルを深く理解し合います。
対話の中では、仕事への姿勢や将来の展望、組織のカルチャーとの相性などを双方で確認していきます。
このように徹底したコミュニケーションによって採用時のミスマッチを未然に防ぐことができるのです。
履歴書任意提出で得られた効果
履歴書提出を任意にし対話を重ねる採用手法を実践した結果、その企業では採用のミスマッチが大幅に減少し、入社後の早期離職が明らかに減ったといいます。
書類選考にかけていた時間を対話に振り向けたことで、互いに「思っていた職場と違う」「この人はうちに合わないかも」といった齟齬を感じるケースが少なくなりました。
企業側は「ぜひ一緒に働きたい」と思える人材だけを迎え入れることができ、候補者側も入社前に現場の雰囲気まで把握できるため安心して入社できます。
その結果、入社後の定着率が向上し、採用にかけたコストが無駄になりにくくなったのです。
書類より人となりを重視するこの採用アプローチは、中小企業の採用ミスマッチ解消にも有効と言えるでしょう。
中小企業でも活かせるポイント
この履歴書任意提出の事例から、中小企業が学べるポイントも多くあります。
必ずしも履歴書提出を完全になくす必要はありませんが、採用プロセスの中で応募者との対話時間を十分に確保することは大切です。
一次面接・二次面接と形式的に進めるのではなく、カジュアル面談や職場見学の機会を設けてみるのも一案でしょう。
また面談には配属先となる現場の社員も交えて、お互い同じ目線で本音の対話をすることが効果的かもしれません。
経営層や人事担当者だけでなく、一緒に働くメンバーが「この人と働きたい」と思えるかを重視すれば、採用後のミスマッチは格段に減ります。
応募者にとっても事前に職場のリアルな雰囲気がわかるため、不安の解消につながります。
中小企業は大企業ほど応募者が多くない分、一人ひとりの候補者と丁寧に向き合い、相互理解を深める採用を心がけることで、結果的に定着率の高い組織づくりにつながるでしょう。
社員の定着率を高める主な施策あれこれ
社員の離職を防ぎ、長く活躍してもらうためには、働きやすく成長しやすい職場環境づくりが欠かせません。
多くの企業が実践している代表的な定着率向上施策について紹介。
それぞれの施策がどのような効果をもたらすのか、導入のポイントとあわせて解説します。
オンボーディングの充実:早期活躍と定着を促進
オンボーディングとは、新入社員が職場や業務にスムーズに適応できるよう支援する一連の受け入れ施策です。
具体的には、入社オリエンテーションや研修計画、OJT指導、定期フォロー面談などが含まれます。
オンボーディングを充実させることで新入社員の不安を和らげ、企業文化や仕事の進め方に早く馴染んでもらうことができます。
事実、適切なオンボーディングを実施した企業では中途採用社員の定着率が50%向上したという調査結果もあります。
初期段階での手厚いフォローによって「入社してよかった」という安心感とエンゲージメントが高まり、早期離職の防止につながるのです。
オンボーディングによって新人の戦力化が早まれば周囲の負担も減り、既存社員にも好循環をもたらします。
柔軟な働き方の推進:働きやすい環境づくり
柔軟な勤務形態(フレックスタイム制やリモートワーク、短時間正社員制度、週休3日制など)の導入も定着率向上に有効な施策です。
働く人それぞれの事情に合わせて柔軟に働ける環境があれば、ライフワークバランスが整い、仕事への満足度が高まります。
実際、政府の調査によれば柔軟な働き方の制度導入によって多くの企業で離職率の低下や従業員満足度の向上が報告されています。
ある企業ではコアタイムのないフレックス制度や独自の特別休暇制度を導入した結果、離職率が制度導入前の年間23%から13.8%まで低下しました。
また別の企業では思い切って週休3日制を採り入れ、グループ全体の離職率を8.5%程度に抑えることに成功しています。
このように働きやすい職場環境への投資は離職防止という形で企業に還元されます。
中小企業でもテレワークの活用や有給休暇の取得推進、時差出勤の許可などできる範囲で柔軟性を高めれば、社員の「この会社で働き続けたい」という気持ちを引き止める大きな力になるでしょう。
