BCPは大丈夫?企業の未来を災害から守る取り組み
「大災害で露呈する企業体力」
「BCPは積極的に導入すべき」
「BCPの導入が遅れている理由」
企業は利潤を追求しなくては存続することは難しくなります。
それゆえ、競合他社を意識して日夜商品開発やサービスの向上、顧客獲得戦略を考えることに心血を注いでいる会社が多いです。
しかし、企業を苦しめるのは「売上の低迷」や「顧客の離反」だけではありません。
日本を襲う大きな災害もまた、企業を直撃することがあります。
このような事態に企業がどのように対応するか、あるいは、どのように備えてきたのかによって、企業体力が露呈します。
日本は地震も多く、関東大震災、阪神淡路大震災そして東日本大震災と、多くの大災害が起きています。
次にいつ、どのようなタイミングで大きな震災が来るとも分からない状況であるからこそ、時間も資源も比較的余裕のある時に準備をしておくことは大切です。
今の準備が将来の会社の存続の分岐点となるかもしれません。
目次
大災害で露呈する企業体力
大きな震災が起きた後、その二次災害に対してどのように対処できるかが企業の存続を決定します。
震災によって、ライフラインが止まり、製造することもできずに在庫も使えない状態に陥った製造会社の多くが倒産してしまったという事例もあります。
では、震災によって倒産に追い込まれてしまった会社と、同じ震災を受難しても存続できた企業の違いは何なのでしょうか。
資金の潤沢度も関係しますが、それだけではありません。
意識すべきは競合他社だけではない
普段の仕事、生産的な業務においては、競合他社を意識することも多いかと思います。
しかし、ここまでで述べてきたように、万が一の時に備えて、準備しておくことも必要です。
何をどのように準備すればいいのかが分からないという場合には、国が企業を災害から守るためにどのような仕組みを整えているのかを知るところから始めてみましょう。
中小企業庁は事前の防災対策による支援制度を充実させており、「防災対策支援貸付制度」、「中小企業組合等活路開拓事業」や「社会環境対応施設整備資金」などの制度を設けています。
ただ、どの中小企業でも制度を最大限に利用できるわけではなく、制度利用の条件にはBCPの作成が必須になっている場合もあります。
もちろん、緊急事態が発生した後の支援についても充実させており、「小規模企業共済災害時貸付」、「特別相談窓口」、「既往債務の返済条件緩和」などもあります。
このような制度があることを知り、災害が起こる前に、来るべき時のために備えておくことが大切です。
災害の可能性・規模を考える
日本が今後経験する可能性の高い災害はいくつかあります。
日本海溝や千島海溝の巨大地震、活断層付近で被害が大きくなる内陸直下型地震などです。
しかし、近年最も警戒を強めているのが南海トラフ地震です。
南海トラフは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけての海底付近を指しており、ここでの地震発生確率は80%程度と見直しがされています。
国が発表している被害想定では津波や建物の倒壊、火災などの二次災害まですべて含めると32万3000人の死者数が見込まれていて、家屋、建物の全壊と消失は240万弱と推定しています。
政府も毎年、南海トラフ地震には警戒を強めてはいましたが、まだ実際には起きていないということもあり、今後も起きないと楽観視している人たちもいます。
歴史的に見た時の地震発生サイクルから考えると、いつ発生してもおかしくはない状況ですので、今できる準備をしておくことで企業としてのダメージを抑えられるかもしれません。
安定志向は危険信号
1990年ごろまでは、日本の人口も順調に増加し、景気も良かったということがあり、今まで通りのことを行うだけで十分でした。
その頃の考えが今でも続いているのであれば危険かもしれません。
人々の生活スタイルは確実に変化しており、それに伴って、消費する商品も少しずつ変わってきています。
それに加え、震災の可能性も考えると、今まで通りのことをやっているだけでは、いざ大きな変化が必要になったときに対応しきれない可能性が出てきます。
今の準備が未来への保険になるという考えを持ち、事業を本当の意味で安定させる方法を考えることも重要です。
BCPは積極的に導入すべき
震災への数ある備えの中で、国の制度を最大限活用するために考えたいのがBCPです。
多くの企業でBCPを作成していますが、まだ名前すら聞いたことがないという経営者の方もいます。
BCPを作成したからと言って、すぐにその恩恵を受けることができるわけではありませんが、大きな震災が起きてから、作成しておけばよかったとなっては後の祭りです。
BCPの作成の必要性について考えていきます。
BCPとは?