メンター制度の導入:新人に寄り添うサポート
新人社員の定着率を高めるには、職場に信頼できる相談相手がいることも重要です。
そこで効果を発揮するのがメンター制度。
メンター制度では、経験豊富な先輩社員が新人のメンター(指導・相談役)となり、業務面やメンタル面で継続的にサポートします。
新人は定期的に悩みや疑問を打ち明けられる相手がいることで孤立しにくくなり、組織に馴染みやすくなります。
メンター制度を導入している企業は、導入していない企業に比べて新人の1年目定着率が25%以上高いという調査結果もあります。
先輩から仕事のコツや社内の人脈づくりを教わる中で新人のエンゲージメントが高まり、「自分は大切に育ててもらっている」という安心感が生まれます。
その結果、早期離職の防止だけでなく新人の早期戦力化にもつながります。
中小企業でも規模に合わせてメンター制度を取り入れれば、入社直後のフォロー体制が手厚くなり定着率向上に寄与するでしょう。
キャリア成長支援と公正な評価:長期的なやりがいを提供
社員が長く働き続けるためには、将来のキャリア展望を持てることと公平で納得感のある評価が欠かせません。
人は成長実感が得られない職場や、不公正な待遇が横行する環境には居続けたいと思わないものです。
逆に言えば、社員一人ひとりのスキルアップを支援し、努力や成果を正当に評価する仕組みがあれば「この会社で頑張りたい」という意欲が湧きます。
具体的には、社内研修や資格取得支援制度を整えて自己研鑽を後押ししたり、公平な人事評価制度を導入して昇進・昇給のルールを明確にしたりすることが考えられます。
中小企業では大企業ほど明確なキャリアパスを描きにくい面もありますが、定期的な面談で将来のキャリアについて対話する機会を設けるだけでも効果的です。
「この会社で成長できている」「評価してもらえている」という実感が社員に芽生えれば、モチベーションが維持され離職の抑止力となります。
長期的なやりがいを提供する職場づくりは、社員定着の強力な土台となるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化:風通しの良い職場づくり
最後に、普段から風通しの良い職場環境を育むことも定着率向上には重要です。
上司部下間を含めた社内コミュニケーションが円滑で、意見や悩みを気軽に共有できる雰囲気があれば、問題が起きても早期に解決しやすくなります。
反対にコミュニケーション不足の職場では小さな不満が蓄積しやすく、社員のエンゲージメント(仕事への熱意・愛着)が低下して離職につながりやすくなります。
社員同士の交流イベントや1on1ミーティングの実施、経営陣との定期対話の場など、社内の声を吸い上げる仕組みを設けることで「自分たちの意見を大事にしてくれている」という安心感が生まれます。
中小企業でよく聞く「現場の声が経営に届かない」という状況を避け、社員の声に耳を傾けて職場環境を改善し続ける姿勢を示すことが、結果的に従業員満足度と定着率の向上に直結するのです。
取り上げた主な定着率向上施策とその効果例をまとめます。
定着率向上施策 | 効果・成果の例(離職率・定着率への影響) |
---|---|
履歴書提出を任意にして対話重視の採用 | 採用ミスマッチを減らし早期離職を防止 |
オンボーディングの充実 | 中途社員の定着率が50%向上 |
メンター制度の導入 | 新入社員の1年目定着率が25%以上向上 |
柔軟な勤務制度の導入 | 離職率が23%から13.8%に改善 |
週休3日制など働き方改革 | グループ離職率を8.5%程度に低減 |
定着率向上施策を自社に取り入れるには
社員の定着率を高めるためには、自社に合った施策を見極めて着実に実行していくことが重要です。
具体的な施策の導入方法や、社内で定着率向上を図るうえで押さえておきたいポイントについて解説します。
自社の課題を見極めて適切な施策を選択
社員の定着率を向上させる施策と言っても、自社の状況や課題に合ったものでなければ効果は十分に出ません。
まずは自社で離職が発生している原因や、社員が不満に感じている点を把握することから始めましょう。
例えば、「残業が多くて家庭との両立が難しい」のが理由であれば働き方を柔軟にする施策を検討すべきですし、「新人が仕事になじめずに辞めてしまう」のであればオンボーディングやメンター制度の導入が有効でしょう。
このように離職の原因に対処する施策を優先的に選ぶことが大切です。
社員へのアンケート調査や定期面談、退職者へのヒアリングなどを通じて自社の課題を見極め、自社にフィットする打ち手から着手しましょう。
小規模から施策を試験導入し効果を測定
新しい人事施策は一度に大きく変革するよりも、まず小規模に試験導入して効果を検証することをおすすめします。
テレワーク制度を全社導入する前に一部部署でトライアル運用してみる、メンター制度も最初は新人数名に対して実施してみる、といった具合です。
パイロット導入によって実際の効果や課題を把握し、必要に応じて軌道修正することで、無理なく施策を根付かせることができます。
また、定着率の改善にはある程度長いスパンでの検証が必要です。
導入前後で離職率がどう変化したか、社員からどんな声が上がったかなど定量・定性両面で効果測定を行い、社内にデータを蓄積するようにしましょう。
数字で成果が示せれば、他の部署への横展開や経営層の理解も得やすくなります。
経営層の理解とコミットメント
社員の定着率向上施策を成功させるには、**経営層の理解とコミットメント(関与と支援)が欠かせません。
トップマネジメント自らが「人材を定着させることは重要だ」という認識を持ち、現場の取り組みを後押しする姿勢を示す必要があります。
現実には、オンボーディングなど人材定着施策の重要性を十分に理解できている企業は必ずしも多くなく、大企業でさえ22%程度に留まるという調査もあります。
経営層の関心が低ければ、人材定着のための予算措置や制度導入も進まず、施策が形骸化してしまう恐れがあります。
逆に言えば、経営トップが「人を大切にする」文化づくりに率先して取り組めば、組織全体が社員定着を意識した動きへと変わっていきます。
定着率の向上は短期的な数字には表れにくいかもしれませんが、経営戦略の一環として長期的視点でコミットすることが肝要です。
社員の声を反映した職場改善
定着率を上げる施策を検討する際には、社員の声を積極的に取り入れることも忘れてはなりません。
現場で働く社員が日頃どんな不安や不満を抱えているのか、それを知るには双方向のコミュニケーションが重要です。
従業員満足度調査を実施したり、定期的にミーティングで意見交換の場を設けたりして、社員が本音を言いやすい風土を作りましょう。
従業員エンゲージメント(仕事や組織への愛着・熱意)が低下すると離職率が高まることは各種調査でも明らか。
そうなる前に手を打つには、社員からのフィードバックを経営改善に活かす姿勢が必要です。
「現場の声を聞き、可能な限り職場環境に反映してくれている」と社員が感じられれば、会社への信頼感が増し、結果的に定着率向上につながります。
社員と一緒により良い職場を作っていくという意識が、人が辞めない組織への第一歩です。
長期的視点で社内文化を醸成する
社員の定着率を高める取り組みは、一朝一夕で結果が出るものではありません。
だからこそ、長期的な視点で社内文化を醸成していくことが大切。
日々の地道な取り組みの積み重ねによって、「社員を大切にし、成長を支援する会社」という文化や評判が形作られていきます。
そうした企業風土は既存社員のロイヤリティを高めるだけでなく、求人市場において「働きやすい会社」として認知され、新たな人材採用にも有利に働くでしょう。
社員の定着率向上は、採用コスト削減のみならず組織全体の安定感や競争力向上にも寄与する重要な経営課題です。
腰を据えて取り組むことで、5年後10年後に「社員が辞めない強い会社」が実現できるはずです。
まとめ:人材は会社にとっての財産
人材は会社にとって何にも代えがたい財産です。
採用した社員に長く力を発揮してもらえるよう、まずは自社でできることから定着率向上の施策を取り入れてみてはいかがでしょうか。
小さな工夫の積み重ねが、将来的な採用コスト削減と企業の持続的な成長につながることでしょう。
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