BCP(事業継続計画)とは、Business continuity plannningの略称です。
自然災害やテロが発生した際に、なるべく早くにその被災から立ち直り、事業を復旧させて継続させるための計画書になります。
大企業であれば、震災をしても潤沢な資金源を活用することで自己負担で復旧させられる場合もありますが、経営の規模が小さく中小企業にとっては、たった一度の震災であっても、それが企業の存続に関わる大きな問題となりえます。
「BCPの作成は必須」と言っても過言ではないのです。
東日本大震災から学ぶBCPの必要性
東日本大震災が発生した東北でも、BCPを作成していたのは東北の企業の12.4%しかなく、全国平均の15.5%にも届いていない状態でした。
規模が小さい企業ほどBCPが作成されていないという統計も出ており、必要な支援が必要な企業に行き届かない可能性も示唆されています。
特に、従業員が5人以下の企業では1割にも届かないというデータもあります。
会社が安心して事業を続けられることを考えれば、BCPの作成は必要です。
BCPは企業にとっての生命線
BCPがなくても大丈夫と考えている企業も多いですが、大丈夫かどうかは被災してから分かることです。
日本のこれからを考えると、決して不要なものではありません。
南海トラフ地震の発生確率は以前の10%から、80%にまで上がっています。
向こう数十年の間にはほぼ間違いなく起こると考えておいた方がよいのです。
地震だけではありません。
台風や、隣国との紛争・戦争、テロ、地球温暖化による未経験の気象現象など、枚挙に暇がないほどの災害が今後の日本を襲うかもしれません。
従業員の生活を守る義務と責任を経営者が感じているのであれば、BCPの策定は急務です。
早めの準備を少しずつ始めた方がよいかもしれません。
BCPの導入が遅れている3つの理由
BCPが必要と言いましたが、中小企業でのBCPの策定が遅れているのは統計の上で明らかになっています。
BCPの策定を遅らせている原因はどこにあるのでしょうか。
ここでは、BCPの導入が遅れている理由を3つに絞って解説しています。
情報不足
そもそも、BCPという言葉そのものを知らなかったというケースが考えられます。
会社を創立するときからBCPの存在を知っている方はごく稀です。
自分たちの経営理念やビジネス戦略を入念に考えていても、緊急時の災害に備えようとは初期段階で考えないと思いますし、それが自然なことです。
そのままBCPの存在を知るきっかけに巡り合えないということが作成が遅れている原因である可能性があります。
助け合い精神に依存する「ムラ」社会
古き良き日本の伝統でもある「ムラ」社会。
これは、助け合いの精神が根付いている民族の特徴なのかもしれません。
災害時には、自己犠牲を払ってもお互いに助け合うことが美徳であるという考え方を誰もが持ち合わせている日本人。
東日本大震災のときの食料配給の際にも、日本人が順番を守って並んでいる様子を見て、海外メディアからは多くの称賛の声を集めました。
そのような伝統的な「ムラ」社会が根付いているせいか、BCPの策定によって国の支援を受けなかったとしても、誰かが助けてくれる、あるいは助け合うことによって何とかなると考えている経営者もいます。
結果的に何とかなるとしても、BCP策定がマイナスになることはないはずです。
自分たちが誰かを助けるための余裕を生み出すためにも、国にも助けてもらうという考え方を持っていてもよいかもしれません。
作成済みという勘違い
にわかには信じられないかもしれませんが、自分の会社はBCPを作成しているつもりだったという方もいます。
自分の会社のことなのに、「正確に把握していないの?」と思われますが、意外にもこの理由によってBCPを作成していなかったと気が付かされる事案は多いようです。
それは、日本の企業は国から様々な支援を受けるために多くの書類を必要としていて、その中にBCPに似ているものも多く含まれていることが原因です。
例えば、日本では人件費を抑えるために海外に生産工場を置くことで、国内生産から海外生産へと本格的に舵とりをした時期がありました。
ちょうど、産業の空洞化が問題視されていたころの話ですが、このときにも事業を継続するための計画案を作成しています。
このように、BCPに似ているものを何度も会社は作成していることあるのですが、それゆえ、BCPも作成していると勘違いしてしまうケースがあるのです。
BCPは、災害などの緊急時に備えるための計画になりますので、平時のときの事業計画書とは性格が違います。
まとめ:災害から事業を守ることを考える
災害から事業を守ることは、従業員を守ることにもつながります。
BCPの策定は、その準備でもあります。
もし、自社でまだBCP策定ができていない場合には、大きな災害が起きる前に策定しておくことをおすすめします。
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人材育成や経済・経営に関わる様々な情報も提供しています。
また、今回の記事で取り上げましたBCPの策定のお手伝いや代行も行っています。
BCPの策定をしたいけど、なかなか時間が取れない、制度について詳しい人が近くにいないなど、お悩みの場合には、お気軽にご相談ください。
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